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「顔出しナシ」のWeb会議では意思決定の質が低化。一般社団法人オンラインコミュニケーション協会が検証結果を発表

 一般社団法人オンラインコミュニケーション協会は、Web会議でビデオONとOFF(参加者の顔が見える場合/見えない場合)における、合意形成にかかる時間や意思決定への影響を検証した結果を発表した。ビデオOFFのWeb会議では、合意形成までに長い時間がかかり、意思決定の質も低下したという。

 この検証は、同協会が武蔵野大学の宍戸拓人准教授(経営学部 経営学科)と共同で実施。ビジネスの現場ではプライバシー保護やセキュリティ、通信負荷軽減の観点からビデオOFFでWeb会議を行うこともあるが、対面であれば無意識的に視覚から得られる表情や仕草といった非言語情報が不足することで、コミュニケーション上に起こる影響を検証・考察した。

 18~22歳の男女14グループ(46人)を対象に、Zoomミーティングにおいて対話によって回答を導くコンセンサスゲーム(「宇宙船が壊れて月面に取り残された際に、どのようなアイテムを選んで生き残るか考える」など)に取り組む実験を実施。ビデオON/OFFの2つのパターンで、意見対立の様子や合意形成にかかる時間、意思決定の質について比較した。

ビデオONの状態(実際の実験ではぼかしは入っていない)
ビデオOFFの状態

 結果、参加者の年齢が多様な場合には、ビデオOFFだと意見対立を回避する程度が高まる傾向にあった。一方、ビデオONの場合には、年齢が多様なほど対立を回避しない傾向が強まった。

 性別の異なる人が参加した場合には、ビデオOFFだと合意形成にかかる時間が長くなる傾向にあった。また、合意形成にかかる時間が長くなるほど、意思決定結果のスコアが悪化する傾向もあった。

 また、ビデオONの場合には、課題の内容について意見をぶつけ合えるほど居心地のよさと信頼を感じる傾向にあり、その結果、意思決定結果のスコアも改善する傾向にあった。

ビデオONでは、異なる意見のやりとりが好ましい経験に

 年齢や性別が多様なグループでは、互いが異なる意見を持ちやすい。そして、意見が衝突した際には、対立から逃げることなく、全員が納得できるアイデアを協力して生み出すことが、最も効果的だという。そのためには繊細なやりとりが必要であり、膨大な非言語情報をヒントにする必要がある。

 ビデオOFFだと年齢や性別が多様なグループで合意形成に時間がかかり、意思決定結果のスコアが低下したことは、非言語情報が不足したことの影響を示す。このことから、同協会では、ビデオをONにすることは、意見の対立を好ましい経験とする可能性を高めるとし、このことが、イノベーションを追求する組織において、プライバシー等の面でコストやリスクがあったとしても、ビデオをONにすることの価値だとしている。

 一方、多様性や意見対立を軽視するような組織であれば、ビデオOFFでも大きな問題は生じないだろうとしつつ、「もしビデオをOFFにしても支障がないならば、全員参加が必須というだけの形骸化した『会議』となっている可能性がある」と指摘している。

 また、今回の検証の結果を踏まえ、ビジネスの現場におけるさまざまなシーンで、ビデオをOFFにしてコミュニケーションをとった際に懸念される影響を考察している。例えば、新入社員の配属直後、および育成期間では「先輩や上司から指導を受けている場面で、疑問や質問があった場合も、新入社員側が聞けない、聞かないことが起こり、成長スピードが鈍化する可能性」が考えられるという。

さまざまなシーンで懸念されるビデオOFFの影響

 同協会代表理事の初谷純氏は、ビデオをOFFにすることで、コミュニケーション上ネガティブな影響が起こる可能性があることを、多くの人が共通認識として持ち、状況にあわせてビデオのON/OFFを使い分けることを期待するとコメントしている。