イベントレポート
渋谷をつなげる30人レポート
渋谷を活かす「マイノリティの働き方支援」、障害者やLGBTQなど多様な人材の活躍を
2020年3月26日 07:33
テクノロジー企業が続々と集結し、新しい文化だけでなく新しいビジネス、新しい行政サービスの発信源ともなっている渋谷区。
そんな日本、東京の最先端をゆく街の課題を発見し、チームで解決していくプロジェクト「渋谷をつなげる30人」(主催:Slow Innovation株式会社)は2020年3月5日、最終報告会が行なわれ、4期目の締めくくりを迎えた。
2019年11月にレポートした「実装」段階からブラッシュアップを図って臨んだ最終報告会は、昨今の情勢を鑑みて規模を縮小し、関係者のみが参加する形式となった。
一部メンバーはオンライン会議システムで参加するなど、イベントとしてはコンパクトではあったものの、この1年弱の間にアイデアを急速に形にし、トライアルを重ねてきた各チームの取り組みは、渋谷という街を大きく盛り上げる可能性を秘めたものとなったようだ。
30名、5つのチームはそれぞれ、渋谷に関係する所属企業から参加、そしてイベント自体は渋谷区も協賛している。彼らがこれからどんな活動を広げていくことになるのか。最終報告会のプレゼンの内容と、それに対する渋谷区副区長 澤田伸氏のコメントを5回の集中連載でレポートしたい。
第3回となる今回は、働き方支援編だ。
「区の後押しと一定のルール作り」で渋谷区の多様性を生かす
輸送機器・電動工具メーカーのボッシュのほか、人材派遣のパーソルテクノロジースタッフおよび人材育成と組織変革支援を手がけるジェイフィールのメンバーなどが加わるチームがコンセプトとするのは、「誰も排除せず、多様な人材が活躍できる社会を目指す」というもの。
障害者の他、LGBTQや子育て世代の女性といったマイノリティの働き方支援、企業の障害者・マイノリティの雇用促進をテーマとしている。
2020年2月には「世界一明るい視覚障害者」とも呼ばれる成澤氏を講演者として招き、多様性への理解を深める「ダイバーシティ研修」を実施したことで、より具体的な道筋も見えてきた。
そこで得られたのは「ダイバーシティに対する意識はあるものの、実際に行動に移す方法がわからない人が多い」という知見。渋谷の多様性を活かすには「区による後押しと、一定のルール作り」が必要であると感じ、今後は大きく分けて3つのフェーズで取り組んでいくことになった。
雇用促進のための3つのフェーズ、渋谷区独自の施策も
フェーズ1では、すでに実施したような研修を継続することで、企業のダイバーシティへの理解を促進し、実際に企業からの発注を増やして雇用を創出する。具体的には、ボッシュのオフィス1階にあるカフェなどでダイバーシティ研修を定期開催できないかを打診中。
外国人エンジニアを抱えるパーソルテクノロジースタッフ、障害者の方たちが働いているLORANS、子育て中の女性に働き場所を届ける支援をしている代官山ひまわりといった企業・団体が、それぞれで仕事の発注を行ない、雇用の促進・維持を進めていくという。
フェーズ2では障害者雇用促進のための「ダイバーシティオフィス」の設置を目指す。障害者とマイノリティ人材がグループで一緒に働ける業務スペースを設け、一定規模以上の企業で義務化されている障害者雇用を支援しやすい環境を整える。
そしてフェーズ3では、障害者雇用義務の制度と同じように、子育て中の女性や外国人の雇用が広がるような施策を渋谷区が独自に展開していくことを目指すとした。
「すぐにでも進めるべき課題、まずはオンラインから始めてみては」
渋谷区では「ちがいをちからに変える街。渋谷区」というビジョンを掲げていることもあり、澤田副区長はこの働き方支援のプロジェクトについて「渋谷のビジョンの先端にあるテーマで、明日からでも我々(区役所)のチームと一緒に進めていくべき課題」だと言い切った。
しかしながら「フィジカルな場所を作る発想は捨てた方がいい」とも話し、「フィジカルな場所を探している団体はすごく多いが、(場所が見つからないため)いろいろな物事をストップさせる要因になっている。
まずはオンラインに、世界中の人たちが参加できるようなプラットフォームを作ることを考えては」と提案。
国、東京都、渋谷区、民間企業による共同ファンドをつくるなど、可能な限り大きな事業、大きなプラットフォームを構想すべきだとアドバイスした。