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ネット選挙運動解禁で、インターネットの信頼性が崩壊? I-ROIがセミナー
(2013/5/24 19:03)
一般社団法人インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)が21日、ネット選挙運動についてのセミナーを東京都内で開催した。選挙運動用の文書図画としてインターネットを使うことを解禁する公職選挙法の改正の内容や、すでにネット選挙運動が行われている海外の状況などが紹介された。セミナーは、政党、自治体・選挙管理委員会、メディアの関係者などを対象に行われたもので、約50人が参加した。
改正公職選挙法については、総務省の鈴木康之氏(自治行政局選挙部選挙課課長補佐)が概要を解説。候補者・政党だけでなく一般有権者もネットを使った選挙運動ができるようになるといっても、これまで通り、選挙運動は選挙運動期間(選挙の公示・告示日から投票日の前日まで)に限られており、これ以外の期間の選挙運動や、未成年者の選挙運動が禁止されていることは従来と変わりはないことがあらためて確認された。
また、今回の改正では「ウェブサイト等」の使用が候補者、政党、一般有権者に広く解禁された一方で、「電子メール」は候補者と政党のみに限定されている。その結果、例えば候補者・政党から選挙運動用メールを受信した一般有権者が、これをメールで転送するのはNGだが、それを丸ごとコピー&ペーストして自身のブログなどのウェブ上で公開するのはOKなのだという。
なお、「ウェブサイト等」とは、インターネット等を利用する方法のうち、「電子メール」を利用する方法を除いたものが含まれる。「電子メール」とは、SMTP方式または電話番号方式(SMS方式)による通信と定義されている。そのため、ホームページやブログ、TwitterやFacebookなどのSNS、YouTubeやニコニコ動画などの動画共有サイト、Ustreamやニコニコ生放送などの動画中継サイトはもちろんのこと、LINEや、Facebookなどのメッセージ機能も、「電子メール」ではなく「ウェブサイト等」に入るとしている。
このほか、選挙運動用の有料ネット広告は禁止されていることも説明された。ただし、政党に対しては、「選挙運動用」のウェブサイトに直接リンクした「政治活動用」の有料ネット広告が認められている。従来も選挙前ごろから政党のバナー広告が目に付くようなことが起きていたが、これはあくまでも「政治活動用」の広告。また、そのリンク先のウェブサイトも、従来はネット選挙運動が認められていなかったため、政党の政治活動用の公式サイトなどだった。
これに対して今後は、ふだんは政治活動用の内容の政党の公式サイトが、選挙運動期間中は選挙運動用の内容になることが想定される。そこで、「政治活動用」有料ネット広告から「選挙運動用」ウェブサイトへのリンクを認めることで、政党の公式サイトへの誘導を今後もこれまで通り行えるように配慮した結果だという。
なお、セミナーの参加者からの質問では、テレビの政治活動用CMでURLを告知し、選挙運動用のウェブサイトに誘導することは認められるのかといった質問も挙がった。これに対して総務省の鈴木氏は、今後の検討が必要なパターンだと回答。夏の参院選から解禁される見込みのネット選挙運動だが、まだ整理できていない部分もあるようだ。
こうした部分も含めて、ネット選挙運動を解禁する公職選挙法の改正が予想以上に早く実現したことで、さまざまな準備が整わないうちに参院選に突入することになってしまうことの問題を指摘するのは、日本政治総合研究所の理事長で、I-ROIの代表理事である白鳥令氏だ。
今回のセミナーを主催したI-ROIはもともと、有害情報対策のためのレーティング制度で健全サイト認定を行うために設立された団体だが、インターネットで情報を発信・受信するユーザーのリテラシー向上などにより「iコンプライアンス」を確保することで、インターネット全体の情報の信頼性(クレディビリティ)を回復・維持することの必要性も訴えている。
白鳥氏は、有権者がより多くの情報を候補者や政党から直接得られるようになる公職選挙方の改正について歓迎の意を示す一方で、ネット選挙運動の解禁と同時に、このiコンプライアンスをどのようにして保っていくかが重要だとして、今回のセミナーを実施するに至った理由を説明した。
白鳥氏によると、今回の改正が議員立法によるものだったことでスピード成立が実現した反面、関連省庁による既存の規制との整合性・統一性、あるいは予算などの不十分な面を残したままネット選挙運動が解禁される問題を懸念する。なりすましによる虚偽の情報発信や誹謗中傷などに対する監視の機構が、必ずしも用意されているわけではないという。限られた選挙運動期間中では「悪口でも何でも先に書いてしまった方が得」ということにもなりかねないとし、選挙の公平性としての問題が、政治的な側面で存在すると指摘する。
また、現在、なりすましなどによってインターネットの情報そのものの信頼性が疑問視されている状況の中で、今回、そうした行為を行いがちな選挙運動にインターネットを使うということが、「うそでも作り事でも書いてしまえばいいというところから来る、インターネットそのもののクレディビリティの崩壊」ということで、インターネットの側面でも大きな問題になると説明した。