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プログラマー向け技術情報共有サービス「Qiita」、5年で月間UU数が250万人を突破

 Increments株式会社は20日、同社が開発・運用しているプログラマー向けの技術情報共有サービス「Qiita(キータ)」について、開設5周年を迎え、9月末時点での月間UU数が250万人を突破したことを発表した。現在は1日約200件、累計では約17万件の記事が投稿されている。

 Qiitaは、Incrementsで代表取締役を務める海野弘成氏が友人2人と大学在学中の2011年に開発してサービス提供を開始。当時はプログラマー向けのコミュニティが国内にはなく、使いやすさから支持を得て、現在では日本最大のプログラマーコミュニティに成長した。ユーザーの97%は日本国内からアクセスしており、うち都内からが半数を占めている。多くは30代男性とのことだ。

 海野氏は「プログラミングでは、エラーで動かない問題に突き当たることが多いが、その問題は誰かがすでに解決していることがよくある。各自が別々に同じ問題に時間を使うのは非効率で、これを解消できれば、本当に取り組むべきユニークな課題に時間が使える」と、Qiitaを開発した際の動機を語った。

 Microsoftで日本語版・韓国語版Windowsの開発統括を経て、Googleでプロダクトマネージャーを歴任、現在はIncrementsでQiitaのプロダクトマネージャーを務める及川卓也氏は、Qiitaについて、「さまざまな知見を共有し、技術を身に付けるだけでなく、楽しんでもらうコミュニティサービス」と述べ、特徴として、技術者が書きやすい簡単な記法でリッチなコンテンツを記述できる「Markdown」の採用を挙げ、「プログラマーが技術的なコンテンツを書くのであれば、ブログなどではなく、Qiitaに書く方がいいという流れが出来ている」とした。

 Qiitaにログインすると、事前にフォローしたHTML5、Ruby、Railsといった興味のある技術分野に関する投稿記事が新着順に一覧表示される。また、左のメニューから、興味に関係なく旬の記事を集めた「人気の投稿」を一覧表示することも可能だ。

 及川氏が投稿した2016年のGoogle I/OについてのHTTPSについての記事を表示したところ。左メニューには特定のセクションに移動できる目次が自動生成される。

 投稿記事へはコメントもできるほか、記事左上にある「ストック」を選ぶと、投稿記事を後から見直せる。ストックには、記事投稿者に対する「いいね」的な側面もあり、これが数多く押された記事を投稿されたユーザーは、技術力やコミュニティへの貢献を表す「Contriution」が増えていく仕組みとなっている。

 記事の投稿時には、すでに存在しているタグがサジェストされるほか、「#」の数で見出しレベルを表したり、「-」で箇条書きにしたり、記号で太字や打ち消し線を記述することができる。

 プログラムコードを記述する際には、言語により異なる予約語などが、シンタックスハイライトの機能により自動的に色付けされるなど、見やすくコードを記述できる。勉強会向けにスライドを記述する機能なども利用可能だ。

 Qiitaの特徴的な機能である「編集リクエスト」の機能は、記事に対する間違いを見つけたときなどに、記事ページの下部にあるボタンを押すことで、閲覧者が記事そのものを直接修正できる編集画面が表示されるもの。修正後の内容は記事投稿者に差分とともにメールで送信され、投稿者がこれを受け入れれば、投稿内容がが更新されるものだ。こうした仕組みにより、例えば1年前の記事でもメンテナンスできる点が個人ブログなどとの違いになる。

 こうして生み出されているQiitaの記事は「検索流入が非常に多い」(及川氏)とのことだ。この事実がユーザーの支持を表しているが、例えば「Node.js」「Tensorflow」といった検索ワードでは、Qiitaの記事や関連記事一覧のページが上位に表示されるという。これについて及川氏は「質の高い、ユーザーに利益を与えるコンテンツが集積されている」とした。

 Qiitaの今後については、現在は「必ずしも多くのユーザーに使われているとは言いがたい」(及川氏)という編集リクエストの機能について改善するほか、1つの投稿を複数人で共同編集する機能や、投稿内容をリクエストする機能などを追加するという。また、ストック数以外にもユーザーの貢献を表すContributionを分かりやすくするほか、「投稿を質の部分から判断できるようにし、より質の高い投稿が多くの人の目に触れるように」(及川氏)する改善も図るとのことだ。

企業内チームでの情報共有ツール「Qiita:Team」も解説

 Incrementsでは、「Qiita」のほかに、開発者を中心とした企業内チームでの情報共有ツール「Qiita:Team」を企業向けに有償(1ユーザーあたり700円)で提供している。その名の通りQiitaをベースとしたサービスで、「ソフトウェア開発チームで必ず生まれてしまう個人の暗黙知の強みや独自性を、チームで共有することで成果につなげる」ことが目的だという。

 そのために「簡単に記事を投稿できるよう、機能をシンプルに絞ることで負担を減らすことに加え、フィードバックが得やすいよう絵文字を使って感情なども表現できるようにすることで、情報共有とコミュニケーションを活性化し、情報を共有する文化を生み出せる」とした。

 投稿負荷を減らすためのテンプレート機能は、タイトルとタグ、本文のスケルトンを自由に設定したフォーマットを作成して登録でき、投稿時に選択することで、毎回同じ繰り返しの部分は書かずに投稿が行なえるもの。

 投稿へのコメント内には、ユーザーを特定して記事を共有でき、共有されたユーザーにはメールで通知される。また、チームメンバーを表す絵文字の利用なども可能だ。Slackをはじめとした各種チャットとの連携にも対応している。

 現在、Qiita:Teamを利用しているのは、3人の小規模から数百人規模までの500チームとのことだが、これまでに60万件もの投稿が共有されているという。企業向けの情報共有ツールとしては、非常にアクティブ率が高いと言える。

 今後は、Qiita:Teamにおいて“共有された情報をどう使うか”を主眼として、「蓄積された膨大な知見やデータ、議論を、新しいアイデアや発見などといった将来の成果につなげる」ため、蓄積した情報を生かす検索機能の改善のほか、「ユーザーごとに把握している情報や、ユーザー間のやりとりの履歴などから、人と人の距離を可視化したり、メンバーの関係性や詳しいジャンルを生かし、やりとりした方がいい、不足しているスキルなどを提案する」(海野氏)といった、つながりを作る機能の拡充を目指すとした。

 Incrementsは全社員20人のうち、エンジニアが10人を占めるなど、計13人がソフトウェア開発に関わるメンバーからなる。プログラマー出身の経営者である海野氏は、6月から、13~17時のコアタイムにSlackなどのチャットでオンラインになることだけを条件とするリモートワーク制度を導入し、成果を上げているという。

 海野氏は、Incrementsの事業について「スマートフォン、IoT、AIといった新技術はもちろん、電気やディスプレイといった技術まで、今後はあらゆるものがソフトウエアの影響を受け、今後はその重要性がますます増していく。その開発効率を改善することで、世の中の進化を加速できる」とのビジョンを示した。