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「WeWork」ってどんなところ? 渋谷区最高峰にある「WeWork 渋谷スクランブルスクエア」を見て来た
2020年4月3日 15:00
2019年11月に渋谷駅の直上にオープンした大型複合ビルの「渋谷スクランブルスクエア」には、コワーキングスペースの「WeWork」が入居した。WeWorkというと、ソフトバンクが出資し、今回ご紹介する渋谷スクランブルエリアのように新規拠点が次々とオープンしていることもあり、日本でも耳にする機会が増えてきた。
正直に言えば、在宅勤務なフリーライターの筆者は、コワーキングスペースを利用したことがないこともあり、WeWorkがどのようなサービスを提供しているのか、いまいちピンと来ていないところがある。読者も同様の方が少なくないのではないだろうか。
今回、その「WeWork 渋谷スクランブルスクエア」を取材する機会を得たので、ここではWeWorkのサービス概要や魅力をWeWork広報・渉外部マネージャーの平位衣利奈氏に伺いつつ、実際のコワーキングスペースの様子を交えてレポートする。
この記事は、2020年1月末時点の取材に基づいて取りまとめたものです。WeWorkにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応については、下記リンクをご参照ください。
そもそも「WeWork」って何?
WeWorkは2010年に米国で創業した、コワーキングスペースを提供する会社だ。世界37カ国に739の拠点があり(2019年12月時点)、日本では2018年2月に初の拠点を開設している。ちなみに日本国内での事業は、ソフトバンクとWeWorkの合弁会社であるWeWork Japanが行なっている。
WeWorkが契約メンバーにオフィスを提供している拠点は国内の6都市(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡)にあり、東京だけで20カ所の拠点ある(2020年3月時点)。2年でこの数なので、月1カ所ほどのペースで拠点が追加されてきたことになるが、今年はすでに2拠点オープンし、そのほかにも6拠点のオープンが決定している。拠点は基本的にオフィスビルや複合ビルの中にあるが、原宿の「WeWork アイスバーグ」はビル一棟まるごとがWeWorkとなっている。
WeWorkではオフィスの多い大都市圏の中心部に集中的に拠点を設置するような方針をとっていて、東京であれば山手線圏内などビジネス街中心に展開している。労働人口の多いエリアでの需要に応えるというのは当然の戦略だが、利用者が別の拠点に柔軟にアクセスしやすくすることも狙っているという。
国内の契約メンバー数は2019年12月時点で2万2000人を超えていて、こちらも増え続けている。メンバーとしては、フリーランスからスタートアップ企業、大企業、さらには自治体まで、幅広い人たちに利用されている。
WeWorkは月単位の会員契約サービスで、そのメンバーシップ契約は主に「ホットデスクメンバーシップ」「専用デスク」「プライベートオフィス」の3つの種類がある。メンバーシップ契約となっており、賃貸のように物件単位ではなく、敷金や礼金もかからない。
ホットデスクメンバーシップは共有エリアのワークスペースを利用できるというプランで、利用料金は最も安い。共有エリアはそれなりの広さがあり、さまざまなタイプのデスクやソファがあるので、作業や休憩、打ち合わせなどで使い分けることができるが、空席を探さないといけないし、機材などを置きっぱなしにできない不便さもある。
専用デスクは共有部屋のデスクを1つから占有できるプランだ。共有部屋なので貴重品や保護すべきデータなどを置きっぱなしにはできないかもしれないが、専用デスクの部屋には契約メンバーしか入れないセキュリティがかかっていて、施錠可能なキャビネットもある。また、こちらのプランでも共有エリアは利用可能となっている。
プライベートオフィスは部屋単位で占有できるプランだ。部屋は2名の規模からあり、100名単位や、フロアごと借りられる拠点もある。部屋は施錠できるので、普通のオフィスに近い使い勝手となるが、会議室やコピー機などは自前で用意しなくても、共有設備を利用できる。
いずれのプランにもWeWorkの受付での郵便物の受け取り(ホットデスクメンバーシップを除く)や来客応対、飲料飲み放題、清掃などのサービスが付属する。また、デスクをはじめとした什器やコピー機などの共有設備もWeWorkが用意している。光熱費もメンバーシップ費用に含まれるし、Wi-FiだってWeWorkが提供している。オフィスの場所を提供するだけでなく、オフィスの管理・運営に関わることの多くをWeWorkがやってくれるというわけだ。
賃料は拠点ごとに設定されている。今回取材したWeWork 渋谷スクランブルスクエアは国内では最高値クラスで、例えばホットデスクは1名で月額8万3000円となっている。WeWorkは基本的に都心部で展開しているので、どこもそこそこの料金だが、例えば2月にオープンしたばかりの五反田の「WeWork TK池田山」は、同じホットデスクでも月額5万6000円だ。勝どきの「WeWork Daiwa晴海」は最安クラスの3万8000円など、賃貸の家賃同様、場所によってけっこうな価格差がある。
契約メンバーには毎月「クレジット」が付与され、それを消費することで会議室を予約したり、契約している以外の拠点を利用したりできる。クレジットは追加購入も可能だ。クレジットの付与量はメンバーシップの種類によっても異なる。海外の拠点を利用することも可能だ。
一般的なオフィスの家賃自体と比較すると、メンバー1人あたりでコストのかかるWeWorkは、よほど少人数とかでない限り高くつくはずだ。しかし前述の通り、WeWorkはオフィスの管理・運営や共有設備も提供してくれるので、単純に比較することはできない。また、これ以外にもWeWorkならではの魅力というものもある。
柔軟さやコミュニティが「WeWork」の魅力
WeWorkは普通の賃貸オフィスと異なり、敷金や保証金がない。オフィスには必要な什器もそろっているので、初期コストはほとんどかからない。入居も退去も簡単なので、通常のオフィスでは難しいような柔軟な運用ができる。
例えば成長中のスタートアップ企業だと、会社の成長=スタッフ人数増に合わせてオフィスを借り直したり、あるいは成長を見込んであらかじめ大きめのオフィスを借りたりする必要があるが、WeWorkであればそういったコストや手間を削減できる。2人・3人くらいで事業を立ち上げる段階から利用でき、事業開始後にスタッフが増えたらその分だけWeWorkのメンバー契約を追加するか、人数が安定するならそのままWeWorkを退去して賃貸オフィスに移ることもできる。
賃貸オフィスだと借り直しのたびに敷金などがかかり、引っ越しや什器調達のコストや手間もかかる。成長中のスタートアップにとっては大きな負担となるので、WeWork利用は非常に魅力的だ。スタートアップ企業だけでなく、大きな企業でも新規事業を立ち上げるときはその事業部だけWeWorkにオフィスを構える、ということもできるし、実際にそうしている大手企業も少なくないという。
ほかのメンバーとの交流も、WeWorkの魅力となっている。WeWorkでは毎週3回以上、各拠点でWeWorkメンバー向けのイベントが開催されている。このイベントはWeWork自身が主催することもあれば、WeWorkのメンバーが主催することもある。
イベントはビジネスや技術のセミナーだったり、スタートアップ支援だったり、新規事業を立ち上げているメンバーが新しいプロダクトを持ってきたり、ほかにも英会話やヨガ、音楽ライブなどもあるという。
こうしたイベントでほかのメンバーと交流できるのもWeWorkの魅力だ。また、イベントだけでなく、ホットデスクや専用デスクであれば普段の作業環境もほかのメンバーとの交流の場となり得る。ここで新しい人脈や仕事を見つけたりすることもあるので、こうした社外との交流を求めてWeWorkを利用するメンバーもいるという。
WeWorkというネームバリューも魅力の1つだ。どの拠点も好立地にあり、オフィス環境が整っていることも分かるので、興味を持ってもらいやすく求人もしやすい。立地もよく環境も整っているので、営業活動などでもお客さんに訪問してもらいやすい。そうした場所を、スタートアップでも利用できるというのは大きな強みだろう。
「WeWork 渋谷スクランブルスクエア」はどんなところ?
WeWorkが入居した渋谷スクランブルスクエアは、2019年11月にオープンした、地上47階と渋谷区でも最も高い複合ビルだ。低層はお店やレストランなどの商業施設が入り、19~45階までにオフィスが入っている。WeWorkは37~41階の5フロアに入っていて、2020年1月末時点で同ビルへの入居が公開されているオフィスとしては最も上層のフロアとなる。
37階以上の高さとなると、周囲にある渋谷ヒカリエ(地上34階、DeNAなどが入居)や渋谷ストリーム(地上35階、Googleが入居)よりも高い。ちなみにWeWorkの下には、弊誌でも先日レポートしたミクシィグループの新オフィスが28~36階に入っている。また、15階にはスタートアップ寄りのコミュニティスペースの「SHIBUYA QWS」もある(こちらはハードウェアスタートアップも想定していて、WeWorkとは毛色が異なる)。
渋谷スクランブルスクエアは渋谷駅直結、というよりほぼ直上にあり、渋谷駅に乗り入れるJR私鉄各線へのアクセスが良好だ。特に、西にJR、北に東京メトロ銀座線、東の地下に東京メトロ副都心線・東急東横線の駅が隣接し、改札から同ビルまでは徒歩0分、徒歩時間よりエレベーターの待ち時間の方が長いくらいである。WeWork 渋谷スクランブルスクエアは国内トップクラスの賃料となっているが、この立地を考えると納得だ。
WeWorkの受付は37~41階のちょうど真ん中となる39階にある。各階はエレベーターで移動することもできるが、共有エリアの中央に内階段があり、受付からは上下最大2フロアの移動だけで済む作りになっている。
各階の階段周辺は、共有エリアになっている。共有エリアにはデスクやソファ、カウンターなどさまざまな座席や設備がある。これは前述のホットデスクのメンバーが利用するところだが、専用デスクやプライベートオフィスのメンバーも利用できる。
取材したのは平日の15時ごろだったが、普通のデスクは半分くらい空いていて、わりと簡単に空き席が確保できそうだった。一方、打ち合わせなどに適しているテーブルの方が空きが少なかった印象だ。
この共有エリアにはちょっとしたカフェカウンターがあるほか、コーヒーやお茶、ビール(時間帯限定)のサーバーもあり、セルフサービスだが飲み放題となる。自前で冷蔵庫やらカップやらを用意したり、いちいち洗ったり在庫補充したりしないで済むというのは、人手の足りないスタートアップなど少人数チームにはうれしいポイントだろう。ビールがあるというだけでちょっとWeWorkに入居しいてる会社に勤めたくなってしまう。
共有エリアは、フロア面積の3分の1~4分の1くらいで、残りは専用デスクやプライベートオフィスのための部屋や会議室などのあるエリアとなっている。そちらのエリアは契約メンバーのカードキーがないと入ることはできない。また、専用デスクやプライベートオフィスの各部屋に入るのにも、またカードキーが必要になる。
専用デスクやプライベートオフィスの部屋には、デスクやキャビネットなど基本的な什器が置かれている。専用デスクは1つの部屋を何人ものメンバーで共有するので、わりと広い作りになっている。一方のプライベートオフィスの規模はさまざまで、小さい部屋だと2名くらいの規模から用意されている。
専用デスクとプライベートオフィスの各部屋や会議室などがあるエリアは、ガラスによって仕切られている。プライベートオフィスはスモークシールドを貼ることはできるが、それ以外は普通のガラスだ。同ビルは外壁の開口部が広い構造なので、通路に居ても各部屋越しに外の風景が見えて、開放感がある構造になっている。
来客の応対もWeWorkが代行してくれる。来客がある場合、メンバーはあらかじめ登録しておくことで来客者にQRコードを発行できる。来客者は39階のWeWork受付に置いてある専用端末にQRコードをかざし、顔写真を撮影することで認証され、メンバーに来客通知が送られる。
こうした受付業務や郵便の受け取り、掃除、飲み物の補充やカップの洗浄といった業務をWeWorkが担当してくれる。普通の賃貸オフィスに比べると、これらの業務を社員が行なったり外注したり人を雇ったりする必要がなく、手間やコストを削減する効果もある。
実際にWeWorkの中に入ってみると、オフィス空間が丁寧にデザインされていると感じた。効率的なだけでなく、過ごしやすくて見た目も良い。全世界で数百のコワーキングスペースを運営するWeWorkが持つ、桁違いのオフィスデザイン経験とノウハウが生かされているのだろう。こうしたプロ中のプロが作ったオフィス空間を利用できること、これもWeWorkの大きな魅力と言えるだろう。