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名刺管理アプリ「Eight」利用者の履歴データをAI解析、“転職潜在層”を企業にレコメンド

Sansan、企業向けリクルーティング機能など提供開始

 Sansan株式会社は22日、名刺アプリ「Eight」の企業向け新サービスとして「企業ページ」をリリースした。利用は無料。あわせて有料となるリクルーティング機能「Eight Talent Solution」と、ターゲティング広告配信機能「Eight Ads」の提供を6月末までに開始する。

 Eightは、名刺情報を管理できるアプリとして2012年に提供を開始。アプリで撮影した名刺の情報が、独特のレイアウトなどもAIによって解析され、OCRと人力を組み合わせて正確に入力される。これまでに、ユーザープロフィールの登録、ビジネスに特化したメッセージやフィードの機能を加え、現在では150万以上のユーザーに利用されている。

 Sansan株式会社取締役Eight事業部長の塩見賢治氏によれば、「Eightには年間1億枚の名刺が登録され、これは国内での名刺のやり取りの10%に相当すると推定される。これにより、人と人のつながりが集約されている」とし、「受けとった名刺が見つからない、以前名刺交換した人と連絡が取りたい、といったユーザーが日々向き合うビジネスの課題解決をサポートする」とした。

 そして、「単なる名刺交換だけでなく、昇進や転勤などがあっても、プロフィールを更新すれば相手に伝わり、その上で情報をやり取りできる。フィード機能で、ときどきコミュニケーションしたり、ビジネスの知り合いを継続できるので、一期一会の出会いを未来につなげられる」と述べた。

 メッセージやフィードといった、SNSライクな機能を備えてきているが、「3人でチャットできるグループメッセージの機能では、課題に応じた知人の紹介などが行える。プライベートで利用するSNSでなく、ビジネスに特化しているからこそ、気軽に利用できる。ユーザーにもビジネス利用のコンセンサスがあるのが最大の特徴」とした。

 そして、「多種多様な情報のあふれる現在、本当に価値ある情報を探し出すのに労力を要する。山のようにあるサービスの中から、自分のビジネスにとって本当に価値があるものを探し出すのは難しい。企業側でも必要な人に情報を届けるのは難しい状況。情報をつないでいくのが現代のビジネスマンに求められている課題になっている」とした上で、企業ページのリリースについて「いままでのEightにおける個人同士のつながりでは、この点で限界がある」とした。

 Sansan株式会社Eight事業部チーフプロデューサーの千住洋氏は、「企業が発信しているコンテンツが、届けたい人に届いているか? 製品や求人の情報を見に来てくれているか? 見られているとしても、その人の属性をトラッキングするのも難しい。一方で、一般的なSNSでは、ビジネス情報がエンタメやプライベートな情報に埋もれがちだ。昨今、多くの企業がオウンドメディアを用意しているが、ターゲットにしている多くの人に読んでもらうのは難しく、ユーザーにとっても探すのは難しい。だからこそEightに企業ページを作る」とした。

 企業ページは、企業が無料で広報やマーケティングなどの情報を、企業ページをフォローしたユーザー向けに掲載できる機能。すでに一部企業に先行提供されている。

 企業名をタップしたり検索することで、企業ページを表示できる。ロゴや企業概要を登録でき、中央の関連人物タグでは、自分の知り合いやコンタクトの多い人、自社の同僚、相手先のOBなどを表示できる。企業にかかわるネットワークを確認することで、親近感を持って見ることができる」とした。

 「その企業に興味を持てば、フォローすれば自分のフィードに情報が流れるようになり、ユーザーと企業のコミュニケーションをシンプルにつなげられる」という。なお、Eightの個人ユーザーの所属する企業がページを立ち上げると、自動的に所属している状態になるが、設定を変更することも可能だという。

 塩見氏は「業務に関連のありそうな企業や、興味ある情報をフォローすれば、定期的にビジネスに必要な情報を得られる。個人同士のSNSに企業の概念を加え、ネットワークのあり方もユーザーの活躍の幅も大きく変わるのではないかと期待している」と述べた。

転職潜在層を企業にレコメンドする「Eight Talent Solution」

 リクルーティング機能「Eight Talent Solution」については「これまで培ってきた能力やスキルを活用するため、“転職”の選択肢が一般的になりつつあるが、転職活動の手間は変わっていない。一方で企業でも本当に自社にマッチする人材を探すのには時間と労力を要している」とした。

 千住氏は、Eightユーザーの転職履歴データは毎日500件が蓄積されているという。「プロフィールで更新された情報から、どんな職種の人がどういったタイミングで、どういう会社に移ったかが分かる。これをAIで解析すれば、どのような業界でどういった能力が求められているかが分かり、さらに業界動向の分析も行える」とした。

 さらに「採用活動を行う企業の募集要項に対しては、人材をレコメンドできる」とした。企業側ではこうしたAIによるレコメンドにより、人材採用にかける時間や労力を削減できる。また、実際に転職活動を行っている人だけでなく、転職の潜在層にもリーチできる点が、既存の転職エージェントサービスなどにはない強みとなる。

 塩見氏は、「ステークホルダーに焦点を絞て、理想の人材を探したり、自社製品を本当に必要な人とコミュニケーションできる」と述べ、「ビジネスパーソンは自らの能力を最大限に生かし、企業は理想の人材でイノベーションを手に入れることができる」とした。

帝国データバンクの企業情報を活用したターゲティング広告機能「Eight Ads」

 千住氏は、「ターゲティング広告は、課題解決と解決策をつなぐビジネスマッチング手段として一般化しているが、関係のないサイトでビジネスのことを言われるケースがあり、互いにメリットのない結果になっている」とし、Eight Adsでは、「帝国データバンクの従業員規模と名刺の部署データと連携しているため、(その情報が)役立つ相手にだけ、インフィード広告として届けることができる」とした。

 5月から一部企業に先行提供しているが、「文脈があって反応率が高いため、リピート率が高い」とのことだ。ユーザーの視点からは「よい情報が見つかっても、入力フォームの手間で約9割のユーザーが離脱しているとのデータがあるが、(Eight Adsでは)名刺情報を使い、手間なくワンタップで資料請求や問い合わせが完了できる」とのことだ。

 そして「企業には事業拡張の成長エンジンとして、ユーザーにはビジネスネットワークをEightで管理するだけで、よりビジネスの課題解決に役立つ情報を入手できる手段となる」とした。

 最後に塩見氏は今後の展望として、「ビジネスの課題は常に変化し、応え続けるために進化を続けていく。今回リリースの企業ページはほんの一部で、発信した情報が、届いているフォロワーの属性や行動分析、マーケティングのためのデータ活用ソリューション開発の機能開発を現在進めている」と述べた。