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JETRO、「日本の社会課題の解決」をテーマとした海外スタートアップコンテストで入賞15社を発表。国内企業との協業を支援

Japan Challenge for Society5.0-Accelerate Innovation with Japan-

 JETRO(ジェトロ=独立行政法人日本貿易振興機構)は、日本が抱える社会課題の解決策をテーマに募集した海外スタートアップコンテスト「Japan Challenge for Society5.0-Accelerate Innovation with Japan-」のアワードウィナー15社を決定した。選ばれた企業は10カ国に及んでおり、選定企業には、オンラインを活用した日本市場に対するコンサルティングや、日本の企業や自治体との個別マッチングを実施するという。

 同コンテストに参加した45社は、2021年10月に完全オンラインで開催された「CEATEC 2021 ONLINE」に設置された海外スタートアップゾーン「JETRO Global Connection」に出展。今回の選定においては、同ブースにおける商談の成果なども反映している。

 日本企業との商談をコーディネートしたJETROイノベーション・知的財産部イノベーション促進課の森友梨氏は、「15社の選定にあたっては、スタートアップ企業が持つ技術の日本市場への適応性のほか、各社の日本企業との商談結果や継続状況を鑑みて決定した」という。

 CEATEC 2021 ONLINEへの出展などを通じて、2月17日時点で、すでに151件の商談が設定されており、国内電機大手やインフラ大手と、パイロットプロジェクトに向けて協議を開始したスタートアップ企業があるほか、大手エネルギー会社と出資に関する協議を開始した例もあるという。

3つのテーマ「環境」「労働力」「都市と地域」に多様な観点からの解決策

 「Japan Challenge for Society5.0-Accelerate Innovation with Japan-」は日本が抱える社会課題への解決策をテーマに募集を行った初めての海外スタートアップコンテストで、JETROと一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が共催。2021年6月に募集を開始していた。

 募集テーマは、資源不足への対応、環境負荷の低減、脱炭素社会の実現を目指す「環境配慮型社会への転換(Environmental Friendliness)」、製造業や建設現場などの人手不足、省力化や省人化、人材育成のための技術伝承などを行う「労働力減少への対応・生産性向上(Labor Shortage & Improving Productivity)」、都市や地域の強靭化、ラストワンマイル問題、老朽化した公共インフラの保守メンテナンスを行うといった「都市・地域のバランスのとれた成長(Smart & Resilient Japan)」の3点であり、カーボンニュートラル、フードテック、アグリテック、DX、労働力不足、スマートシティ、輸送効率化などの観点から、解決策が提案された。

 2021年7月31日の締め切りまでに、世界53の国と地域から、292件の応募があり、大学教授をはじめとする有識者などが応募内容を審査。3つのテーマごとに15社ずつを採択し、合計で18の国と地域から、45社を決定した。選定された企業は、JETROが紹介する日本の有識者によるメンタリングを受けたほか、CEATEC 2021 ONLINEの「JETRO Global Connection」に出展することができた。

 JETROでは、2019年からCEATECに出展してきた経緯があり、いくつもの協業成果をあげている。2021年10月のCEATEC 2021 ONLINEでは、同コンテストを通じて、日本の社会課題解決に焦点をあてたソリューションを提案するスタートアップ企業が数多く出展したことから、CEATECの開催目的である「Society 5.0の実現に向けた共創の場」により連動した展示内容となっていた。

 CEATEC 2021 ONLINEのJETRO Global Connectionに出展した企業からは、「CEATECへの出展により、自社の認知度向上につながった」という声があがっていたという。だが、その一方で、完全オンライン開催となったため、海外からの出展では、時差があるために開催時間内での対応に苦労したり、日本の企業と気軽なコミュニケーションが取りにくくかったりといった課題も生まれており、今後、日本におけるリアルの展示会への出展を希望している企業もあったという。

 JETROでは、CEATEC 2021 ONLINEのアフターイベントが行われていた2021年11月30日までを商談期間としていたが、その後も、日本企業から希望があれば、個別にスタートアップとの商談アレンジを行う活動を継続していたという。

「アワードウィナー」15社の日本企業との協業連携を支援

 こうした活動の成果をもとに、このほど、日本企業との協業連携が実現する可能性が、とくに高いスタートアップ企業15社を「アワードウィナー」として選定。新たな支援事業を提供することになる。

 現在は、希望する支援の内容について各社からヒアリング中。JETROの森氏によれば「オンラインを通じた日本市場に対するコンサルティングや、日本企業や自治体との個別マッチングに限らず、マーケティングリサーチやPR支援なども、スタートアップ企業からの希望があれば検討していく。また、新型コロナウイルスの情勢を注視しつつ、日本に招聘して、日本の企業や自治体とのマッチングサポートを行うことも検討している」とのことだ。これらの支援の提供時期については、2022年春以降を検討している。

 また、JETROでは、アワードウィナー15社とコンタクトを希望する日本の企業や自治体とのマッチングサポートも継続的に行うという。なお、JETROのイノベーション促進課の連絡先は、プレスリリースを参照のこと。

 今回、アワードウィナーに選定されたスタートアップ企業は以下の通りだ。

テーマ1:環境配慮型社会への転換(7社)

Biolive(トルコ)
オリーブの種や廃棄食材を利用した100%植物由来の環境に配慮したバイオポリマーやヴィーガンレザーを生産、販売している。

Bisly Ltd(エストニア)
省エネを低コストで実現するスマートビルソリューションを提供している。

FLYING WHALES(フランス)
環境への負荷を最小限とし、飛行船で特大の重量貨物の空輸を可能にするソリューションを提供している。

SolarDuck BV.(オランダ)
世界で初めて認証された浮体式洋上太陽光発電設備の提供。2021年4月に本格的な実証機を設置し、送電網にエネルギーの供給開始している。

Solarstone(エストニア)
屋根等建築資材と一体となった太陽電池の設計、開発、製造を行っている。美観に優れ、資源効率が高く、安価であるとともに、導入者向けにエネルギー利用状況の確認や導入計画をサポートするソフトウェアを提供する。

TWAICE Technologies GmbH(ドイツ)
バッテリーの運用効率を大幅に向上させる最先端のバッテリー分析プラットフォームの開発、提供を行っている。

Ynsect(フランス)
自然昆虫タンパク質を栄養価の高い食材への転換する技術や、肥料および飼料を生産する技術の提供を行っている。

テーマ2:労働力減少への対応・生産性向上(4社)

Bioservo Technologies(スウェーデン)
手に特化したパワースーツを開発している。スマートアシスト機能により、特定のユーザーの使用方法を学習し、握力を強化することが可能だ。

BYSTAMP(フランス)
電子フィジカルスタンプを開発している。独自のAI技術を搭載して、電子署名の解析、認証を瞬時に行えるほか、ブロックチェーン技術を駆使して電子署名の偽装や二重利用を直ちに判別し、防止する。

MAGMENT GmbH(ドイツ)
セメントと磁性粒子から作られた磁化可能なコンクリートを使用したワイヤレス誘導式充電インフラを開発している。

Valkyrie Industries Ltd(英国)
EMS(電気的筋肉刺激)とVRを利用して、重さや負荷、疲労などの感覚を仮想体験可能なウェアラブルデバイスを開発している。

テーマ3:都市・地域のバランスのとれた成長(4社)

3D CityScapes(カナダ)
都市・不動産開発業者向けのビジュアルクオリティの高い1/1スケールのデジタルツイン技術を開発している。

Autofleet(イスラエル)
車両・運送事業者向けのフリートマネジメントプラットフォームを提供しており、運用の最適化や、新規サービスのシミュレーションが可能になる。

Ridecell, Inc.(米国)
カーシェアリングやデジタルタッチレスレンタルなど新サービスの立ち上げを可能にするフリートマネジメントプラットフォームを開発している。フリートの監視だけでなく、問題解決等のワークフローの自動化を実現する。

Sharper Shape Inc.(米国)
インフラの検査などに使用が可能なAIを用いた統合インテリジェンスプラットフォームを開発している。インフラの安全性と信頼性の向上を実現することができる。