「LINE」がPCとタブレットで利用可能に、「仕事でも使えるサービスに」


 NHN Japan株式会社は6日、ユーザー同士が無料で音声通話・チャットできるアプリ「LINE」のPC版とタブレット端末向けブラウザー版の提供を開始した。どちらも無料。利用するにはスマートフォン向けアプリをインストールする必要がある。

左からタブレット向けブラウザー版、PC版、スマートフォン向けアプリ

 これにより、スマートフォンやフィーチャーフォン(携帯電話)での利用に限られていたLINEを、PCやタブレットからも利用できるようなる。ただし、PC版およびタブレット向けブラウザー版はチャット機能のみ利用可能で、通話機能はサポートしていない。

 なお、現時点でPC版およびタブレット向けブラウザー版を利用できるのはAndroidアプリのユーザーのみ。iPhoneアプリについては近日中にアップデートすることで、利用可能となる。

 PC版を利用するには、NHN Japanのサイトから無料の専用クライアントソフトをインストールする必要がある。対応OSはWindows 7/Vista/XPおよびMac OS X 10.6以上。言語はインストール時に日本語、英語、韓国語のいずれかを選べる。

PC向け専用クライアント。スマホアプリと同じような感覚で操作できるスタンプや絵文字も使用可能

 タブレット向けブラウザー版はiPadとAndroidタブレットでの利用に最適化したもの。対応OSはiOS 4.3以上、Android 3.0以上。対応ブラウザーはiPadがSafari、Androidが標準ブラウザー。対応言語は日本語、英語、韓国語、中国語(繁体字・簡体字)。

タブレット向けブラウザー版

機種変更でも過去の利用情報が引き継ぎ可能に

 新機能提供にあたってAndroidアプリを刷新し、マルチデバイス対応を行った。アプリの利用開始時に登録する電話番号とは別に、メールアドレスとパスワードを追加登録すれば、PC版およびタブレット向けブラウザー版のログイン時に利用できるほか、電話番号や機種変更時に過去の利用情報を引き継げるようになった。従来は、電話番号や機種変更時に友達/グループ情報やプロフィール情報などの過去の利用情報が初期化されていた。

 マルチデバイス対応によるログイン方法としてはさらに、PC版およびタブレット向けブラウザー版で表示されるQRコードをスマートフォンアプリのQRコードリーダーやフィーチャーフォンのカメラで読み込むことでもログインできる。マルチデバイス対応は近日中にiPhoneアプリおよびフィーチャーフォン版でもサポートする。

メールアドレスとパスワードを登録すれば、PC版およびタブレット向けブラウザー版のログイン時に利用できるほか、電話番号や機種変更時に過去の利用情報を引き継げる

 さらに、アドレス帳情報の利用許諾に関するステップを明確化。ユーザーがLINEを利用登録する際、スマートフォンのアドレス帳情報をLINEのサーバーに送ることで、LINEを使っているユーザーを自動的に「友だち」に追加するかどうかを、これまで以上にわかりやすく明確に選択できるようインターフェイスを改善した。

 このほか、プロフィール欄で設定する「ステータスメッセージ」を拡充して「ひとこと」機能を追加。従来は最新のステータスしか表示できなかったが、ひとこと機能ではステータスの履歴を残すことが可能。また、ひとことをクリックするとトークルーム(チャット画面)に移動し、即座にコミュニケーションを行えるようになった。

ステータスメッセージを拡充した「ひとこと」機能。ひとことをクリックするとトークルームに移動し、コミュニケーションを楽しめる

ようやくSkypeと同じ土俵に、ビジネスユーザー取り込む

 今回のPC版およびタブレット向けブラウザー版公開は、「スマートフォンとフィーチャーフォン以外の端末でも、シームレスにコミュニケーションできるようにすることが狙い」と、LINEの企画者であるNHN Japanの稲垣あゆみ氏は説明する。「PCでもつながるようになって、ようやくSkypeと同じところにきた」。

 LINEと同様のメッセンジャーアプリとしてはSkypeが多くのユーザーを集めているが、これまでLINEには、Skypeでは提供しているPC向けクライアントが存在せず、スマートフォンとフィーチャーフォンからしか利用できなかった。「LINEがPCでも使えるようになれば、ビジネス層のユーザーが取り込める」と稲垣氏は自信をのぞかせる。

 「プライベートでLINEを使っていても、仕事ではSkypeを使う人は多いと思います。とはいえ、Skypeはお互いがログインした状態でなければメッセージを確認できませんが、LINEはPC版およびタブレット向けブラウザ版を起動していなくても、スマホでログインなしでいつでも確認できます。フィーチャーフォンに対応していることも優位点です。多くの人がスマホで『SkypeよりLINEがいい』と乗り換えてくれたように、ビジネスシーンでも同じ事が起これば。」

 収益化も視野に入れている。LINEユーザーに人気のスタンプを追加で販売したり、LINE上で広告を配信するアイデアがあるというというが、詳細は「全方面で大検討中」という。「LINEはユーザーが日常的に使うアプリ。ユーザーの目に触れる機会も多く、広告価値も高い。今年は稼いでいきたいです(笑)」。

社員でも入手できないというLINEスタンプのぬいぐるみを手にするLINE企画者の稲垣あゆみさん(左)とNHN Japan広報の金子智美さん。LINEスタンプのぬいぐるみを100人にプレゼントするTwitterキャンペーンを実施したところ、1万人弱の応募があったという

 LINEは2011年6月のサービス公開以来、国内や中東・東南アジア地域を中心に利用者を獲得し、サービス公開から約8カ月で累計2000万ダウンロードを突破。現在も、1週間に100万以上のペースでダウンロード数が伸びているという。ユーザーの6割が海外、4割が日本で、3月2日には日本のユーザー数が800万人を突破した。

 最近では海外のマーケティングにも注力。第1弾として2月17日から台湾でテレビCMを開始し、台湾のAndroid Marketの人気アプリ(無料)ランキングで1位を獲得。3月2日には、トルコのApp Store無料アプリ総合ランキング1位を獲得するなど、東ヨーロッパ圏でも利用が増加しており、2012年中に1億ユーザーを目指すという。


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(増田 覚)

2012/3/7 11:09