イベントレポート
渋谷をつなげる30人レポート
「渋谷の公園」のあるべき姿は? 「シブヤ コオエン部」が目指すビジョン
2020年3月27日 07:33
テクノロジー企業が続々と集結し、新しい文化だけでなく新しいビジネス、新しい行政サービスの発信源ともなっている渋谷区。
そんな日本、東京の最先端をゆく街の課題を発見し、チームで解決していくプロジェクト「渋谷をつなげる30人」(主催:Slow Innovation株式会社)は2020年3月5日、最終報告会が行なわれ、4期目の締めくくりを迎えた。
2019年11月にレポートした「実装」段階からブラッシュアップを図って臨んだ最終報告会は、昨今の情勢を鑑みて規模を縮小し、関係者のみが参加する形式となった。
一部メンバーはオンライン会議システムで参加するなど、イベントとしてはコンパクトではあったものの、この1年弱の間にアイデアを急速に形にし、トライアルを重ねてきた各チームの取り組みは、渋谷という街を大きく盛り上げる可能性を秘めたものとなったようだ。
30名、5つのチームはそれぞれ、渋谷に関係する所属企業から参加、そしてイベント自体は渋谷区も協賛している。彼らがこれからどんな活動を広げていくことになるのか。最終報告会のプレゼンの内容と、それに対する渋谷区副区長 澤田伸氏のコメントを5回の集中連載でレポートしたい。
第4回となる今回は、公園編だ。
全員が街づくりに参加できるようにしていく「シブヤ コオエン部」
「真のインクルーシブ公園を渋谷から」を合言葉に、渋谷区内の公園のあるべき姿を考え、新しい活用方法を模索していくのが、渋谷区役所緑と水・公園課と、サッポロ不動産開発、東急不動産などのデベロッパー、そしてクリエイティブエージェンシーのハツメイや、障害者の衣生活を支援する任意団体コオフクからなるメンバーのチーム。
多様な人を受け入れるという意味の「インクルーシブ」な、安全で楽しい公園をつくっていくことを目指している。
現在129箇所、計16万平方メートル以上もの面積がある渋谷区内の公園は、ボール遊びが制限されているなど禁止事項も多く、閑散としているところばかり。
この状況を変えていくイベントを開き、渋谷区で働く人、住む人、遊ぶ人全員が気軽に「街づくり」に参加できるようにしていく、「シブヤ コオエン部」というプロジェクトを推進する。
好評だった遊具のペイントイベント、更なるコンテンツ拡充へ
そのプロジェクトのフェーズ1として、2020年2月、渋谷区内の公園で遊具をペイントするイベントを実施した。
20名の子供と、その保護者、関係者らが集まり、汚れてペンキのはげた遊具を塗り直したことで、公園の雰囲気は一変。参加者からの反応も良く、5月か6月には第2弾のペイントイベントを代々木大山公園で開催する予定だ。
次のフェーズ2では、そうしたイベントがより安全でより楽しくなるよう、運営方法を確立するためのガイドラインを作成するほか、有識者や協力企業との連携も強め、落ち葉を使ったアートをテーマにしたり、車いすの試乗体験会を開いたり、というようにコンテンツの拡充も図る。
また、フェーズ3では「区民のみなさんから広くアイデアを募って、それを実現するための仕組み作りをする」ことを目標に据えた。
さらには渋谷で処分される不要服を材料にスモックとミトンを作成し、コオエン部の活動におけるユニフォーム的な位置づけで利用していくことも紹介した。
「イベントだけでなく、日常的に公園を活用するアイデアを」
このプレゼンを受けて澤田副区長は、区の取り組みとして、2021年春頃までに恵比寿に渋谷区初のインクルーシブ公園を整備する計画を明かした。2022年度には2箇所目を笹塚に整備し、「今後5年くらいかけて渋谷区内の公園を大胆に変化させていこうと考えている」とのこと。
そういった事情もあり、コオエン部のプロジェクトについては「最も我々が求めていたアウトプット。区としても積極的に連携していきたい」と話した。
ただし、単発のイベントを開いているときだけでなく、日常的に公園を活用し、盛り上げていくためのアイデアが必要との考えも示し、今後は区とも連携しながらパブリックスペースとして新たな価値を生み出していけるようブラッシュアップを続けてほしいと要望した。