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“ファスト映画”訴訟で、所在不明になっていた1人に5億円の損害賠償命令

 東京地方裁判所は8月24日、「ファスト映画」に関する訴訟で所在不明となっていた1人に対し、損害賠償金5億円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 本件は、映画54作品(権利社13社)を10分程度に編集し、ナレーションをつけるなどした、いわゆる「ファスト映画」をYouTubeにアップロードし不当な広告収入を得ていたとして、2021年6月23日に3人が宮城県警本部と塩釜警察署に逮捕されたもの。3人はYouTubeチャンネルの運営を認めており、ファスト映画の再生数は合計1000万回に上っていたという。

 2022年5月19日に、CODAおよび一般社団法人日本映像ソフト協会(JVA)の会員企業13社からなる原告が、3人を被告として損害賠償請求訴訟を提起。同年11月17日には、そのうち2人に対し、著作権侵害による損害賠償金5億円の支払いを命じる判決が言い渡されていた。残る1人は当時海外にいるとみられており、所在を特定でき次第、海外送達を行う予定としていた。

 CODAら原告は、この1人に対し必要な調査などを実施した上で、2023年5月、東京地方裁判所に公示送達申立書を提出していた。その後、7月に裁判期日が指定され、本判決に至った。

 一連の裁判で原告は、損害賠償請求額の根拠として、視聴者がYouTube上で映画を一時ストリーミング視聴(レンタル)する場合、その価格が400円を下らないこと、またプラットフォーム手数料を差し引き、さらにファスト映画が動画の全部を使っていないことを考慮しても、その金額は1再生あたり200円を下らないこととした。そして、不正にアップロードされていた13社の54作品(64URL)の視聴回数は約1千万回に上っていたことから、1再生200円に同再生回数を乗じた損害額(約20億円)を算定し、最低限の損害回復を求める一部請求として5億円の支払いを求めていた。

 CODAでは、今回の判決が、海外に滞在していると思われる所在不明者であっても、逃げ得は許さないという機運の醸成の一助となるものと期待するとし、一連の判決は、ファスト映画による権利者への損害額を明確に認定することで著作権侵害への大きな抑止力となる、大変画期的な判決だとコメントした。また、広告収入によって著作権侵害行為が助長されることがないよう、社会全体で「ファスト映画は見ない」という意識を広げていくことが重要だとの見解も示した。