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9軸センサー搭載、IoT時代の硬式野球ボール「Technical Pitch」販売開始

 株式会社アクロディアは25日、投球データを計測できる硬式野球ボール「Technical Pitch」の販売を開始した。アルプス電気株式会社の9軸センサー(3軸角速度センサー、3軸加速度センサー、3軸地磁気センサー)を内蔵しており、ボールの回転数や回転軸、球速、球種、変化量、腕の振りの強さ・時間を計測し、スマートフォンから確認できるのが特徴だ。また、元巨人軍の中村稔氏がアドバイザーとして開発に携わっている。

 センサーで取得したデータは、測定用のAndroid/iOSアプリを使って閲覧可能。計測したデータは同時にAWS(Amazon Web Services)にアップロードされるため、属性ごとの投球データの解析も可能としている。投手が構えてからボールを離すまでの動き・強さを計測する「投球モーション」機能も備えており、ストレートや変化球での腕の振りをユーザーごとに分析可能。球種ごとの癖を把握することができる。

センサーで取得したデータはアプリから確認可能

 アクロディア代表取締役社長の堤純也氏によると、伸びのあるボールは回転数が多く、球速以上に速く感じられることがあるという。Technical Pitchを用いて回転、回転軸を組み合わせた分析を行うことで、想定した軌道で投げられているか確認でき、投球フォームの改善に繋げられるとしている。

 ボールの外形寸法は22.9~23.5cm、重量は141.7~148.8gで硬式野球ボールと同じ重量、硬さになる。9軸センサーを、一般的な硬式球に利用されるコルク芯と同サイズ・重さでまとめてることで実現できたという。また、一般的な野球ボールと区別をつけるため、縫い目には青糸を採用するなど工夫を施している。

「Technical Pitch」ボール本体

 バッテリーは普段はスリープ状態になっているが、1m程度投げることでスイッチが入り、スマートフォンとペアリングできる。通信にはBluetooth 4.1を使用しており、通信距離は見通しの良い場所で約20mまで。使用温度範囲は5~35度で、実使用投球回数は1万球となる。バッテリーは充電式にすると本体が重くなり、使い勝手が悪くなるため、埋め込み型のバッテリーを採用した。

 堤氏によると、アクロディアのIoT技術を生活の身近なシーンで活用するためスポーツ分野に着目したという。野球では高価な弾道測定器「トラックマン」を導入することなく、簡単に投手の投球データを安価に計測できるため、選手の育成にも役立てると期待を寄せている。今後は野球以外のスポーツに向けた商品開発も行っていくとしている。

 なお25日より販売を開始したTechnical Pitchだが、まずはプロ野球の秋季キャンプで導入し、来春にはコンシューマー向けに本格的にサービスを展開する予定だそうだ。Technical Pitchは1個1万9500円程度になるが、年間でのリース契約の提供も予定している。

これまで感覚的だった球の“キレ”をIoT技術によって可視化

 同日行われた発表会では、元巨人軍の中村氏のほか宮本和知氏、社会人野球監督の片岡安祐美氏らがTechnical Pitchが野球界にもたらす変化について語り合った。

 特徴として、1)投手のコンディションを管理しやすくなること、2)投手の育成が革新的になること、3)投手のスカウトが劇的に変化することが挙げられた。

 宮本氏は、「コンディションが良くてもボールを上手く投げられない原因を突き止めたり、これまで感覚的だった球の“キレ”をデータ化して投球技術を分析できることが革新的だ」とコメント。片岡氏は、ピッチャー自身がデータを見て練習できるため、やる気に繋がることが利点だとしている。また、選手の良さをランク付けできるようになることで、「データを活用して選手が自分を売り込める将来が来るのではないか」と語った。

宮本氏が「Technical Pitch」を使ったピッチングを披露。球速73km/h、972rpmを記録。球の回転軸もアプリ上に表示された
片岡氏やタレントの松村邦洋氏がデモンストレーションを行った際はデータを正常に計測できず、何度も繰り返し投げる結果に