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オンラインでも「没入感」を実現できる「Webex Suite」でハイブリットワークを改善

雑音のある場所でもweb会議が可能に、クラウドPBXサービスのWebex Callingも提供

「Webex Suite」でハイブリットワークを改善

 シスコシステムズは、新たなコラボレーションソリューションとして「Webex Suite」を発表した。

 会議、クラウド電話、ビジネスチャット、投票、イベントなどの複数のオンラインコミュニケーションツールを、ひとつのアプリケーションとして提供。コラボレーションの基盤として、シームレスに活用できるのが特徴だ。

 同社では、2020年9月から2021年5月までの9カ月間で、800以上の新機能の追加と、4社の買収を発表しており、Webex Suiteは、それらの機能を統合した形で提供することになる。また、Webex Suiteの発表にあわせて、Webexのロゴの変更も発表した。

 シスコシステムズの中川いち朗社長は、「ワクチン接種の広がりなどもあり、やがて経済活動が回復すると見込まれるが、コロナ後のニューノーマル時代の働き方は、全員がオフィスに戻るのではなく、バーチャルとリアルが共存するハイブリッドの世界が定着する。Webexはこうした世界を見据えて、バーチャルでも、対面以上の体験できるように進化した」と位置づけた。

シスコシステムズ 代表執行役員社長の中川いち朗氏

会議参加者に迷惑な「雑音」をカットする、ノイズ除去機能とスピーチエンハンスメント機能の強化

 Webexの主要な用途であるオンライン会議においては、BabbleLabsを買収したことにより、AIを活用したノイズ除去機能を搭載するとともに、スピーチエンハンスメント機能を強化。会議中にビニール袋をガサゴソさせても、相手には音が聞こえない環境を実現した。

スピーチエンハンスメント機能

 今後、周囲の声や音などのノイズを除去し、利用者の声だけを拾うMy Voice Only機能を搭載。「同僚の話し声が常に聞こえているオフィスでの利用や、自分だけの静かなスペースが確保しにくい在宅勤務中でも、周囲を気にせずオンライン会議やコミュニケーションに集中することができる」という。

会議室から参加する複数人を1人ずつ表示するなど、画面レイアウトを革新する「People Focus」機能

 オンライン会議などを行っている際には、参加者人数を瞬時に判断して、画面のレイアウトや参加者のカメラ映像を最適化するPeople Focus機能を搭載。会議室から複数人で会議に参加すると、各参加者を認識し て、1人1フレームで映しだす。「オフィス勤務でも、在宅勤務でも、対面と変わらない会議を体験できる」という。

自動判別して1人1窓に分ける機能

 また、Webex Suite では、業界初のオーディエンスエンゲージメントソリューションと位置づけられるSlidoとの連携により、Q&Aやライブ投稿、クイズなどを通じた双方向コミュニケーションを実現。参加者からリアルタイムに意見を収集したり、投票結果から最も多い意見を大きな文字で表示したりといったことが可能になる。

 「対面のようなコミュニケーションが難しく、会議やイベントへの没入感がないという課題があったが、Slidoによって、主催者や参加者にとって、いままでにない双方向なエクスペリエンスを提供することができる」とした。

Slidoで双方向コミュニケーション

 従来は月額3万円で提供されていたSlidoのフル機能は、Webex Suiteでは追加費用なしで利用できる。

説明者と資料を画面上で合成できる「イマーシブシェア」機能、Socioの統合でイベントの管理効率化も

 イマーシブシェア機能では、説明者のビデオと共有資料を合成することができ、説明者は自分の映像を画面の好きな位置に配置し、目の前にいるかのようなプレゼンテーションを実現。参加者はプレゼンテーションに没頭できるという。

 イベントの実施や管理においては、買収したSocio の機能を統合。大規模なエンド・トゥ・エンドのイベント体験を実現するためのあらゆる機能を提供できるという。

 さらに、パーソナルページからアクセスできるPeople Insightsでは、利用者が個人的に設定した目標と、会議、ワークライフインテグレーション、利用時間などを可視化し、オンラインでの作業内容などを管理、把握することができる。個人、チーム、組織の3つの観点から分析できる。これらはすべて、プライバシーとセキュリティが配慮され、この情報を利用できるのは利用者本人のみとなっている。

クラウドPBXサービスのWebex CallingもWebex Suiteで提供開始

 とくに、国内ユーザーから関心が高いクラウドPBXサービスのWebex CallingもWebex Suiteで提供する。

 Webex Callingは、PBXやサーバーなどの設備を、宅内に用意することなく、電話機能を利用できるクラウドサービスであり、スマホやPC、固定電話を、クラウド環境につなぐだけで、固定電話番号(0ABJ番号)を利用できる。代表電話にかかってきた電話も、在宅勤務で受け取ることができる。「1年半前に、KDDIとの協業によりサービスを開始して以降、需要の増加にあわせて日本での体制を強化。増員や製品改良のための投資を続けている」(石黒執行役員)という。

 セキュリティでは、機密情報を自動的に遮断、削除することができるWebex向けデータロス防止機能を、メッセージング機能のなかで提供。リアルタイムのデータロス防止機能により、ユーザーによる機密情報の投稿を未然に防ぐことができる。また、エンド・トゥ・エンドのID確認による暗号化の拡張などの強化オプションも提供するという。

 「Webexでは、クラウド上の管理サイトからリモートですべての管理が可能。外出先や在宅で利用している資産の管理や、会議利用時の品質チェック、ソフトウェアのバージョン管理も可能になる」という。

シスコシステムズ 執行役員 コラボレーション・アーキテクチャ事業担当の石黒圭祐氏

 同社では、ハイブリッドワーク支援特別プランを強化し、これを「Active UserFlex3.0」として提供。1000人や1万人の企業であっても、導入初年度は40人分のライセンスを購入するだけで、全社員が、会議の主催を含む、コラボレーションの全機能を、制限なく利用できる。次年度は、初年度の利用率を見ながら契約数を決めることができる。

 また、今後も、継続的にWebex Suiteの機能強化を図っていく考えを示す一方、「コロナ禍においては、すでに利用しているアプリケーションやデバイスと、Webexを組み合わせて利用したいというニーズが増えており、これにも対応していく。Webexでは、優れたAPIとSDKを用意しており、日本の企業との連携を強化し、カスタマイズにも対応していく」(シスコシステムズ 執行役員 コラボレーション・アーキテクチャ事業担当の石黒圭祐氏)とした。

 「Webexは、ウェブ会議のソリューションとして認知をされているが、日本のなかで、ビジネスアプリケーションへと変化させたい。映像を活用したコミュニケーションが、ビジネスの世界では必須になっている。企業と顧客をつなぐブリッジになりたい」と述べた。

「あらゆるものとつながる環境を提供し、ハイブリッドワークの実現を支援したい」

ハイブリットワーク

 一方、シスコシステムズの中川社長は、「日本においても確実にテレワークが進展し、働き方に対する意識も変化している。シスコシステムズは、テレワークが進んでいた企業ではあったが、シスコジャパンの社員に調査を行ったところ、コロナ前には7割以上の社員が毎日オフィスに通っていた。だが、今後、毎日オフィスで働くことを希望している社員はわずか2%に留まった。約8割が月2、3回程度、必要な範囲で出社したいという意思を示した。かつてのようなオフィス中心の働き方には戻らない。未来の働き方は、ハイブリットワークである」と定義。

 また、シスコシステムズの石黒執行役員は、「コロナ前には、リモートでの参加者がいる会議は8%であったが、コロナ後にはこれが98%になると想定している。リモートでの参加がサブであったものが、リモートが中心に変わってくる。ハイブリッドワークの実現にためには、オフィス勤務、在宅勤務、リモートワークのすべてがイコールの関係で仕事をしたり、議論をしたりといったことが重要になる。その一方で、これまでのオフィスの会議室は、ハイブリッドワーク用に設計されていないため、80%が外部と接続することができないという課題もあり、それを解決する必要がある。シスコでは、Webexを通じて、かんたんに設置、利用、運用ができる利便性と定着化を支援。さらに、安全につながり、見える化ができ、あらゆるものとつながる環境を提供し、ハイブリッドワークの実現を支援したい」と述べた。

 同社では、Webex向けに、コラボレーション専用端末として、Webex Desk CameraやWebex Desk Pro、Webex Desk Hub、Webex Roomなど、個人ユースから数10人規模で利用できる製品をラインアップ。オールインワン卓上型、フリーアドレス型、USB型、オフィス設置型、パーソナル型といった用途別の提案を行い、ハイブリッドワークの実現に向けて、これらの製品の訴求も強化していく。

シスコが目指す未来