急遽テレワーク導入!の顛末記
「“iPhoneをWebカメラ化”したい!! 無料で使いやすいアプリはどれだ?」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(174)
7つのアプリを比較、最も機能性にすぐれたアプリを探してみた
2024年2月5日 07:00
うちの会社はBYOD(Bring your own device)が許されているため、自宅では仕事に私用のデスクトップPCを利用。さらに、オフィスではノートPCをデスクトップPC的に使いたいので、モニターを閉じた状態で使っている。これら2台のマシンに共通する問題が「PC内蔵のWebカメラがない/使えない」ということで、オンライン会議に参加する際には、もっぱらiPhoneをWebカメラ代わりに使っている。
……この記事を書いている時点で、新型コロナが5類に移行されて270日が過ぎた。
私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で今回はiPhoneがWebカメラ代わりに使えるようになる7つのアプリについて、使い勝手をいろいろと試してみた。
1月29日(月):まずは7つのアプリを基本スペックで比較してみた
これまで、iPhoneをWebカメラ代わりに使うために、「NDI HX Camera」や「DroidCam」、「EpocCam」といったアプリを使ってきた。ただ、最近ネットで検索したところ、ほかにもいろいろなアプリがオンライン会議などで利用されているらしい。
そこで、筆者の環境において、最も優れた機能を無料で使えるアプリは何か? を調べてみることにした。今回比較してみたのは以下のアプリ。
※表記のスペックは無料版で利用可能な内容をまとめたもの
DroidCam
解像度:設定不可/FPS:設定不可/ハードウェア支援:非公開/USB接続:可能/マイク利用:可能/ウォーターマーク:なし
このうち、「iVCam」については、試用期間が終わると解像度640×480/24fpsでしか使えなくなるので、“無料で快適に”という条件からは外れる。また、解像度については「DroidCam」と「EpocCam」は設定メニューが用意されておらず、このうち「DroidCam」の映像はほかのアプリよりも映像が荒かったので、選択肢から外れることになりそうだ。
で、残った候補の中では、「XSplitVcam」と「EpocCam」のウォーターマークが気になった。ウォーターマークは「iVCam」でも表示されるのだが、ここで問題になるのが表示される場所。「iVCam」の表示位置は画面左上なので、ビデオ会議中に背景を合成すれば消せるが……。「XSplitVcam」と「EpocCam」は画面中央下と身体にかぶる位置なので、背景の合成では削除できない。有料プランに契約すれば消せるが、それなら他のアプリを使えばよい気がする。
また、「Iriun Webcam」については、「iPhoneとPCを同じ無線LANに接続すること」という要件が、自宅のデスクトップPCでは引っかかった。というのも、筆者が使っているデスクトップPCは有線でLANに繋がっているので、iPhoneと接続するにはWi-Fi接続に切り替える必要がある。
ということで、筆者の環境においては「Camo Studio」が有力な選択肢となり、加えて会社で使っているノートPCであれば「Iriun Webcam」も候補となりそうだ。現在、筆者は以前に無料で配布されていた「NDI HX Camera」というアプリを使っているので、それと比較しながら、「Camo Studio」や「Iriun Webcam」に乗り換えるべきか? をテストしていきたい。
1月30日(火):高解像度での配信にはマシンスペックが必要?
今日は会社の全体ミーティングの日。オフィスに出社していたので、会社支給のノートPCでミーティングに参加しながら、3つのアプリの使い勝手を比べてみた。
この3者を比較すると、解像度では「NDI HX Camera」と「Iriun Webcam」に分がある。ただ、「NDI HX Camera」では解像度を1280×720以上に設定すると、とたんにGPUの負荷が跳ね上がった。この時に使用していたノートPCにはGPUが搭載されておらず、CPU(Intel Core i7-10510U)に内蔵された「インテル Core UHD グラフィックス」が使用されていたのだが、カメラをパンするとその使用率が50%を超えて大きく上下するように。映像もカクカクに固まってしまい、結局は解像度を640×480まで落とすことになった。
とはいえ、自宅のデスクトップPCでは映像が安定していたので、ハイスペックなPCであれば、「Camo Studio」を超える画質でオンライン会議に参加することが可能だ。
一方、「Camo Studio」については、一番高い解像度(1280×720)でもGPUへの負荷は24%程度で、映像が固まることなくオンライン会議に参加できた。設定画面では「Processing device」という項目で“CPUとGPUのどちらの支援を受けるか?”を選択できるが、無料版で利用できる解像度の範囲内であれば、GPUを搭載していないPCでも問題はないだろう。
さらに、「AR」という機能で人肌を美しく見せたり、背景を軽くボカしたりといったフィルター効果を追加できるのも大きな魅力。……そのほかの多くの機能は有料版での解放となるが、それでもできることは「NDI HX Camera」より多い。ちなみに、デフォルトの状態では画面上にウォーターマークが表示されているが、これは無料版でも設定から非表示にできる。
ただ、「Camo Studio」は多機能な分だけ、性能の低いマシンだとソフトの起動に時間がかかるのが気になった。さらに、起動時のiPhoneとの接続にも少し時間がかかる時があったので、「急いで会議に参加したい」という時には、慌ててしまうかもしれない。
このため、“Wi-Fiに接続されたPCで手早くオンライン会議に参加”するのであれば、「Iriun Webcam」を利用するのが良いかもしれない。このソフトの設定メニューには「解像度の変更」しか項目が用意されていないが、シンプルなだけに起動もiPhoneとの接続も早いし簡単だ。
ちなみに、会社支給のノートPC(Intel Core i7-10510U)だと、解像度が1920×1080を超えたところで、映像がカクつくようになった。最初は「社内のネットワークに負荷がかかっているのか?」と思ったのだが、自宅に戻っても状況が改善しなかったので、どうやら原因はマシンのスペックにあるらしい。第12世代のCore i7 CPUを搭載したノートPCであれば、映像のコマ落ちをほとんど感じなかったので、フルHD以上の画質を求めるなら新しめのマシンを用意した方が良さそうだ。
1月31日(水):背景の合成など面白い機能のあるアプリも
これまでの検証ではウォーターマークの問題から、「XSplitVcam」と「EpocCam」を選択肢から外していたが、試しに使ってみるといろいろ面白い機能が用意されていた。社内で使う分にはウォーターマークの表示があっても問題ないので、その特徴を紹介しておこうと思う。
まずは、「XSplitVcam」だが、ズームや明るさの調整に加え、背景の合成やボカシができるほか、その際に椅子を背景と認識して削除する「チェアを消去」といった機能を全て無料で使うことができた。さらに、解像度を1920×1080まであげても、GPUの使用率は20%程度で、映像がコマ落ちすることもない。……ウォーターマークの件以外は、本当に非の打ちどころがないツールといえるだろう。金額によっては思わずポチっていたところだが、月額料金制なのが悩ましい。
一方、「EpocCam」については、公式から入手できる「Elgato Camera Hub」というPC用ソフトで、背景の合成やボカしができるほか、明るさ補正といった機能が利用可能。ただ、背景の合成については「NVIDIA RTX 2060以上のグラフィックカードが必要」とのことで、会社支給のノートPCでは利用できなかった。さらに、PC上でのプレビューを有効にしていると、ビデオ会議の映像に乱れが出たため、このソフトはGPUを搭載したマシンで使った方が無難かもしれない。
ここまで、各アプリの使い勝手を試してきたが、筆者の環境においては自宅のデスクトップPCでは「NDI HX Camera」を、会社支給のノートPCでは「Iriun Webcam」を使うのが最適解となりそうだ。機能的には「Camo Studio」も優秀だったので、例えば「映像が暗いので明るくしたい」時などには、状況に応じて使い分けるのもアリかもしれない。
とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。