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2022年に米国でのECは1兆ドルを超える見通し、それを支える「Adobe Experience Cloud」には新機能が追加～ファイザー、GM、FedExなどが採用を表明
「Adobe Summit 2021」基調講演レポート
2021年4月28日 11:10
米Adobeは4月27日～29日の3日間に渡り、同社のデジタルマーケティング向け基盤「Adobe Experience Cloud」に関する年次イベント「Adobe Summit 2021」をフルデジタルで開催している。初日となった27日午前（日本時間28日未明）には、同社CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏や、アニール・チャクラヴァーシー氏（デジタルエクスペリエンス事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー）らが登壇して基調講演が行なわれた。
この中でAdobeは、別記事『Adobe、サードパーティCookieレスでも新しいウェブの顧客体験を実現する「次世代リアルタイムCDP」発表』で紹介したような、サードパーティCookieレスでも顧客に対して優れたユーザー体験をリアルタイムに提供できる仕組みなどを発表したほか、米国そしてグローバルにロジスティックス事業を展開しているFedExのEC（電子商取引）関連子会社との複数年に渡る提携を発表した。
このほか、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のワクチン開発で注目を浴びた製薬会社のPfizer（ファイザー）や、自動車メーカーのGeneral Motors（GM）なども登壇し、デジタルマーケティングの可能性に関して説明した。
デジタルマーケッティングに必要なツールを統合的に提供する「Adobe Experience Cloud」
Adobeがエンタープライズカスタマーなどに提供している「Adobe Experience Cloud」は、クラウドベースのツールで、さまざまなデジタルマーケティングを行なうためのツール群が提供されている。
デジタルマーケティングとは、広義にはデジタルを利用したマーケティング活動ということで、例えば電子メールを利用して新しい顧客を獲得する、あるいはウェブサイトでユーザーにIDを作ってもらい、そのIDを通じてECを促したり、コンテンツの配信を行なうなど、さまざまなサービスの利用を促進するなどの企業側の活動を意味している。
もう少し技術的に言えば、ウェブサイトに来たユーザーに対して、Cookieの履歴やウェブサイトの中でもどこのURLを閲覧したのかなどを参照することにより、例えばよい見込み客であるとAIが判断すれば自動でクーポンを発行するといったサービスをリアルタイムに提供することで、ECの売上やサービスの利用率を上げる――そうした取り組みだと説明すれば理解しやすいだろう。
Adobe Experience Cloudは、AIや分析などの基本的な機能を持つ「Adobe Experience Platform（AEP）」と呼ばれるサービス基盤の上に、ECやコンテンツ配信機能、データ分析機能、顧客に特化したサービスを提供する機能などが提供されており、企業のマーケティング担当者がデータなどを確認しながら新しいマーケティングの施策を打っていく、そうしたことが全てデジタルで可能になるのが特徴となっている。
「Adobe Summit」はそうしたAdobe Experience Cloudに関する年次イベントで、毎年、Adobe Experience Cloudに関する数々の発表が行なわれているイベントとなる。
2022年には米国のECの総額は1兆ドル（108兆円）超えとAdobeが予測
Adobe Summitの基調講演に登壇したAdobe CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏は「昨年はCOVID-19の感染拡大で予想もつかないチャレンジに直面した年となった。しかしワクチンの開発が予想よりも早く進み、少しずつ社会が復活しつつある。そうした中で毎日のビジネスのデジタル化がとても進んだ年になった。ワクチンの開発もそうだし、FedExのようなロジスティックもそうだ。我々の調査では、昨年（2020年3月～2021年2月）のECは8440億ドルに達し、前の年に比べて20％も増えたと推計している。しかし、これで終わりではなく、2022年には1兆ドルを超えると考えている。それに向けてAdobeはさまざまなデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいきたい」と述べ、世界的なパンデミックによりデジタルトランスフォーメーション（DX）などと総称されるビジネスのデジタル化へのシフトが進み、その代表例と言える米国のECに関しては8440億ドル（日本円で約91兆円）、前年比で20％も大きく伸び、2020年には1兆ドル（日本円で約108兆円）を超える見通しだと明らかにした。
なお、Adobeが公開したブログによれば、グローバルのECの売上は2021年の最初の3カ月だけで8760億ドル（日本円で約95兆円）で前年同期比38％増と大幅な伸びを示しているという。さらに2021年通年では4.1兆ドル（日本円で約443兆円）になる見通しだとAdobeでは予測しており、米国では航空券の予約も増えるなど景気が戻り始めている傾向を示しているという。
そうした好景気を支えるデジタルトランスフォーメーションを実現するツールとしてAdobeが提供しているツールは3種類あるとナラヤン氏。1つは「Creative Cloud」で、Photoshop、Lightroom、Premiere ProといったCG、写真、動画などを編集するツール群。2つめが「Document Cloud」で、業界標準の文書フォーマットであるPDFを編集するツールとなるAcrobatなどの文書管理ツール群。そして3つめがSummitのメインテーマである「Experience Cloud」で、デジタルマーケティングやEC、インターネット経由のサービスにおけるユーザー体験を向上させるツール群となる。
ナラヤン氏は「デジタルエコノミーではこれまで以上に顧客との関係が重要になってくる。例えばサービスにおける顧客のパーソナライズ化が重要になるし、ブランド価値の向上がデジタルエコノミーを勝ち抜く条件になる」と述べ、そうした条件を実現するのがAdobe Experience Cloudだと強調した。
「リアルタイムCDP」などの新機能を発表。ファイザー、GM、FedExなどが講演し、採用を明らかに
Adobeのアニール・チャクラヴァーシー氏（デジタルエクスペリエンス事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー）は、「みなニューノーマルの中でビジネスをしており、変革を実現していかなければならない。デジタルエコノミーが全てを変えていくだろう」と述べ、Adobeが提案するAdobe Experience Cloudを利用してデジタルでビジネスを変革していかなければ、ニューノーマルに適応していくことはできないと強調した。
チャクラヴァーシー氏はAdobe Experience Cloudの新機能について説明した。別記事『Adobe、サードパーティCookieレスでも新しいウェブの顧客体験を実現する「次世代リアルタイムCDP」発表』で紹介している「リアルタイムCDP」のほか、New Adobe Journey Optimizer、New Customer Journey Analytics、New Marketing System of Record、新しいAdobe Experience Manager Innovations、Adobe Commerce、新しいAdobe Experience Platform Collection Enterpriseなどがそれで、これらに関しての概要などについて触れた。
そして、Adobe Experience Cloudの強みなどを説明するために、4人のゲストの動画を流した。それが米国の製薬会社PfizerのCEOであるアルバート・ブーラ氏、自動車メーカーGMのグローバルCMOであるデボラ・ウォール氏、そしてプロテニスプレーヤーで起業家のセリーナ・ウイリアムズ氏、最後にFedEx社長兼COOのラジャッシュ・サブラマニウム氏だ。
Pfizerのブーラ氏とは、これだけの短期間の間にどのようにワクチンを開発したのかなど、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みが語られた。ブーラ氏は「重要なことはこうなる前からデジタルへ移行する準備を進めてきたことだ。それによりワクチンの開発もスーパーコンピューターを効率よく活用して5～6カ月かかる研究が数日で終わるなどの成果を出せた」と述べ、こうした危機だからデジタル化に取り組むのではなく、普段からそうしたことを意識して会社を経営していくことが重要だと述べた。
GMのウォール氏は「GMは2040年にゼロエミッションを実現すべく、EVの開発を加速している。2025年までには30の新型EVを投入する計画だ。我々はAdobeのシステムを利用して顧客によりよいユーザー体験を提供することができるようにしていきたい。それが将来、顧客がブランドを選択するときに、あるいはこれから自動車を選ぼうというときに大きな影響を及ぼすと考えている。我々の財産であるディーラー網と、Adobeが提供するAIなどのデジタルの可能性を組み合わせることで、顧客がそのプロセスの途中で脱落することを防げると考えている」と述べ、Adobe Experience Cloudと既存のディーラー網とを上手く組み合わせることで、ディーラー網のデジタル化も実現することが可能だと強調した。
FedExのサブラマニウム氏は、AdobeとのパートナーシップがFedExにとって重要だと説明した。またFedExは、FedExの子会社であるECサイト「ShopRunner」とAdobeが、Adobe Experience Cloudの利用などについて複数年の提携契約を結んだことを明らかにした。両社はShopRunnerが提供するECの機能を拡張したり、顧客のユーザー体験の拡大などについて協力していくと明らかにしている。
