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Wi-Fiルーターの「ストリーム数」とは何のこと?

ASUSのWi-Fi 6対応ルーター「TUF-AX3000」。ストリーム数は5GHz帯が2ストリーム、2.4GHz帯が2ストリーム

 Wi-Fiルーターのスペック情報やパッケージに、最大通信速度のほかに「ストリーム数」と書かれていることがあります。このストリーム数とは、どういう意味なのでしょう? 製品を選ぶときには「ストリーム数」が多いものを買っておけばいいのでしょうか?

ストリーム数は簡単に言えば「アンテナの数」で、「通信経路の本数」

 ショップでWi-Fiルーターを見ていると、パッケージに、通信速度に加えて「8ストリーム」「12ストリーム」といった文字が大きく記されていることがあります。メーカーによっては「アンテナ数」と呼ばれることもありますが、これは同じ意味で、Wi-FiルーターがスマートフォンやPCなどの子機と通信する経路の本数のことを指しています。

 現在のWi-FiルーターやPC、スマートフォンは「MIMO」(マイモ:Multi Input Multi Output)という機能を持ち、複数のアンテナを使って同時に通信することで、高速にデータをやりとりできます。このMIMOで使える通信経路の数が「ストリーム数」または「アンテナ数」です。

 ごく簡単に説明すると、「おはよう」というメッセージを送受信するとき、1ストリームでは1つの通信経路で「おはよう」という4文字をやり取りしますが、2ストリームあると「おは」「よう」と2つの経路で別々にやり取りできるので、2文字分の時間で4文字をやり取りできます。つまり、通信速度が倍になるわけです。

 現在主流のWi-Fi 6対応の機器は、複数のスマートフォンやPCを接続しても同時にMIMO通信できる「MU-MIMO(Multi User MIMO)に対応していて、複数の機器を接続した状態で高速通信が可能です。家族がそれぞれネットを利用している場合はもちろん、一人暮らしでも、スマートフォンやPCなど複数の機器を同時に利用するときには、MU-MIMOかつストリーム数の多いWi-Fiルーターを使う方が、より快適に通信できることが期待できます。

4ストリームのWi-Fiルーターに2ストリームのスマートフォン2台を接続している状態のイメージ

 ストリーム数は、「4ストリーム」のように1つの数字で書かれる場合と、「4×4ストリーム」のように、2つの数字で書かれる場合があります。後者は一般に、送信用と受信用のそれぞれのストリーム数を表しており、「4×4」だから16ストリームというわけではなく、これも4ストリームを意味します。

 ちなみに、Wi-Fiルーターにはアンテナが外付の製品もあればアンテナを内蔵した製品もあり、ストリーム数/アンテナ数は、外見上のアンテナの本数と必ずしも一致するわけではありません。

TP-Linkの「Archer AX80」はアンテナ内蔵モデル。ストリーム数は5GHz帯が4ストリーム、2.4GHz帯が4ストリーム

「チャンネル幅」は1ストリームの幅の広さ

 ストリーム数と関係が深く、通信速度に影響する情報に「チャンネル幅」があります。これは「帯域幅」と呼ばれることもあり、1ストリームあたりの通信帯域の広さを表します。この数値が大きいほど幅が広く、同じ時間に多くのデータを送受信できるます。

 現在、Wi-Fi 6対応のエントリークラスの製品では、「80MHz」のチャンネル幅が利用できますが、上位機ではその倍となる「160MHz」のチャンネル幅に対応しています。チャンネル幅が広いほど高速な通信ができ、160MHz幅対応の製品では、接続相手も160MHz幅対応であればストリーム数が半分でも規格上は80MHz幅の製品と同等の通信速度が出せると考えていいでしょう。

使っているスマホやPCの仕様を詳しく知れば、最適なWi-Fiルーターを選べる

 以上のように、ストリーム数についての考え方は「基本的には多い方が高性能だと言えるが、チャンネル幅も考慮する必要がある」となります。

 一例として、どちらもWi-Fi 6に対応し、5GHz帯の最大通信速度が約2400Mbpsであるバッファローの「WSR-3200AX4S」とNECプラットフォームズの「Aterm WX3000HP2」の、2つの製品を比べてみましょう。すると、前者は4ストリームで80MHz幅、後者は2ストリームで160MHz幅です。

 ストリーム数やチャンネル幅は、Wi-Fiルーターと、接続するスマートフォンやPCの両方が対応していないと性能を十分に発揮できません。そのため、160MHz幅に対応したPCを接続する場合は、Aterm WX3000HP2の方が適していると言えるでしょう。一方で、80MHz幅までのiPhone 14などを複数台接続するなら、WSR-3200AX4Sの方がいいでしょう。

 インターネットを利用するときの通信速度に影響する要素は、自宅までの回線の最大速度や混雑具合など多くのものがあり、一般に、ストリーム数やチャンネル幅の通信速度への影響は、そこまで大きいわけではありません。しかし、その意味を知っていれば、似たスペックの製品からどれを選ぼうかという場合などに、適切な選択ができるでしょう。

 なお、Wi-Fiルーターのストリーム数やチャンネル幅は比較的分かりやすく記載されていますが、スマートフォンやPCの場合、ストリーム数やチャンネル数といった詳細なWi-Fiの仕様の情報は見つけにくい場合もあります。しかし、製品選びで気になったときには、詳しく調べてみるといいでしょう。

4ストリーム×80MHz幅と、2ストリーム×160MHz幅の比較イメージ
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正田 拓也