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日本HP、auと実現した5年間通信し放題の「HP eSIM Connect」など、ハイブリッドワークに最適化した法人向けPCソリューションを発表

会見で握手する日本HPの岡戸伸樹社長(左)と、KDDIの那谷雅敏執行役員常務(右)

 株式会社日本HPは11月16日、ハイブリッドワークに最適化した法人向けPCソリューションを発表した。

 au回線を使用したモバイルPCによる常時接続を実現するとともに、5年間の無制限データ通信が可能な「HP eSIM Connect」、電源オフやオフラインの状態でもPCの位置を検出し、ロックやデータ消去が可能なMDM(モバイルデバイス管理)ソリューション「HP Protect and Trace with Wolf Connect」のほか、2022年9月に買収したPolyの周辺機器を活用したハイブリッドワークでの利用提案、AIや機械学習などに対応したAMDプロセッサー搭載の新たなデスクトップワークステーション「HP Z6 G5A」の投入も発表した。

今回の会見で発表された製品やソリューション
日本HP 岡戸伸樹氏(代表取締役社長執行役員)

日本HPがauのMVNOになり、5年間の利用権付きPCを提供

 HP eSIM Connectでは、日本HPがKDDIのMVNOとして、au回線を利用した法人向け通信サービスを提供。5年間のデータ通信無制限の利用権付きeSIM対応ノートPCとして販売する。ノートPCの購入だけで、追加費用なし、速度制限なしで、4G LTE/5G対応の通信サービスを常時接続で利用できる。

 HP eSIM Connect対応ノートPCとして、13.5型ハイエンドモバイル「HP Dragonfly G4」と、14.0型スタンダードノート「HP ProBook 445 G10」の2機種を用意。希望小売価格は、それぞれ39万8200円から、25万4980円からとなっている。いずれも税込。

 日本HP 岡宣明氏(パーソナルシステムズ事業本部CMIT製品部部長)は、「可搬性に優れた高機能フラッグシップモデルのDragonflyと、人気の14型ディスプレイを搭載し、手ごろに購入できるミッドレンジモデルのProBookを用意した。Dragonflyは実勢価格で約26万円から、ProBookは約14万円からとなる。また、データ使用量20GBの場合、月2000円程度であり、これが60カ月間、追加費用なしで使える」と、コストメリットを強調した。

日本HP 岡宣明氏(パーソナルシステムズ事業本部CMIT製品部部長)

 日本HPの調査によると、リモートワーク中のWeb会議で、通信が切断したり、遅延したりといったトラブルを経験したことがある人は76%に達し、エンタープライズ企業のIT部門の69%が、通信環境が、クラウド利用やPC管理のボトルネックになっていると回答。さらに、66%が4G LTEや5Gの導入を妨げる理由として通信コストをあげている。

 日本HPの岡氏は、「ハイブリッドワークを行う際に、通信に対するさまざまな不満が発生している。HP eSIM Connectは、これらの課題を解決できる。ユーザーにとっては、ネットワークに接続するために、Wi-Fiルーターを持ち歩いたり、テザリングを行ったりといった手間がなくなり、スマホのように立ち上げたらネットワークにつながる環境を実現。簡単、安定、安心なインターネット接続が可能になる。外出先でWindows Updateが始まっても容量制限を気にすることなく、常に最新の状態にできる。また、管理者にとっても、常時接続であるため管理工数を削減できる。また、安全性が低いWi-Fiにつなぐといったリスクもなくなる。通信コストの大幅な削減にもつながる」と語った。

 HP eSIM Connectにおいて協業パートナーとなるKDDIの那谷雅敏氏(執行役員常務 ソリューション事業本部ビジネスデザイン本部長)は、「5年間にわたり、データ量無制限で利用できる素晴らしいサービスである。これまでは、ツール(PC)と通信を分けて契約していたものが、ワンストップで提供され、機器を買えば、通信が使い放題になる。通信キャリアの立場から見ても価値があるものだと考えている。この日を楽しみにしていた。多くの人に使ってもらえるように応援したい」とコメントした。

KDDI 那谷雅敏氏(執行役員常務 ソリューション事業本部ビジネスデザイン本部長)
HP eSIM Connectに対応した13.5型ハイエンドモバイル「HP Dragonfly G4」(左)と、14.0型スタンダードノート「HP ProBook 445 G10」(右)

グローバルなレベルでノートPCの紛失や盗難に対処可能

日本HP 中宏樹氏(ワークフォースソリューション事業本部サービスビジネス部担当マネージャー)

 HP Protect and Trace with Wolf Connectは、紛失したノートPCや、盗難されたノートPCが、電源オフの状態やオフラインの状態でも、グローバルレベルで、データを保護することができるMDMソリューションだ。Wolf Connectに対応したHPのノートPCで利用でき、LTE Cat-Mにより、LTEよりも低コスト、低消費電力、広いカバレッジを実現する。NIST(米国立標準技術研究所)が定めるパージレベルをクリアするデータ消去を、遠隔地から対応できるほか、強力な操作ロックを行うことや、ノートPCの場所を検索することもできる。

 たとえば、日本で購入したノートPCを、米国出張中に紛失した場合でも、管理者に連絡すれば、日本から、米国にあるノートPCをロックできるほか、ノートPCの位置をユーザーに通知できる。ノートPCを回収できた場合には、管理者がロック解除用コードを提供し、再度利用できる環境に戻すことも可能だ。また、ノートPCが回収できなかった場合には、管理者が遠隔から、パージレベルでデータを消去する。

 日本HPの中宏樹氏(ワークフォースソリューション事業本部サービスビジネス部担当マネージャー)は、「一般的なMDMソリューションは、PCを管理するために、PCの電源が入っているか、ネットワークに接続されている必要があった。ハイブリッドワークが浸透するなかで、PCがどんな状態であっても、信頼性の高い方法で管理できる環境が求められている。HP Protect and Trace with Wolf Connectにより、PCの管理方法の変革につながる」と自信をみせた。

 この機能を利用して、データセキュリティを強化できるほか、資産管理や監査、コンプライアンスリスクへの対応、PCの設置から廃棄、リサイクルまでのライフサイクル全体の管理も行いやすくなるとしている。

 HP Protect and Trace with Wolf Connect は、2024年2月に販売を開始する予定だ。

管理者は遠隔から紛失したノートPCの電源が入っていなくてもロックできる
管理者画面では紛失したノートPCの位置が地図上に表示される
紛失したノートPC側がロックされた状態の画面

3D処理やAI、機械学習にも対応できるワークステーション「HP Z6 G5A」

 新たなデスクトップワークステーションである「HP Z6 G5A」は、CPUにAMD Ryzen Threadrippe Pro 7000 WXシリーズを搭載。同社のワークステーションとしては、最多となる96コアを備え、最大3枚のハイエンドグラフィックスカードを搭載することが可能だ。

 メモリは最大1TBを搭載でき、最大6基のPCIeスロットと、12基のNVMeTM SSD搭載スロットを持ち、高い拡張性を実現している。

 日本HPの岡氏は、「バーチャルプロダクションや3Dレンダリング、AI、機械学習などの用途に対応した設計としており、消費電力あたりのパフォーマンスも効率化している。さらに、リモートデスクトップソリューションであるHP Anywareを利用することで、自宅や外出先のPCから、オフィスやデータセンターにあるワークステーションのパワーを利用できる。HP Anyware のPCoIPライセンスサーバーでは、Linuxだけでなく、新たにWindowsも利用できるようになっており、HP eSIM Connectとの組み合わせで、より効率的な利用が可能になる」と述べた。

 HP Z6 G5Aの希望小売価格は49万5000円からで、2023年12月中旬に販売開始する予定だ。

デスクトップワークステーション「HP Z6 G5A」

音声技術を強化したPoly製品により会議の質を向上

日本HP 是枝日登志氏(ハイブリッドワークソリューションペリフェラルプロダクトマネージャー)

 一方、2022年9月に買収したPolyの周辺機器を活用し、ハイブリッドワークにおける課題を解決するソリューションも提案した。今回の説明会では、新たに発表した製品はないが、コミュニケーションにおける懸念を取り除くことができる製品として紹介した。

 ひとつめは、Poly製品の映像および音声技術の強化により、ハイブリッドワークに適した環境を実現していることを紹介。音が反響しやすい会議室では音声品質を補正。会議室のガラスや硬い表面によって生じる残響やエコーを最小限に抑え、会議室環境に影響されることなく、快適なコミュニケーションを実現するという。また、ガラス張りの部屋やオープンスペースでは、外を通った人をカメラが誤って認識してしまうといった課題を解決することかできるという。IT管理者が部屋のサイズを入力しておくことで、AIがパラメータを正確に定義し、ガラスや窓越しの顔を映しだすのを防ぐという。

 日本HP 是枝日登志氏(ハイブリッドワークソリューションペリフェラルプロダクトマネージャー)は、「最新のファームウェアに更新することで、常に最新機能を利用できるようにしており、これらの機能も更新するだけで利用できるようになる」と述べた。

 もうひとつは、最新のワイヤレスヘッドセットであるPoly Voyager Surround 80 UCである。集中力や没入感を高めることにこだわって設計されたオーバーイヤー式ヘッドセットであり、臨場感ある音質と適応型アクティブノイズキャンセリング(Adaptive ANC)により、オープンスペースでも、周囲の雑音を遮断し、集中力を維持できる。また、自動通話応答のためのスマートセンサーを使用し、通話時間は最大21時間の利用が可能だ。Microsoft Teams Open Office認定を取得した初のブームレスヘッドセットだという。

ワイヤレスヘッドセット「Poly Voyager Surround 80 UC」
Polyの製品群

ハイブリッドワークは「定着期」に、変化する課題への対応に意欲

 日本HPの岡戸伸樹社長は、「この2~3年で、ハイブリッドワークの導入が進み、内閣府の最新の調査では全国で約3割、東京で約5割の導入率になっている。導入期から定着期に移行してきたと判断しており、定着期にあわせた製品が求められている」と語る。

 同社が、2023年6月~7月に、世界12カ国、1万5000人を対象に行ったHPワークリレーションシップ・インデックス調査では、従業員との良好な関係につながる6つのドライバーとして、「充実感」「リーダーシップ」「人中心主義」「スキル」「ツール」「ワークプレイス」をあげる一方、仕事との関係性向上に対する期待が高まったとの回答が58%、現在、仕事との良好な関係を築けているとの回答が27%に留まり、仕事の満足度が高まるのであれば収入を減らしても構わないの回答が83%にも達しているという。

 岡戸社長は、「ナレッジワーカーが仕事に期待することが劇的に変化している」と指摘。さらに、仕事で成功するためにはツールが重要であるとの回答が76%に達しているにも関わらず、必要なツールを提供しているとの回答は27%と低いこと、簡単にシームレスに在宅勤務ができるワークプレイス環境が重要だとの回答は67%であるのに対して、現在のワークプレイスに満足しているとの回答は26%と低いことに触れ、「このギャップの解消が求められている」とした。

 その上で、働く場所を選ばず安定して常につながる「通信」、外で仕事をする際に安心安全に利用できる「セキュリティ」、人とつながるための最適な環境を実現する「コミュニケーション」の3つがハイブリッドワーク環境の向上には重要であるとし、「今回発表した製品やソリューションは、ハイブリッドワークの課題を解決し、働き方を支援するものになる」と位置づけた。