イベントレポート

CEATEC JAPAN 2016

耳穴で個人認証、NECがヒアラブルなウェアラブルデバイス構想、なんか不審な人物を瞬時に特定する映像分析技術も

 「CEATEC JAPAN 2016」でNECグループのブースがメインに据えている展示テーマがAI技術だ。同社ブースの最も目につく一角にNECのロゴとともにAI技術群ブランド「NEC the WISE」のロゴを掲げ、NEC北米研のディープラーニング技術を使った高速・軽量「RAPID機械学習」ソフトウェアの画像解析版を紹介。子供の書いた動物のイラストがどの動物かを分類する機械学習を、ノートPCクラスのマシンで稼働する様子をデモしている。

 また、セキュリティ分野でのAI技術の活用として、未知のサイバー攻撃を自動検知する「自己学習型システム異常検知技術」を参考展示している。NECの開発した軽量・高速な監視エージェントによって組織内のホストの通信先や使用アプリケーションなどのあらゆる動作を監視し、「平常時」の状態を自己学習しておくことで、それとは異なる、平常ではありえないホスト同士の通信などが発生した状態を「異常時」として検知する仕組み。人手による従来の作業と比較して10分の1以下の時間で被害範囲を特定できるとしている。

 今年のCEATEC JAPANは、東京オリンピック・パラリンピックが開催予定の2020年に実用化・活用が見込まれるテクノロジーのショーケースとなる展示会としても位置付けられている。NECのブースでは、同社のAI技術や画像・映像認識技術を使った警備・防犯分野のソリューションの展示も目立った。

 ベスト型のウェアラブルカメラを装着した警備員「ランニングポリス」は、例えばマラソン大会などのイベント時に警備員が走りながらとらえた周囲の映像を警備本部に送信。要注意人物などがいないか顔認識によって検知し、その結果を現場のランニングポリスのスマートウォッチなどに通知するというソリューションだ。モバイルネットワークのスループットを予測して映像の圧縮率とコマ数を動的制御することで送信する映像の乱れを抑制する「適応配信映像制御」、サーバー側で逆光や暗がりなどでも輪郭や色を補正して視認性を上げる「映像鮮明化」といった機能も備えている。

 また、防犯カメラなどの複数場所の映像から、不審な人物を抽出できる映像分析技術も展示している。これまでの映像分析技術では、例えば要注意人物など特定の顔と一致する顔を映像から認識することは一般的に可能だったが、どういった顔かは分からないが複数の事件現場に現れるような人物を抽出するなど、具体的な顔認識の対象が不明な場合は困難だったという。今回展示している技術では、例えば駅や観光地などでターゲットを探している不審者のような「不自然に頻繁に現れた人物」や、放火現場など「複数の事件現場に共通して現れた人物」といったパターンで人物を抽出できる。NECでは、複数の映像から抽出したそれぞれの顔が同一人物かどうか照合する処理を効率化できるデータ構造を採用し、互いに類似した顔を特定するまでの時間を短縮化しているという。

 このほか、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの日本選手団の記者会見会場で使用された実績もある「ウォークスルー顔認証」による入場管理システムも、実際に来場者の顔を登録して体験できるデモが行われている。

 「耳音響認証」という技術も参考展示・デモしている。耳穴の形状を音で識別可能な生体認証技術を活用したもので、同技術に対応したイヤホンを耳に装着するだけで個人認証が行えるという。耳穴の形状によって反響音が個人によって異なるという性質を利用したもの。イヤホンにはスピーカーとともにマイクが搭載されており、認証用の音声を鳴らした際に返ってくる反響音をマイクで拾い、スマートフォンのアプリで照合する。

 同じ生体認証技術であっても、指紋などのように、認証動作をユーザーが意識する必要のないパッシブ方式の認証技術である点が特徴。また、認証に使用する生体キーが指紋のように生体の一部そのものではないため、定期的に生体キーを変更するも容易。同じ人間であっても、異なる認証音を用いることで、その音に対する反響音も変わるため、生体キーを無限に作成できるとしている。

 現時点での精度は、他人受入率(他人の耳穴を誤って本人と認証してしまう割合)は0.01%。逆に本人拒否率は3%。ただし、前述のようにユーザーに認証のための動作をさせることなく認証作業が行えるため、認証に失敗した場合には認証作業を複数回繰り返すことも容易であり、本人拒否率は下げることが可能だとしている。なお、現時点では認証音は可聴音を用いるというが、今後、非可聴音を音声コンテンツの“透かし”のように入れることでそのコンテンツの利用者を認証するといった活用も考えられるという。

 NECでは、耳元でインターネットにつながる“ヒアラブル”について、ウエアライブルデバイスの本命だと説明。個人認証に加えて、位置測位、モーションセンサーなどによる歩数・姿勢検知やジェスチャー認識などの状態把握、声のトーン・脈拍などに基づいた感情分析などの機能を追加していく構想を持っており、人にまつわるデータをヒアラブルで収集することでIoT/マーケティングを加速させるとしている。