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孫正義氏「これまでのヤフーは間違っていた」、EC手数料「無料化」の意図説明
(2013/10/7 19:07)
ヤフー株式会社は、7日に開催したECサービス出店者向けの戦略説明会「Yahoo! JAPANストアカンファレンス2013」において、「Yahoo!ショッピング」の毎月の出店料や売上ロイヤルティを無料化するとともに、「ヤフオク!」のストア出店料や個人の出品手数料などを無料化すると発表した。
孫正義氏「これまでのヤフーは間違っていた」、無料・自由化でナンバーワン目指す
カンファレンスの基調講演を行ったヤフー取締役会長の孫正義氏は冒頭、ソフトバンクモバイルの顧客信用情報を誤って登録した問題と、ワンセグバッテリーの回収問題について謝罪した上で、「こういう場でヤフーの会長として話をするのは久しぶり、もしかすると初めてかもしれないが、お話ししたいことがあるのでやってきました」と語り、新戦略を説明した。
孫氏は、「古来より、場を提供する者が利益を得てきた」として、現在でも商業施設に出店するには出店費用が必要であり、eコマースにも出店料や売上ロイヤルティといった場代が存在すると説明。
一方で、ヤフーやソフトバンクグループはインターネットの揺籃期から日本のインターネットがどうあるべきかということを考えてきたが、自由であることが期待されているインターネットにあって、eコマースの分野だけは不自由なままだったと説明。こうした点をヤフーの経営陣と議論していく中で、「ヤフージャパンはこれまで間違っていたということを認めようじゃないか」という結論に至ったとして、「我々はeコマース革命を提案したい。摩擦係数ゼロの世界に発想を切り替えた」と新戦略の意図を語った。
1番目の施策としては「無料」を挙げ、Yahoo!ショッピングではこれまで有料だった出店料(初期費用2万1000円、月額費用2万5000円)と、売上ロイヤルティ(売上の1.7~6.0%)を無料化すると説明。ヤフオク!についても、ストア出店料(月額1万8900円)や個人の出品時の手数料(10.5円)を無料化する。
また、10月1日に開始した「Yahoo!予約」の飲食店に対する予約成立時サービス利用料についても無料とすることをあわせて発表した。
2番目の施策としては「自由」を挙げ、Yahoo!ショッピングの出店ストアに対しては顧客へのメール送信を自由化するとともに、自社サイトへの送客(リンク)も自由化するとした。
孫氏は、「これでYahoo! JAPANはどうやって儲けるんだと疑問に思われるかもしれないが、今回の施策により日本全体のeコマースを盛り上げ、その結果として日本で最大のeコマースの場を作りたい」として、201X年度までに商品数ナンバーワン、国内EC流通総額ナンバーワンを目指すと説明。「2013年10月7日をeコマース革命の日にしたい。革命とは主役の交代を意味するが、ヤフーが他の企業に代わって主役になるという意味ではなく、売り手のみなさんが主役になるということ。日本の買い物を変えるというのがYahoo! JAPANの思想であり、みなさんといっしょに新しい夜明けを迎えたい」と来場者に呼びかけた。
出品料、手数料収入から広告収入にビジネスモデルを転換
ヤフー代表取締役社長CEOの宮坂学氏は、「かなり大きな方針転換となるが、必ずうまくいくと確信している」と決意を述べ、報道陣からの質問に答えた。
無料化により、ショッピングやオークションではどこで儲けを得るのかという質問には、「広告を中心にしていこうと考えている」として、現在でもショッピングやオークションで出品商品を目立たせるための広告商品を展開しているが、無料化により出品者数が増えることで、こうした広告商品へのニーズが高まることに期待したいとした。
一方で、無料化により出品料や手数料収入分が減収となるが、その分を広告料などでカバーできるのはいつごろになるかという質問には、「会社全体としてカバーできるようにしたいと考えているが、eコマース単体で言うとそんなに早くはいかないと思う。じっくり腰を据えてやっていきたい」と答えた。
孫氏の「ヤフーは間違っていた」というのはどこが間違っていたのかという質問には、宮坂氏も以前ショッピング事業の責任者を2年間務めていたとして、「その反省を踏まえて言えば、先行する企業の真似ばかりしていたということ。追いつこうとしてばかりいたが、それでは勝てない。インターネットはフリーであり、人が集まればビジネスになるという、我々の原点である強みを生かしていこうというのが今回の決断」と語った。
Yahoo!ショッピングについては、7月に出店プランの変更を発表したばかりだが、なぜ無料化という大幅な変更をその直後に発表したのかという点については、「新出店プランを作っていた時にはそれでいこうと思っていたが、孫と話をしていく中で、もっとドラスティックにやろうという話になった」(執行役員ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏)と、7月以降に今回の決断に至ったと説明した。
以前は楽天に在籍していた小澤氏に対して、楽天と対決することについてどう思うかという質問が寄せられたが、小澤氏は「eコマース全体を拡大し、パイを広げたいと考えている。かつてYahoo! BBでモデムを配ってまでインターネットを広めたことで、インターネットにかかわるすべての会社が恩恵を受けたように、必ずやマーケット全体が広がると信じている」と説明。また、今回の施策とともに、担当エンジニアを5倍に増やし、ショッピングの機能改善にも努めていくと語った。