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「モノづくりのすり合わせ」はやっぱりペンで! ブラザーの作った共有ノートアプリ「BuddyBoard」は何がいいのか?

業務のための共有ノート、「すり合わせ」が多いほど真価を発揮

ブラザー工業の手書きノートアプリ「BuddyBoard」。試用は無料だ。

 「ペンを使うノートアプリ」を使う人も、最近は増えてきた。

 ペンのメリットは、「固まっていないものにひとまずの形をあたえ、ブラッシュアップしていけること」だと個人的に思っており、かなり以前からMicrosoft OneNoteを使っているが、昨今はオンラインで仕事をすることも増え、「Miro」や「Microsoft Whiteboard」、「Zoom Whiteboard」といったオンラインホワイトボードの利用例もよく聞くようになってきた。

 そうした中、「モノづくりの“すり合わせ”をスムーズに行える共有ノートアプリ」という独特のアピールをしているのが、ブラザー工業の「BuddyBoard」だ。

 この「BuddyBoard」は、工事現場や工場など、図面や現場写真が混在し、様々な役割の人が入り乱れ、多数のすり合わせが必要な場面で真価を発揮できるのが特徴という。

 プラットフォームはiPadで、使うペンはApple Pencil。機能としては、複数のiPadでリアルタイムにペンや文字入力をして打ち合わせできることはもちろん、役割に応じて書き込みを分類できるレイヤー機能や、全ての書き込みが記録されるログ機能、PDFやiPadで撮影した写真・動画をすぐに取り込んだりすることができる。また、Webブラウザーからの閲覧や基本的な書き込みも行える。

 ……と、書いては見たが、ノートアプリやホワイトボードアプリは機能を並べてみても、違いは意外と分かりにくい。

 それでは「“すり合わせ”をスムーズに行うこと」を主眼とした共有ノートアプリというのはどういうものなのか、BuddyBoardの開発を担当している、ブラザー工業の新規事業推進部 チームマネージャーの小坂来造氏にお話をおうかがいした。

モノづくりの現場で不可欠な“手書きのすり合わせ”をオンラインで便利に!

新規事業推進部 チームマネージャーの小坂来造氏

――BuddyBoardは「チームで使える手書きノートアプリ」をうたっていますが、どのような特徴があるのでしょうか?

小坂氏:「ノートアプリ」というのは他社さんも含め、いくつかありますが、BuddyBoardは「複数のユーザーが同時に利用することで、“モノづくりのすり合わせ”をスムーズに行うこと」を目的としたものです。iPadを利用することで、写真や図面、資料だけでなく、手書きの文字をリアルタイムで共有することが可能です。

――写真や手書きの文字を共有するとは、具体的にどのようなやり取りになるのでしょうか?

小坂氏:BuddyBoardでは、プロジェクトごとに設定できる「スペース」内に複数の「ページ」からなる「ノート」を作成します。各ページには好きな場所に画像や動画などを貼り付けたり、PDFファイルの内容を1ページずつ取り込むことができるので、そこにスタイラスで指示や意見などを手書き入力する……というのが、主な使い方です。

スペース内に複数ページからなるノートを作成。フォルダを作ってノートを管理することもできる

――BuddyBoardは“iPadでの手書き入力”を主とした設計となっています。そもそも、なぜ手書き入力なのでしょうか?

小坂氏:私は以前にプリンターの設計を担当していたのですが、モノづくりの現場では、コミュニケーションの手段として“手書き”が頻繁に利用されています。例えば、図面の“この部分に”、写真の“この内容”にといった指示は、言葉や文章ではなかなか伝わりません。そのコミュニケーションを確実かつ迅速に行うためにも、“手書き”にフォーカスしたサービスとなっています。

ポイントは「リアルタイム」「Webブラウザ連携」「セキュリティ」

――BuddyBoardの開発にあたって、特に重視している点があれば教えてください。

小坂氏:BuddyBoardが注力している点は大きく3つあります。それは「リアルタイム性」「Webブラウザとの連携」「セキュリティ」です。

このうち、リアルタイム性においては、海外にある工場のように相手が離れた場所にいても、まるで同じ場所にいるかのようにページを共同編集できます。例えば、オンライン会議中であれば、その会話のやり取りとズレることなく、スムーズに操作・表示できます。“リアルタイムで操作を共有”というと、オンラインホワイトボードも利用されていますが、レスポンスの良さではトップクラスだという自信がありますよ。

これについては、弊社で提供している「OmniJoin」というWeb会議システムで培ってきた技術が活かされています。リアルタイムでの共同編集において、操作がバッティングしたり、誰かが遅い回線を使っていても問題にならないのは、BuddyBoardならではの特徴ですね。

――Webブラウザとの連携についてはどうでしょうか?

小坂氏:BuddyBoardは“iPadでの手書き入力”で最大限の力を発揮しますが、現場によってはiPadを社員全員が利用していない環境もあるかと思います。そのような場合でも、Webブラウザ上でデバイスを問わずにページを表示したり、「囲む」「矢印を入れる」「文字を入力する」といった基本的な操作が可能となっています。

Webブラウザからページを開いて、矢印や文字などを追記できる

――iPadを中心に、Webブラウザでも使える設計になっていると。セキュリティについてはどうでしょうか?

小坂氏:ご契約者の会社にいる情報システム部門やIT管理者の方がライセンスを管理できるほか、ノート単位でユーザーごとにアクセス権を管理できます。アクセス権については、各スペースの管理者が設定できるので、“関係会社のアカウントに対して現場の管理者がアクセスを許可する”というような使い方もできます。

スペースやフォルダ、ノート単位でアクセス権を指定できる

――そういえば、BuddyBoardを利用していると、何かの操作をするたびにログが取られている様子がありましたが……。

小坂氏:様々な立場の人が共同編集をすることを想定しているので、“いつ、誰が、何を入力したか?”という情報が重要な場合もあります。そこで、ページに対する書き込み記録はすべて保存しています。共有できるノートアプリやオンラインホワイトボードは他にもあると思いますが、ここまで記録し、データとして見えるアプリはなかなか珍しいかと思います。

「すり合わせ」が多ければ多いほど真価を発揮、ハウスメーカーなら営業・設計・工務など、立場に合わせてレイヤーを利用

――BuddyBoardが活躍するシーンは、モノづくりにおける“意見のすり合わせ”とのことですが、具体的にはどのような利用を想定しているのでしょうか?

小坂氏:特に便利な用途と言えるのが、「電話やオンライン会議など、リアルタイムのコミュニケーションを補助するツール」としての使い方です。例えば、海外の工場と問題点を共有・検討する際は、図面にペン書きしていくだけでなく、その現場の様子を写真や動画として撮影、ページ上に貼り付けて、手書きで注釈を書き加えていけば、言葉で伝えにくい内容もスムーズにやり取りできます。

 また、この時、必ずしも全員がリアルタイムで参加している必要はありません。例えば、設計者が作成した図面をページに貼り付けておいて、後日上長や関係者などが内容を確認し、疑問点などを書き込むことも可能です。複数のユーザーが同時にチェックできるので、設計のリードタイムを短縮できるのも特徴です。

――実際にどのような現場で利用されているのでしょうか?

小坂氏:今、特に使われているのは建設業ですね。建造物はどれも一品物で同じものが存在しないので、案件ごとに“意見のすり合わせ”が起きるんです。さらに、分業制が進んでいて、例えば設計だけでも意匠・構造・設備など、それぞれに担当者が分かれています。ですから、“すり合わせ”の回数がとても増えますし、BuddyBoardはそれを効率よく進められるというわけです。

例えば、設計事務所やゼネコン、ハウスメーカーの方がユーザーとなり、設計図面をページに貼り付けることで

営業がお客様からの要望をそこに書き加える
設計が施工担当者や工務にプランを確認する

など、担当者間での“意見のすり合わせ”に利用されているようです。ハウスメーカーですと、営業、設計、工務と3つの職種があるので、3者間での仕様や間取り、予算の意見出しに利用されていることも多いようです。レイヤーを使うと、意見の整理も簡単です。

図面を背景に配置して、その上に手書きで指示を書き込むことができる

――共同編集というとオンラインホワイトボードも利用されていますが、BuddyBoardはどのような点が異なるのでしょうか?

小坂氏:オンラインホワイトボードは会議の補助に使うことが多いと思いますが、BuddyBoardは先にご説明したように、リアルタイム以外のコミュニケーションにも利用できます。進捗管理や図面チェックなど、日常的に様々なシーンでもご利用いただけるサービスです。

――ページ単位で分かれているというのも、オンラインホワイトボードにはない特徴ですね。

小坂氏:そうですね。設計の現場ですと、図面が1ページで完結していることはまずありません。図面をページごとに配置し、各ページ間を素早く移動しながら指示を書き込んだり、その内容を確認できるのは、ノートアプリの大きなメリットだと思います。

複数ページにわたるPDFファイルを取り込むと、BuddyBoard上にも1枚ずつページが作成される

――他にも、BuddyBoardの利用を想定している現場はありますでしょうか?

小坂氏:“意見のすり合わせ”が必要な業種は、他にもたくさんあると思います。例えば、パンフレットやカタログの制作会社などでも、営業と制作現場の間でのコミュニケーションに活用できるのではないでしょうか。

「ユーザーの声」を積極的に取り入れて進化中

――BuddyBoardは建設業以外にも多彩な現場で利用できそうですが、今後の展開として何か考えていることはありますか?

小坂氏:現状では“手書き入力による共同編集”の価値をユーザーの方に分かっていただくために、サービス開始時にはBuddyBoardの使い方について、お客様に詳しい説明を行っています。このサポート体制を維持するためにも、まずは建設業にフォーカスしてサービスを展開していきたいと考えております。

実はBuddyBoardに実装されている機能には、ユーザーのご要望から生まれたものも多いんです。こうしたご意見については、フリートライアル中も含めて社内で共有し、検討するようにしています。

――どんな機能が、実際に利用者の声から形になったのでしょうか?

小坂氏:例えば、レイヤー機能などは、ユーザーのご要望を元に開発した機能になります。営業職と設計職でそれぞれアイディアがあった場合などは、それをレイヤー別に設計図に書き加えることで、各案を一つのページ上で切り替えながら表示することが可能です。

また、iPadでは表示の倍率を簡単に変えられるので、「今書いているもののサイズ感が分からなくなる」とのお声をいただいたことがありました。なので、現在のバージョンでは1:200など、図面の尺度を指定することで、入力中の線の実際の長さなどがリアルタイムで表示されるようになっています。

他にも、レイヤーごとに画像をインポートしたり、ページをタブで切り替える機能も、この先に実装していく予定です。

レイヤーを作成して、指示などを手書き入力。四角形における各辺の長さなど、図形の作成中には寸法が表示される

――他にも、ユーザーから評価の高かった使い方があれば教えてください。

小坂氏:建築の現場では3Dモデルをよく利用するのですが、その画面をキャプチャしてページに貼り付け。その上に手書きで注釈を書き加えることで、「工務の担当者などに分かりやすく説明できた」とご好評をいただいています。このようにキャプチャした画像を貼り付けることで、PCのソフトに疑似的に手書き機能を追加できるというのは、BuddyBoardの面白い使い方だと思います。

――最後に一言、お願いします

小坂氏:さきほどお話ししたように、BuddyBoardはみなさんのご意見をもとに、使い方や機能を強化してきたサービスです。これからも、みなさんに色々と使っていただき、様々な声をおうかがいして機能を強化して行けたらと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

――ありがとうございました。