みんなの在宅ワーク
第87回:村上タクタ(ThunderVolt編集長/フリーランスライター)の在宅ワークスタイル
30年の会社員生活を終えてフリーライターに。狭いながらも至福の書斎
2022年11月1日 06:55
村上タクタと申します。ガジェットやテクノロジーに関する記事を書くウェブメディア「ThunderVolt」の編集長であると同時に、フリーランスライターとして、様々なところにお求めに応じて原稿を書いています。
今年の春、30年勤めた出版社を辞めて、フリーランスになりました。思い通りの道具を使えないオフィスではなく、狭いとは言え好きな機材を使える自宅の書斎で仕事をできる幸せを噛みしめています。
30年間、会社員として趣味の本を作り続けた
30年間、枻出版社という会社で、ずっと趣味の雑誌の編集者をしてきました。
最初は「ライダースクラブ」というバイクの雑誌でした。世界中の好きなオートバイに乗れると思って、京都から出て来て編集部に潜り込んだのが1992年の7月でした。海外のサーキットで新型バイクを試乗したり、ドイツにBMWの試乗に行ったり、テキサスの荒野でハーレーを試乗したりしました。
続いて「RCエアワールド」というラジコン飛行機雑誌の編集部に転属になり、日々、河川敷でラジコン飛行機の取材をする生活に。ここでもドイツ、フランス、ポーランド、アメリカのフロリダなど、いろんなところにラジコンの競技会の取材に行き、その途中で編集長になりました。
次に編集長として「コーラルフィッシュ」というサンゴと海水魚の飼育を楽しむための本を立ち上げました。家にも会社にも、200リットル以上の水槽を何本も立ち上げ、サンゴや魚を飼育して記事を書きました。いずれの本も7~8年やっていたと思います。
ある意味、仕事が趣味で、趣味が仕事の日々でした。会社にもそれなりに広いスペースを与えられていて、バイクのレザースーツやヘルメット、たくさんのラジコン飛行機、熱帯魚の水槽に囲まれて仕事をしていました。
編集部縮小、民事再生、フリーアドレス、在宅勤務
デジモノの本を作るようになったのは2010年にiPadが発表されたときから。上司を説き伏せて「フリック!」という雑誌を創刊しました。以来、12年弱、「フリック!」の編集長として、デジモノについて取材し続け、ついにはAppleのUSの発表会にも呼ばれるようになりました。
そんな中、折からの雑誌不況もあり、会社の状態はどんどん悪くなり、ついには編集部の席はなくなり“フリーアドレス”ということに。もちろん、趣味の道具なんて置いておく場所はなくなりました。趣味の本を作っているというのに。
さらにコロナ禍が追い討ちをかけ、ついに枻出版社は民事再生法適用となりました。我々の部署を引き取った会社でも編集者の居場所はなく、完全に在宅勤務に。
「どうせ、家で仕事をするなら会社に振り回されるより、ただ、好きなものの原稿を書きたい」と思い、妻と2人の編集事務所を自宅で起こしました。さらに、知人の会社に話をして「ThunderVolt」というウェブメディアを立ち上げ、編集長兼フリーライターという二足のわらじで仕事を始めました。
高速なMacと、2台の大型ディスプレイ
基本的にはノートパソコン1台あればできる仕事ではありますが、“ワークスペース”は広い方が良いというのが持論です。会社でも20年以上前から自費でサブモニターを買って、デュアルモニターで仕事をしていました。
1台は2016年にThunderboltポート×4になったMacBook Pro 13インチと一緒に買ったLGの27インチ5Kディスプレイ。もう1台は留学で海外に出た娘が置いていったLGの31.5インチ4Kディスプレイ。これをエルゴトロンのデュアルモニターアームと組み合わせました。会社員時代にずっと夢に見ていたフローティングマウントのデュアルディスプレイです。これがとても快適。
また、カメラマンの撮った写真をしっかり確認するためにも、大型のしっかりしたモニターは必要です。小さいモニターでは画像の質が悪くても気が付かないのです。
1992年に「ライダースクラブ」に入ったときに、デスクの上にMacintoshのClassic II(いわゆる、アイコンのような古いMac)があって以来、私はMac党なのですが、1998年ぐらいから会社の支給のパソコンがWindowsになったので、自費でMacを買うようになりました。当時の編集長たちは、みんなそうしていました。
最初に買ったノート型のMacはPowerBook 2400c。以来、10台以上、Macのノートを乗り換えながら仕事をし、世界中に出張に行っていました。現在使っているのは、MacBook Proの14インチ。M1 Pro搭載モデルです。バード電子のMac Tableを使って浮かせて設置しています。執筆中にコーヒーやお茶を飲むのですが、万が一こぼしてもパソコンにダメージが及ばないようにという備えでもあります。
モニターアームには、両面テープでOWCのThunderboltハブと、フォーカルポイントのTUNEWEAR ALMIGHTY DOCK C3を貼り付け、Macとの接続はケーブル1本で、2枚のモニター、マイク、SSDなどが接続できるようにしています。
また、Macの背後にはトリニティのNuAns COLONYを設置し、iPad miniやiPhoneなど、散らかりがちなタブレット系デバイスやスマホを充電できるようにしています。
BGMはSonos、常に何でも充電できる体制を
デスクの右端と左端にはSonos Oneを2台、ステレオ配置で設置し、デスクの横にはウーファーであるSubを置いています。仕事中のBGMは、MacやiPhoneから、これらのスピーカーを使って流しています。好きな音楽を流しながら仕事ができるのも、自宅仕事の良いところ。
デスクの左は自作の2段の棚になっており、取材で借りてきたデバイスの充電などを滞りなくできるように、多数の電源を用意しています。コンセントが多いように思えるかもしれませんが、常時10台ぐらいのMacBookやiPad、iPhone、Apple Watch、その他周辺機器を試用して記事を書いていると、手軽に充電できる環境というのがとても大事なのです。
棚の上の段には、ScanSnap iX1600、下にはiX100を備え付けています。取材でもらった紙の資料などは、持ち帰ったらすぐにデータ化して検索可能にしておくのも、効率的に仕事をするためには大切なことなのです。
HHKBとMX Master 3は譲れない
この書斎で毎日1万字ぐらいの原稿を書くのが日常なので、キーボードには非常にこだわっています。メインで使っているのがPFUのHappy Hacking Keyboard。これは3台あって、その日の気分で使い分けています。同じ機種でも、キータッチが少し重かったり、軽かったり……気のせいかもしれませんが、微妙に打鍵感が違うのです。
その他にも棚には、REALFORCEや、LogicoolのMX MECHANICALや、K835メカニカル、MX Keysなどが用意してあり、気分や必要性(テンキーが欲しいときなど)に応じて使い分けています。
マウスは、初のレーザーマウスである2004年発売のMX-1000から、LogicoolのMXシリーズを使い続けていて、今は最新型のMX Master 3を使っています。これまた妻の手よりも長い時間握っているものなのだから、欲しいものを使うようにしています。
そうそう、大事なポイントを忘れていました。デスクワークをする人間にとって、一番大切なのはイスです。これは在宅勤務を始めたときにエルゴヒューマンを購入して使っています。10万円ぐらいしましたが、1日12時間か、それ以上も座ってるイスだから、絶対にいいものが必要なのです。
快適に仕事をし続けるための7つ道具
処理待ちのない高速なMac、正しい姿勢を作り出すためのイスと、フローティングモニター、そしてMX Master 3とHHKB、ScanSnap、BGMのためのSonos。これが私が快適に家で仕事し続けるための7つ道具です。
ビデオ会議のときに背景になる背中の壁には、バルサの棒から作り上げたパイパーカブのラジコン飛行機と、バイク用の革ツナギ、アライヘルメットさんが僕専用カラーに塗ってくれたヘルメット、これまで作ってきた600冊ほどの本が置いてあります。また、写真には写ってない壁面には趣味の荷物が山積みになっています。苦労して作った数々のラジコン飛行機や、キャンプ道具、折り畳み自転車などもあります。
趣味の道具に囲まれ、好きなツールを揃えて仕事に臨む。これが私の在宅ワークのスタイルなのです。
- メインPC:MacBook Pro 14インチ(M1 Pro搭載、2021)
- ディスプレイ:3画面
- キーボード:PFU Happy Hacking Keyboard、Logicool MX MECHANICALなど
- マウス/トラックボール/トラックパッド:Logicool MX Master 3、Apple Magic Trackpad
- カメラ:Logicool StreamCam
- マイク/ヘッドフォン/スピーカー:スピーカー:Sonos One×2、Sub/マイク:IK Multimedia iRig Mic HD 2など
- ビデオ会議サービス:mmhmm、Zoom、Webex
- 机:オフィス用ミーティングテーブル
- 椅子:エルゴヒューマン
- その他小物:ScanSnap iX1600、iX100
村上タクタ
編集者・フリーランスライター。バイク、ラジコン飛行機、サンゴ飼育、デジタルガジェットなど、趣味の雑誌を30年間で600冊ほど編集。現在はフリーランスになり、妻と編集事務所を立ち上げるとともに、株式会社ヘリテージで、編集長として「ThunderVolt」というウェブメディアを立ち上げる。アップルのUS新製品発表会に呼ばれる執筆者でもある。二児の父だが、2人とも海外の大学に留学し、そろそろ子育てもゴールに。