ニュース

フリーランスの34.9%、インボイス制度の開始後も免税事業者を継続~フリーランス協会が実態調査

インボイス制度によるフリーランスへの影響に関する実態調査

 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(フリーランス協会)は12月13日、「インボイス制度によるフリーランスへの影響に関する実態調査」の結果を発表した。同調査は「フリーランス白書2024」の作成のために行ったが、「インボイスの影響を皆さまに早くお伝えしたかった」として、それに先だって集計速報として公表された。

 同協会は、「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」として、政府や自治体へ政策を実現させるための提言のほか、社会の認識や世論を変えること、企業とマーケットを作ることを掲げて活動している。このうち、政府への提言が実現した事例として、2017年から働き掛けていた「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)」の成立を挙げている。

 なお、今年11月には、有料会員・無料会員・SNSフォロワーの合計が10万人を突破したという。

フリーランス協会のビジョンとミッション

インボイス制度に登録済みのフリーランスは41.5%

 調査は、フリーランス協会が発行しているメールマガジンと公式SNSで告知。10月20日~11月20日に実施され、総回答数は1296人。調査結果について12月13日にオンライン記者会見が開催された。

フリーランス協会代表理事の平田麻莉氏(右)、白書・調査TM 渉外TMの後藤潤子氏(左)

 フリーランス協会代表理事の平田麻莉氏は今回のアンケートの結果について解説した。

 フリーランスは複数の職種を掛け持つことがあるが、「主な収入源となっている職種」(n=1242)は、「クリエイティブ・Web・フォト系」が25.1%、「エンジニア・技術開発系」が18.0%、「出版・メディア系」が8.9%、「コンサルティング系」が7.4%、「通訳翻訳系」が5.9%――と続いている。この5つの職種で65.3%を占めている。

「主な収入源となっている職種」

 2021年5月の調査(n=590)にて、「消費税のインボイス制度についてはどの程度知っていますか。一番あてはまるものを選択してください」と質問したところ、「おおまかに内容を理解して、どのように対応しようかを検討している」が25.9%、「内容について聞いたこと・調べたことがあり、少しは内容を知っている」が21.4%、「名称について見聞きしたことがある」が14.2%、「あまりよく知らないので、今後情報収集を行っていく予定」が38.5%だった。

 このうち「おおまかに内容を理解して、どのように対応しようかを検討している」「内容について聞いたこと・調べたことがあり、少しは内容を知っている」「名称について見聞きしたことがある」を合わせた「インボイス制度の認知者」は61.5%だった。

 2023年10月に実施した今回の調査(n=1242)では、「おおまかに内容を理解して、どのように対応しようかを検討している」が64.5%、「内容について聞いたこと・調べたことがあり、少しは内容を知っている」が24.9%、「名称について見聞きしたことがある」が5.0%、「あまりよく知らないので、今後情報収集を行っていく予定」が5.6%だ。「インボイス制度の認知者」は94.4%に上った。

「消費税のインボイス制度についてはどの程度知っていますか。一番あてはまるものを選択してください」

 インボイス制度の登録状況について「あなたの現在の状況に当てはまるものをお答えください」との質問では、2021年11月の調査(フリーランス白書2022、n=1236)では、「インボイス登録申請した」が7.0%、「インボイス登録申請する方向で検討している」が29.7%、「業種は該当している(B to B取引)が、登録するつもりはない(免税事業者を継続する)」が11.8%、「業種が該当していない(B to C取引のみ)」が8.3%、「わからない/答えたくない」が43.2%だった。

 2023年10月の今回の調査(n=1242)では、「インボイス登録申請した」が41.5%、「インボイス登録申請する方向で検討している」が6.9%、「業種は該当している(B to B取引)が、登録するつもりはない(免税事業者を継続する)」が34.9%、「業種が該当していない(B to C取引のみ)」が7.4%、「わからない/答えたくない」が9.3%だった。

「あなたの現在の状況に当てはまるものをお答えください」

インボイス制度登録による税負担増、報酬を値上げして価格転嫁できたのは17.2%

 「インボイス登録により新たに発生する納税負担分(年間売上1000万未満の小規模事業者の場合は約2%)について発注事業者に価格転嫁できましたか」(n=565)との質問では、「自ら値上げ交渉を行い、価格転嫁できた(見込み含む)」が11.9%、「先方から申し出があり、価格転嫁できた(見込み含む)」が5.3%、「値上げ交渉を行ったが、価格転嫁できなかった(見込み含む)」が7.4%、「特に値上げ交渉はしていない」が69.4%、「その他」が6.0%となった。価格転嫁できたのは、計17.2%に過ぎなかった。

「インボイス登録により新たに発生する納税負担分(年間売上1000万未満の小規模事業者の場合は約2%)について発注事業者に価格転嫁できましたか」

 「免税事業者であることを理由として、取引の打ち切りや報酬値下げを提示されたことはありますか」(n=433)と問うと、「インボイス施行前と同じ報酬で取引を継続している」が55.9%、「免税事業者との契約解除を一方的に通知された」が1.8%、「免税事業者に対する報酬値下げを一方的に通知された」が15.5%、「相談の場はあったが、結果的に契約を解除された」が1.8%、「相談の場はあったが、結果的に報酬を値下げされた」が9.7%、「その他」が15.2%だった。計17.3%が「交渉の場の設定は無く一方的な通知での契約解除や値下げ」になったことになる。

「免税事業者であることを理由として、取引の打ち切りや報酬値下げを提示されたことはありますか」

 「免税事業者であることを理由に報酬を値下げされた場合、その取引をこれからも継続していきますか」と問うと、「これからも免税事業者として取引継続していく」が38.1%、「免税事業者として、とりあえず現在は継続しているが他の取引先を探す」が38.3%、「自らの判断で取引を終了する」が12.9%、「インボイス登録申請をして取引継続していく」が10.6%だ。

 「免税事業者として、とりあえず現在は継続しているが他の取引先を探す」と「自らの判断で取引を終了する」を合わせると51.3%だ。これらのフリーランスは、報酬が値下げされた場合、取引の継続を見直す意向だ。

 この調査結果について平田氏は、「一方的な報酬の値下げをしているような企業は、今後、選ばれなくなり、必要な人材が確保できなくなる可能性もある」としている。

「免税事業者であることを理由に報酬を値下げされた場合、その取引をこれからも継続していきますか」

 2021年5月の調査で「これまで、売上先の事業者からインボイス登録状況を確認されたことがありますか」(n=496)と質問したところ、「ある」が2.4%、「ない」が93.8%、「わからない/答えたくない」が3.8%だった。

 2023年10月に同じ質問(n=1242)をすると、「ある」が71.3%、「ない」が26.9%、「わからない/答えたくない」が1.9%だった。

 2021年5月の調査では「ある」が2.4%だったため、「会話のテーブルに上っていなかったことが伺えた」という状態だった。それが2023年10月の調査では71.3%に上昇しているが、「3割弱の方はまだインボイス対応の協議をしていない可能性もある」と指摘している。

「これまで、売上先の事業者からインボイス登録状況を確認されたことがありますか」

 これまで、発注先からフリーランスに支払われていた報酬には、消費税分が含まれていた。しかし、課税売上高が1000万円以下の免税事業者の場合、消費税の納税義務が免除されていた。

 一方、免税事業者がインボイス発行事業者(課税事業者)に転換した場合、売上の約2%を消費税として納めることになる(インボイス制度開始に伴う負担を軽減するための経過措置である「2割特例」を適用した場合)。この2%は「発注者が価格転換することが大事」としている。その理由として、フリーランスは「消費税を納めなくていい前提で値付けをしている」からだという。

 報酬は、フリーランスと発注側の合意で決まる。しかし、この合意がなされた時点では、免税事業者のフリーランスは、課税事業者になることは想定していなかった可能性がある。そのため、「(フリーランスが)課税事業者になって納税負担が発生すると、利益がその分、減ってしまう。今後も利益を得るためには、その分値上げをしなければならない」としている。

 「簡易課税制度について、あなたの現在の状況に当てはまるものをお答えください」(n=1242)と聞いたところ、「おおまかに内容を理解していて、既に申請している」が22.7%、「おおまかに内容を理解しているが、申請していない」が42.1%、「見聞きしたことがあるが、あまりよく知らず申請していない」が22.1%「見聞きしたことはない」が13.1%となった。そのため、簡易課税制度を理解しているフリーランスの割合は64.8%だとしている。

 簡易課税は一般課税と比較して、事務作業が削減できる。さらに、一般課税よりも税負担が少なくなる場合もある。「今はまだ売上高が多くないフリーランスの方にとっては助かる制度だが、認知度は低い」という状態だ。

「簡易課税制度について、あなたの現在の状況に当てはまるものをお答えください」

4割弱が「現時点でトラブルは特にないが、不安や心配がある」

 後藤潤子氏(白書・調査TM 渉外TM)が調査結果の自由欄に書かれた意見を紹介した。

 「あなたの現在の状況に当てはまるものをお答えください」との質問にて「インボイス登録申請した」と回答し、その登録理由を自由回答に記載された402人分の意見を5類型に分類している。これによると、「外部からの要請」が20.6%、「取引への影響への不安」が43.0%、「インボイス登録を武器にする」が13.2%、「売上高での判断」が13.7%、「その他」が9.5%だった。

 この中で「インボイス登録を武器にする」という回答があるが、「課税事業者、インボイス登録をすることで信用が得られる」(後藤氏)というのが理由だ。

「あなたの現在の状況に当てはまるものをお答えください」

 また、「インボイス制度の施行に伴い、価格交渉や取引継続に関するトラブルや困っていることがあればご回答ください(自由回答)」との質問の回答477件を5類型に分類している。「実際に取引解除・値下げ・消費税転嫁拒否等のトラブルがあった」が15.3%、「経理・事務手続きの負担増で困っている」が5.7%、「現時点でトラブルは特にないが、不安や心配がある」が36.7%、「現時点で特にトラブルはない」が37.3%、「その他(インボイス制度の廃止を求める、など)」が5.0%だった。

「インボイス制度の施行に伴い、価格交渉や取引継続に関するトラブルや困っていることがあればご回答ください(自由回答)」