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DeNA、キュレーションサイトのデタラメ/パクリ記事問題で経緯説明・謝罪会見

著作権侵害や健康被害を受けたユーザー向けの相談窓口フォームを開設

 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は7日、同社のキュレーションプラットフォームサービスとして展開していた10のウェブサイトの非公開化と、第三者調査委員会の設置について記者会見を行った。DeNAでは、著作権侵害やサイト情報による健康被害などを受けたユーザー向けの相談窓口フォームを開設する。

 DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏は会見で、「ユーザーや関係者を含むすべての関係者に、多大な迷惑と心配をおかけし、心よりおわびを申し上げます」と陳謝した。DeNA創業者でもある取締役会長の南場智子氏は、「ただただ残念で申し訳ないの一言。現場のオペレーションにはミスや誤りがゼロにはならないが、速やかにチェック機能を働かせて管理監督できる状況にしておくのが、一流企業の在り方。まず自ら過ちに気付いてしっかり是正をしていく機能を徹底的に強化していく必要があると考えている」と述べた。

 守安氏は「キュレーションメディアは、情報をまとめ上げることで価値を出すと考えていたが、内容の正確性を含めて記事自体が適切な作り方だったのか、その過程で権利者の権利を侵害していることが問題だった」と述べ、「問題につながる社内風土文化の改善、抜本的な改革を行う」と述べた。著作権侵害については、「権利侵害が起こらないように留意してきたが、著作権の判断は難しい。一方で、権利者とのコミュニケーションや配慮が欠けていた」と述べ、今後は「個別の権利者と1件1件対応していく。明確な権利侵害があったり、実害をこうむった場合は向き合って相談する」とした。

 キュレーションサイトの記事作成にあたっては、社内のプロデューサーから社内外のディレクターへ指示があり、そこから社内外のライターが実際の記事執筆を行っていた。ディレクターからは外部パートナーに委託する場合もあった。各サービスへの投稿は社内外のディレクターが行っていたという。

 これについて守安氏は「記事の責任を負う機能が明確には存在していなかった」とし、「発注時に、他社の記事を参考する場合は、もとの記事と同じにならないようにするマニュアルも存在していたが、不適切・不正確な記事が容易に掲載される仕組みになっていた」と述べ、「サービスの成長を追い求める過程で、正しい情報を担保できない体制で、記事の引用などを不適切に助長するような体制になっていたことを反省している」とした。

 DeNAでは2014年9月、住まいやインテリアに特化したサイトを運営していたiemo株式会社と、女性ファッションに特化したMeryを運営する株式会社ペロリの買収により、キュレーションプラットフォーム事業を開始。続けて買収したFind Travelなど新ジャンルのプラットフォームを順次立ち上げ、これまでに10のキュレーションメディアを運営していた。このうち、ヘルスケア情報を扱う「WELQ」について、専門家による監修のないまま根拠が怪しい内容の記事を大量に公開し続けているとして批判を受け、11月29日に記事を非公開としていた。

 それらの記事が他サイトのコンテンツを盗用することで大量作成されていた疑いも指摘されており、運営体制・方針が共通するキュレーションサイト「iemo」「Find Travel」「cuta」「UpIn」「CAFY」「JOOY」「GOIN」「PUUL」の8つについて運用体制を調査し、12月1日に非公開化していた。WELQとこの8サイトは、同社のキュレーション企画統括部が管轄しており、iemoの代表取締役CEOでもある村田マリ氏が担当執行役員を務めているが、マニュアルの存在や内容について守安氏が村田氏に確認したところ、「把握していないとの答えだった」という。

 問題が最初に発覚したWELQの約9割を筆頭に、キュレーション企画統括部が管轄する9サイトでは、クラウドワーカーへ発注された記事が6~9割を占めていたという。その記事作成時の指示や記事作成用マニュアルには、サイトごとにばらつきがあり、制作フローにもいくつかのパターンがあったという。一部報道では、記事作成用マニュアルに著作権侵害を助長する表現があったとされており、守安氏は「他サイトからの文言の引用を推奨していると捕らえられかねない表現があった」と述べ、これもサイト非公開化の理由に挙げた。

 残る「MERY」については、買収前から株式会社ペロリ代表取締役の中川綾太郎氏が引き続き現在まで担当しており、9サイトとは運営がかなり異なる。記事作成マニュアルの存在は、「現在のところ確認されていない」という。記事執筆も「内部で直接雇用しているしているアルバイトやインターンなどのライターが44%を手がけており、ヘアサロンなどのパートナーが投稿した記事も少なくないという。また、一般の登録ユーザーの投稿が十数%で、ほか9サイトで多数を占めたクラウドワーカーの執筆するものは約10%程度とのこと。

 このため、当初は出典元が不明の画像がサムネールに含まれる記事や、「ダイエット」「効果」「絶対」「バツグン」など美容・健康に関する540ワードや、「100%」「だれでも」「色っぽい」などの不快感を与える言葉がタイトルや詳細内容に含まれる記事など、「少しでも問題が含まれうると機械的に判断して削除していったところ、約8割に達した」(DeNA執行役員経営企画本部長小林賢治氏)という。これを受けた10時間以上の経営会議の中では、閉鎖せずに運営を続けることも検討されたとのことだが、「運営に関する疑義を明らかにするための厳正かつ公正な調査を行なうにあたっては、サービス運営が停止していることが必要」として、12月7日に非公開化する方針が12月5日に示されていた。

 ペロリでは7日付でプレスリリースを出し、全記事の非公開以外にも、広告商品の販売停止、雑誌版「MERY」2017年3月号の発売延期、予定していた全キャンペーンの中止、MERY内のECサービス停止に加えて、月額会費制で対象店舗のネイルサロンが格安で利用できる「MERY PASS」についての12月31日での停止を明らかにしている。

 守安氏は「さまざまな新規事業にトライする中で、期待通りの成長が難しかった。そんな中で、メルカリやスマートニュースなどのスタートアップ他社が勢い良く成長していた。そんなタイミングで出会ったスタートアップがキュレーションメディアを手掛けたiemoとペロリだった」と述べ、スタートアップの良さを温存しながら成長したい一方、一部上場企業としてのバランスをうまく取れなかったとした。

 また、インターネットメディア事業を手がける上で、「例えば著者権者への配慮や、正確性だけでなくユーザーにとっての質の担保といったメディア事業に対する認識が足りなかった」とした。守安氏は、月額報酬の30%を6カ月間にわたり減額することを自ら申し出たという。

 南場氏は「今はキュレーションだけが問題だが、ルールを守って成長させるのは当然のこと。内部通報や内部監査のオペレーションを確立しているはずが、外部から指摘を受けるまで自浄できなかった。これまでも徹底していたと思っていたが、これをもう一度ゼロから見直し、不十分だったとの認識の下で、会社をしっかり立て直さなければならない」と述べ、「DeNAグループ全体が信用を大きく棄損した。信頼回復に努めたい」と語った。

 設置する第三者委員会は、DeNAの社外取締役を含む外部専門家によって構成。今回の問題についての事実関係を調査するとともに、企業風土やコンプライアンス・組織運営体制などの背景も含め、原因を究明し、報告書を公表するとしている。

 調査のスケジュールは、第三者調査委員会の体制決定後に、調査範囲や方法を確定させた上で決定される。現在は人員の選定を進めている段階で、調査終了時期などは、委員会の決定事項となるため現在のところ未定。

 調査報告書は同社の取締役会に対して提出されるほか、広く公表される。また、社員のプロジェクトチームを立ち上げ、並行して調査を行うという。守安氏は「調査に全面協力し、社内でも問題のある部分を洗い出し、一日も早い信頼回復を目指して徹底的な改善策を実行する」と述べた。