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「ChatGPT」後の日本語AI開発、web3産業を支える環境整備など、自民党デジタル社会推進本部が活動を説明

自由民主党デジタル社会推進本部事務局長の小林史明衆議院議員

 自由民主党デジタル社会推進本部は3月22日、各PT(プロジェクトチーム)の議論の進捗状況などについて説明した。

 デジタル社会推進本部は、2010年以来、自民党が提出しているデジタル施策に関する具体的な提言「デジタル ニッポン」の策定に向けて、民間から広く知見を集め、議論する場となっており、初代デジタル大臣である平井卓也衆議院議員が本部長を務めている。

 現在、デジタル分野でも喫緊の課題である「デジタルセキュリティ」、「web3」、「AIの進化と実装」、「デジタル人材育成」、「防災DX」の5つの課題についてPT(プロジェクトチーム)を設置し、政策提言に向けた議論を進めている。2023年5月中には、最新版の「デジタル ニッポン 2023」を取りまとめ、デジタル大臣に提言を行う予定だという。

 デジタル社会推進本部の事務局長を務める小林史明衆議院議員は、冒頭で現在の状況と課題を概観。「2025年に向けて、各テーマでの議論の論点を整理する活動を行っている」としたうえで、ガバメントクラウドおよびデジタルマーケットプレイス(DMP)の構想に言及。「ガバメントクラウドを1700自治体で活用するためにどんなサポートが必要であるのといったことも政策に反映する。DMPからアプリケーションを調達する際に、これまでの調達ルールでは合わない部分もあり、その制度を変えていく必要もある。人材不足の課題や人材スキルの見直しも必要である。こうした点が、新たな『デジタル ニッポン』での重要なポイントになる」と述べた。

小林議員が示したガバメントクラウド・デジタルマーケットプレイス構想

デジタルセキュリティ確保について5項目から政策提言

 「デジタルセキュリティ」については、同PT事務局長の神田潤一衆議院議員が説明。「3月中を目標に、提言の取りまとめを進めているところである。セキュリティクリアランス制度やサイバーセキュリティの確保などについて、デジタル庁が各省庁と連携する際に、検討すべきものをまとめている」とした。

 検討のテーマおよび目的については、「ソフトウェアのセキュリティ、通信インフラや構築するシステムの物理層のセキュリティ、データ管理や人的部分でのセキュリティ、ディスインフォメーションを含むコンテンツのセキュリティ、省庁間連携や民間連携、国際連携などにおけるセキュリティの5つから提言することになっており、サイバーセキュリティやデジタルセキュリティによって、国民生活と経済活動を維持することを目指す」と述べた。

web3は「暗号資産を一般市民が持つ時代」を見据えてルールを明確に

 「web3」に関しては、同PT事務局長の塩崎彰久衆議院議員が説明した。web3 PTは、NFT PTの後継として2022年10月からスタート。提言に向けて30項目を検討しているという。

 「暗号資産の世界は、冬の時代に入っていると言われている。だが、世界が立ちすくんでいるいまこそ、日本のweb3産業にとっては大きなチャンスだといえる」とした同議員は、「これからは、暗号資産を一般市民が持つことが当たり前になるマスアダプション(大衆需要)の時代がやってくる。そこに向けて制度を作っていくことになる」と、方向性を示した。

 税制改正では「第三者が保有する短期売買目的でないトークンを期末時価評価の対象外にする措置」を提言するほか、「日本暗号資産取引業協会(JVCEA)や金融庁による審査項目の具体化や可視化によるトークン審査の効率化」「LLC型DAOに関する特別法の制定」「スポーツ、エンターテイメント、ゲームにおけるNFTの活用に向けたルールの明確化」「セキュリティトークンのセカンダリーマーケットの整備」「web3サービスの多様化に即した暗号資産の取り扱いに関する新たな業種創設の必要性の検討」などを提言に盛り込み、来週中には取りまとめる予定だという。

web3 PTの論点整理資料(1)
web3 PTの論点整理資料(2、3)

新たなAI基盤を活用できる国家戦略を再考

 「AIの進化と実装」についても、同PTの事務局長を兼務で務める塩崎彰久衆議院議員が説明。冒頭で「ChatGPTをはじめとする対話型AIが登場したことで、AIを巡る社会状況は一変した」と述べた。

 政府のなかでは、これまでにもAI戦略を策定してきたが、ここにきて新たな国家戦略を作る必要が出てきた、との認識を示し、「国内におけるAI開発基盤の育成、強化」「行政における徹底したAI利活用の推進」「民間におけるAI利活用の奨励」「AIを巡る新たなガバナンスのあり方」といった観点から、提言の取りまとめを行うという。

 さらに、日本語のAIモデル開発と、AI利活用推進について前向きな姿勢を示した。AIモデル開発に関しては「英国では自前のBritGPTを開発するといった動きもある。日本でも、膨大な計算資源や人材に投資して自前で作ることの可能性や、海外のAIモデルを活用する選択肢の検討などを、中長期の観点から行っている。また、AIモデルの開発において、日本語のデータが足りないという状況は、日本の経済競争力に影響を与える可能性があることや、そのための対策はどうするのか、公共データの取り扱いはどうするのかといったことも検討していく」とコメント。

 AI活用推進に関しては、 「行政サービスの効率化と質的向上に向けた新たなAI基盤の活用、法規制を含めたAI活用におけるガバナンスのあり方についても提言したい。また、民間では、AIの活用によって新たなビジネスが創出できる、いわばカンブリア紀を迎えている。これに関する政府の支援施策についても盛り込みたい」とした。

AI PTの提言取りまとめ資料

「デジタル田園都市国家構想」実現には司令塔組織と意識改革が必要

 「デジタル人材育成」に関しては、同PT事務局長の川崎ひでと衆議院議員が説明した。デジタル田園都市国家構想においては、2024年までに約230万人のデジタル人材を育成することが目標に掲げられているが、これを実現するための具体策検討に取り組んでいるという。

 「有識者や事業者などを対象に、これまでに6回のヒアリングを行った結果、各省が打ち出したデジタル人材育成に関する施策は点となっており、全体を俯瞰し、司令塔となる組織を設置する必要があることが指摘されたほか、DXに対する経営者の意識改革に向けた仕組みづくりの必要性などについても意見が出ている。また、学校や公民館、保育所、放課後クラブなどでもデジタルを学べる環境整備も必要である。デジタルを親子で楽しく学べるようにゲーム要素を入れた教材も必要だ」などとした。4月中旬を目標に提言をまとめる予定だという。

デジタル人材育成PTの活動実績