イベントレポート

渋谷をつなげる30人レポート

渋谷の「困りごと」を広告賞で解決?

 テクノロジー企業が続々と集結し、新しい文化だけでなく新しいビジネス、新しい行政サービスの発信源ともなっている渋谷区

 そんな日本、東京の最先端をゆく街の課題を発見し、チームで解決していくプロジェクト「渋谷をつなげる30人」(主催:Slow Innovation株式会社)は2020年3月5日、最終報告会が行なわれ、4期目の締めくくりを迎えた。

 2019年11月にレポートした「実装」段階からブラッシュアップを図って臨んだ最終報告会は、昨今の情勢を鑑みて規模を縮小し、関係者のみが参加する形式となった。

 一部メンバーはオンライン会議システムで参加するなど、イベントとしてはコンパクトではあったものの、この1年弱の間にアイデアを急速に形にし、トライアルを重ねてきた各チームの取り組みは、渋谷という街を大きく盛り上げる可能性を秘めたものとなったようだ。

 30名、5つのチームはそれぞれ、渋谷に関係する所属企業から参加、そしてイベント自体は渋谷区も協賛している。彼らがこれからどんな活動を広げていくことになるのか。最終報告会のプレゼンの内容と、それに対する渋谷区副区長 澤田伸氏のコメントを5回の集中連載でレポートしたい。

 第5回となる今回は、広告賞編だ。

渋谷の地域課題解決に向けたクリエイティブアワードが設立?

お土産からアップサイクルを経て、コンセプトを若者クリエイター向けの広告賞へと定めた

 最初は「渋谷区に新たな観光資源となるお土産を作る」というテーマからスタートし、11月の段階では渋谷区で生まれた不要服を再資源化する「アップサイクル」へと大きく方針変更したチーム。

 しかし最終的にはさらにアイデアを転換させ、「渋谷ソーシャルクリエイティブアワード」というプロジェクトに変貌した。

 再び方針が変わった理由は、2020年2月にトライアル開催したワークショップがきっかけ。「アップサイクル」の軸で文化服装学院などの協力のもとイベントを開催したが、そこで参加した学生たちの社会貢献意識の高さに驚かされたという。

 彼らの課題解決に向けた多数のアイデアを具体的なアウトプットにつなげるにはどうしたらいいかを考えるうちに、渋谷の地域課題を解決しながら、クリエイターをエンパワーメントしていけるアワードの設立というアイデアが生まれたとのこと。

2020年2月にトライアル開催したアップサイクルのワークショップを振り返る
学生たちの社会貢献意識の高さに気付き、そのアウトプットの場を模索することに

 渋谷ソーシャルクリエイティブアワードは、地域課題に特化した公募型の広告賞として設立し、たとえば渋谷区内で問題となっている放置自転車、ゴミのポイ捨て、ファッションロスやフードロスといったことをテーマに、それを解決するクリエイティブなアイデアを募る。

 若手クリエイターの活躍の場としても、街の人が課題について深く考えるきっかけとしても機能させることが目的だ。

渋谷区の課題をクリエイティブな発想で解決するアイデアを募集し、審査、表彰する

将来的には区民が困りごとをSNSで発信し、それを賞のお題に

 今後はアワードのプロトタイプとして仮課題を1つ設定し、審査して表彰するまでの一連のプロセスを実施する計画。将来的には、地域の困りごとを見つけた区民がSNSで発信して、それを賞のお題として吸い上げられる仕組みづくりも検討する。

 課題に対して街の商店に協賛してもらったり、企業の社会貢献活動の1つとしてPRに活用してもらえるような位置付けにしていきたいとした。

アワードのプロトタイプの実施を計画
区民が見付けた困りごとをSNSで発信し、それを課題設定する仕組みを検討
渋谷区の企業や商店が協賛してくれるような課題も

 これに対して澤田副区長は、2020年の今年、長年続いているとある広告賞が大幅にリニューアルし、クリエイティビティを競う祭典として10月に渋谷で開催される計画があることを紹介。

 その賞に、地域課題の解決方法をクリエイターが応募して、その内容を表彰する「ソーシャルイシュー部門」もあることから、賞と連携するか、その部門に応募してみてはどうかと提案した。

澤田副区長は最後に渋谷区における取り組みについても紹介

渋谷だけでなく日本の各地域が今すぐにチャレンジすべき活動

 今回の最終報告会をもって、第4期の「渋谷をつなげる30人」プロジェクトはいったん終了となる。

 しかし、ここで生まれた5つのプロジェクトは今後も各チームが継続して進展させ、いずれは渋谷の街を大きく変えていく火種となる。あるいはチームメンバーの企業の新たなビジネスとして成長していく可能性もあるだろう。

 こうした街作りにかかわる「つなげる30人」の取り組みは、渋谷をモデルケースとして、名古屋や京都、宮城県気仙沼市にも広がっている。

 人口減や働き手不足などに止まらず、行政や地域住民が抱える課題は都市か地方かに関わらず存在しているもの。できるだけ多くの地域が危機感をもって同様の取り組みを推進し、日本全体が活性化していくことを望みたい。