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個人事業主の確定申告もスマホで完結、freeeが「電子申告アプリ」提供開始
マイナンバーカードを読み取って申告書類を送信、PC不要
2021年1月19日 06:15
freee株式会社は、オンラインで確定申告(電子申告)を行うための専用スマートフォンアプリを開発し、1月18日より提供を開始した。スマートフォンのマイナンバーカード読み取り機能を使って、手軽に電子申告できるのが特徴。「会計freee」の個人事業主向け有料プラン契約者は、追加料金なしで同アプリを利用できる。
個人事業主でもついに「スマホだけで確定申告」
クラウド会計ソフトの「freee」は、PCのウェブブラウザーや専用のスマートフォンアプリを使って、仕入れや売上、経費処理などの経理業務をマルチデバイスで行えるのが特徴だ。ただし、個人事業主や中小企業が年に一度の確定申告を電子申告する際には、スマホだけでは作業を完結できず、PCの利用が事実上必須だった。
今回提供を開始した「電子申告アプリ」はiOS/Androidに対応。日常的に使う記帳用アプリとは別に、申告専用のアプリとして各ストアで配信する。freeeによれば、電子申告専用のスマートフォンアプリを国内の民間企業がリリースするのは初めて。
「電子申告アプリ」では、freeeに記帳・蓄積しておいた帳簿データから確定申告用の書類を作成。また、マイナンバーカード読み取りに対応したスマートフォンを利用することで、申告書類の電子送信までを行える。
このほかにも、「ふるさと納税を利用したか」など○×形式の質問に答えていくだけで、行うべき手続きを提示してくれるサポート機能も備えている。
コロナ禍の今年は「おうちでサクッと確定申告」を
freeeが18日にオンラインで開催したサービス発表会には、同社CEOの佐々木大輔氏が出席。間もなく本格化する確定申告シーズンに向けての施策を解説した。
2020年分の所得税の確定申告は、基礎控除が48万円に引き上げ(前年は38万円。給与所得控除や公的年金等控除は10万円引き下げ)される一方、個人事業主などが青色申告をした際の「青色申告特別控除」の扱いが大きく変更。電子申告のほうが紙での申告よりも有利な仕組みとなった。
こうして確定申告の電子化が着々と進んでいるものの、確定申告の時期になると税務署には多くの申告者が相談に殺到する。国税庁によれば2020年(2019年分)は2204万人が確定申告を行ったが、税務署や臨時相談窓口を訪れた人は約500万人に上るという。
「例年ならば、税務署に相談者の大行列ができる。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大が懸念されるこのタイミングでは、限られた空間に多くの人が集まるのはリスク。社会全体として、問題解決に取り組んでいかなければ。」(佐々木氏)
申告者が税務署に相談に行かなければならない理由としては、「申告書類の書き方がそもそも難しい」「誤りがないか確認したい」「e-Taxの操作が不安」などが挙げられる。また、持続化給付金や、Go Toキャンペーン利用時の返金額が50万円を超える場合はそれぞれ課税対象となるなど、2020年分ならではの複雑な事情もある。
「(freeeが実施した調査では)自宅から確定申告をしたいという人は78%に達した。われわれとしても、今年はなんとしても自宅からの確定申告を当たり前にしたい。そこで2021年2月の確定申告のテーマとして『おうちでサクッと確定申告』を掲げ、サポートしていきたい。」(佐々木氏)
freeeが提供を開始した「電子申告アプリ」は、まさにそうしたニーズを受けての製品。PCによる電子申告は別途ICカードリーダーを用意する必要があるなど煩雑だったが、身近なスマートフォンを利用することで手続きの効率化が期待される。
また、窓口へ相談に行く必要を減らす一助として、YouTubeでの動画配信を行う。freeeのYouTubeチャンネルでは、すでに週1本のペースで税理士による解説動画を配信中。さらに3月6日14時からは、ライブ形式でのオンラインセミナーを同じくYouTubeで実施する予定だ。また、freee利用者向けのメール/チャットサポートは、確定申告シーズン中は土日祝日も実施する。
国税庁はチャットボットの運用を開始
発表会後半ではゲストとして、国税庁情報技術室システム研究官の中島文彦氏、個人課税課課長補佐の今井慶一郎氏が登壇した。
国税庁では、国税電子申告・納税システムである「e-Tax」の普及・利用促進に向けてさまざまな活動を行っている。中島氏からは、2020年に運用を開始したチャットボットの概要が説明された。
このチャットボットでは、フリーワードによる質問や、よくある質問をリストから選ぶんでいくと回答を表示してくれる。実際に寄せられた質問を分析し、回答内容をより充実させる仕組みも盛り込んだ。
今井氏は、2020年分の所得税確定申告に関する税制改正のポイントを解説。雇用形態の多様化を反映し、給与所得控除を全般的に引き下げる一方で、より広範な国民に適用される基礎控除を増額している事例などについて説明した。
今回の確定申告では、「ひとり親控除」が新たに創設されるなど、所得の計算方法が大きく変わっているという。計算を間違えないため、また、税務署での人の密集を避けるためにも、freeeをはじめとする電子申告ツールをぜひ活用してほしいと中島氏、今井氏は呼び掛けた。