ニュース

Zoomが新潟県妙高市と「DX推進」の協定締結、市町村レベルでは初

「行政のZoom利用が増えている」

妙高市の入村明市長

 米Zoomの日本法人であるZVC Japan株式会社と、妙高市およびINSIGHT LABは、新潟県妙高市における自治体DX推進に向けた連携協定を結んだこと発表。2021年5月31日午前11時から、妙高市役所で調印式を行った。

 ZVC Japanが、市町村のDXにおいて協定を締結するのは、今回が初めて。

 妙高市の入村明市長は、「Zoomで会議を行ったり、ビッグデータを活用して将来を予測することができる時代が訪れており、いまの時代に一番大事な部分を担っている企業と連携協定を結ぶことができる。コロナ禍、コロナ後においても予想できないことが発生するだろう。ここにいるだけでは得られない情報を得て、新たな協業の提案も期待したい。何にでも飛び込んで、結果を出すことに取り組みたい。今回のような事例の成果を、広く還元していきたい」などと述べた。

Zoomを活用した「DX推進」を目指す

(右から)INSIGHT LAB 代表取締役CEOの遠山功氏、妙高市の入村明市長、オンラインで参加したZVC Japan カントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏

 妙高市では、市民の感染防止や市役所業務の維持、継続を図るためにデジタル化を推進しており、今回、協定を結んだINSIGHT LABが、新潟県の2020年度補助事業により、Zoomを活用した感染症対策や、非対面型および非接触型ビジネスモデルへの転換に向けたサービスの実証事業を実施してきた経緯がある。ここでは、教育、子育て、福祉、観光などの分野においてZoomを活用。オンラインでの交流を行っており、Zoomを活用することでDXを推進し、地域課題の解決や世紀活性化を図り、持続可能な行政経営を目指してきたという。

 また、ZVC Japanは、2020年12月に、新潟県と連携協定を締結している。

 今回の協定締結によって、Zoomを活用して、地方創生に関する幅広い分野で課題を解決するとともに、オンライン行政相談など、コロナ禍における新たな行政サービスを提供。ZVC JapanおよびINSIGHT LABの知見を活用して、妙高市の変革につなげるという。

「教育」「防災」「起業」など6分野で取り組み

 具体的には、Zoomの技術やサービスなどを活用して、「学校教育における授業効果や学力の向上」、「多様化する保護者ニーズに対応した学校、保育サービスの充実」、「遠隔による各種相談業務や市民講座などの支援」、「防災、減災」、「起業家支援やビジネスマッチング」、「SDGs、地方創生への取り組み」の6つの分野で取り組みを行う。

 「学校教育における授業効果や学力の向上」では、市内の小中、特別支援学校において遠隔交流学習を実施し、多面的視点を持つ人材を育成するほか、リモート授業の仕組みの構築によって、学習機会の喪失を防止。養護教諭(保険医)と医療機関、保護者との連携を強化することで、速やかな医療機関との接続体制を構築する。「多様化する保護者ニーズに対応した学校、保育サービスの充実」では、各種行事をオンライン配信して、自宅から子どもの様子が見えるようにするほか、オンラインでの保育実習や研修を実施することにより、保育士が専門家から助言を受ける機会を拡大。保育士志望の学生を創出する。

 「遠隔による各種相談業務や市民講座などの支援」では、市民相談をオンライン化し、自宅からも気軽に相談できる環境にするほか、国内外との交流や市民講座をオンライン化することで市民レベルでの交流機会を増加させ、文化交流や親善活動を促進する。

 「防災、減災」では、災害時に設置する避難所状況の見える化によって、運営を最適化。ドローンとZoomを組み合わせて、災害状況を双方向で把握する。避難所においても、Zoomによってコミュニケーションが行える環境を用意していくという。

 「起業家支援やビジネスマッチング」では、オンラインを活用した起業家支援による新たな施策の展開に加えて、都市部の企業などと連携したビジネスマッチングの推進、都市部企業などとの効果的な連携によるワークシェアリングの推進を行う。

 「SDGs、地方創生への取り組み」では、市民目線での悩みを共有し、妙高市の地域課題を解決。誰ひとり取り残さないまちづくりに向けて連携を図るという。また、自治体DXに寄与するサービスや、ソリューションの提供も行う。

 なお、妙高市は、「誰一人取り残さない」というSDGsの考えを取り入れ、人と自然が共生する持続可能なまちづくりを目指し、優れた取り組みを行う自治体として「SDGs未来都市」に選定されており、とくに、先導的な取り組みを行う「自治体モデル事業」にも選定されている。

「行政のZoom利用が増えている」社会課題の解決に

ZVC Japan カントリーゼネラルマネージャーの佐賀文宣氏

 オンラインで参加したZVC Japanの佐賀文宣カントリーゼネラルマネージャーは、「2019年7月に、日本に正式にオフィスを開設したZVC Japanには、現在、100人の社員が在籍している。日本でのZoomの活用は、ウェブ会議での利用に留まらず、教育、医療、福祉などの様々な分野で拡大している。組織のなかだけのコミュニケーションに留まらず、行政が市民に対して、あるいは企業が消費者に対してサービスを提供するためにZoomを利用することが増えている。これまでの知見を活かして、妙高市を支援したい」と述べた。

 また、INSIGHT LAB 代表取締役CEOの遠山功氏は、「2年前から新潟県の社会課題を解決したいと考え、昨年、新潟市に新潟研究開発センターを設置した。コロナ禍でできることを考え、安全な市民サービスを提供するためにZVC Japanと連携を強め、妙高市で実証実験を行ってきた。今回の協定を機に、妙高市の社会課題を解決したい」と述べた。

 INSIGHT LABでは、新潟研究開発センターを通じて、地域社会のDX化を推進するため、新潟大学との地域データプラットフォームに関する共同研究や、データ人材の雇用および育成など、新潟経済の活性化に取り組んでいる。遠山CEOが新潟県村上市の出身だという。