特別企画

大増税が迫ってくる? 自分への影響は? まずは源泉徴収票の見方を理解しよう<前編>

~サラリーマン増税? 年収850万円? フリーランス減税? どうなる……自分~

 12月14日に与党の「平成30年度税制改正大綱」(PDF)が決まった。報道の見出しを拾ってみると「所得、たばこ、観光…個人増税ずらり 全体で2800億円の増収に」「給与850万円で増税 賃上げ企業は優遇」「増税総額2800億円 家計負担重く」などと増税の二文字が目立つ。

 すでに税制改正が決まっているもの、これから改正されそうなもので、個人に関係しそうなものを一覧にしてみた。継続的な税収不足、安定与党、選挙が終わってやりたい放題、しばらく増税時代が続きそうだ。

2018年以降の主な税制の変更

 税制改正大綱に関する報道の中身を見ると「基礎控除の10万円引き上げ」「給与所得控除の10万円引き下げと上限引き下げ」などの文字が並び、よく分からない人がいるはずだ。サラリーマン時代の筆者はその1人で、税金の知識が乏しく年末調整の意味や源泉徴収票の見方も知らなかった。なんとなく増税時代が近付いている感じがする中、自分にどれだけの影響があるのかを把握するには、税金の仕組みや算出方法を理解するのが近道だ。

源泉徴収票の見方を知ると税金が分かる

 多くのサラリーマンは12月か1月の給与明細と一緒に源泉徴収票を受け取るはずだ。普通の人にはそこに書かれた数字は意味不明だが、この源泉徴収票の見方を覚えると税金への理解が深まり、増税のニュースを目にした際も、それが自分に影響するのか、いくら増税されるのかが分かるようになる。

 11月はサラリーマン向けの年末調整の書き方(11月17日付記事『年末調整の書き方<2017年版>~配偶者控除、配偶者特別控除の改正について~』)、先週はフリーランス向けの節税対策(12月19日付記事『必見! 個人事業主の節税対策まとめ~年末は節税の最後のチャンス~』)を紹介したので、今回は、前編では「源泉徴収票の見方」を、後編では「税制改正の影響」を説明しよう。年末調整と源泉徴収票はサラリーマンが税金と接する数少ない機会なので、大増税時代に備え、税金に少しだけ興味を持ってもらいたい。

源泉徴収票を3つに分けて理解する

 「平成29年分 給与所得の源泉徴収票」を受け取っている人は、ご自身の源泉徴収票を用意して検証しながら読み進めていただければ、より深く理解できる。源泉徴収票にはさまざまな数字(金額)が書かれているが、それぞれの数字の関連性は所得税の算出方法を知らないと理解できないようになっている。ここでは所得税の算出方法を説明するため、源泉徴収票の主なところをブルー、ピンク、グリーンに色分けしてみた。

 年末調整の書き方の記事でも紹介したが、サラリーマンの所得税の計算式は以下のとおり。1行目は収入(年収)から所得を求める式で、税制改正大綱で引き下げ(=増税)が検討されている給与所得控除が関係する部分だ。2行目は所得から課税所得(税金の対象となる所得)を求める式。この式の各種所得控除には2018年1月から改正される配偶者控除、税制改正大綱で引き上げ(=減税)が検討されている基礎控除などが含まれている。3行目は課税所得に税率を掛け、所得税の納税額を求める式だ。源泉徴収票のブルーは1行目の式、ピンクは2行目の式、グリーンは3行目の式と関係している。

給与所得控除ってなに?

 まずはブルーの部分から見ていこう。この例では「支払金額」が660万円、「給与所得控除後の金額」が474万円となっている。660万円は給与と賞与の合計額、平成29年の収入=年収だ。474万円は収入から給与所得控除というものを引いた金額で、所得と呼ばれている。給与所得控除……筆者はサラリーマンを辞めてからこの存在を知った。

給与の収入金額-給与所得控除=給与所得

 この式に出てくる給与所得控除は重要だ。給与所得控除はサラリーマンの必要経費と言われ、「スーツ・カバン・クツ代、自腹スマホ、自腹PC、自腹接待など会社には請求できないけど仕事に必要な経費があるはず」ということで、収入に応じて一定額を課税の対象から差し引いて(控除して)くれるものだ。給与所得控除額の計算式は以下のとおりだ。

給与所得控除の計算式

 年収660万円の安倍進次郎さんの例で給与所得控除の額と所得を計算してみよう。

給与所得控除
660万円×20%+54万円=186万円

給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得
660万円-186万円=474万円

と、源泉徴収票に記載された「支払金額(=年収)」の660万円と「給与所得控除後の金額(=所得)」の474万円を求めることができた。

 ご自身の源泉徴収票に記載された金額を計算すると、微妙に差異が発生した人がいると思う。年収660万円未満の人の給与所得控除後の金額の算出は「平成29年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」(PDF)という速算表を使用することになっている。

 その一部を見ると、年収538万円から538万4000円未満の人の給与所得控除後の額は376万4000円となっていて、538万1000円でも538万2500円でも一律376万4000円となっている。これが差異の原因。表計算ソフトや給与アプリ/システムがなかった時代のなごりだと思われるが、正確にご自身の源泉徴収票を計算したい方は、この速算表で確認していただきたい。

起業を考える人は注意! 日本の税制はフリーランスに優しくない

 詳細は後編に説明するが、平成30年税制改正大綱ではサラリーマンの特典とも言える給与所得控除を引き下げる(=増税)方向で進んでいる。この給与所得控除の額を計算するとかなりの額となる。一例を挙げると、年収500万円の場合、給与所得控除は154万円となる。これは月収30万円くらいで、毎月12万円が、1円も使わなくても経費として課税対象から控除される。専業主婦の奥さんがいると受けられる配偶者控除の38万円、大学生の子がいると受けられる特定扶養親族の63万円と比べれば、給与所得控除の154万円はものすごい控除額だ。

 フリーランス、自営業には給与所得控除がない。比較してみよう。例えば主婦がパートで働くと給与所得者なので、基礎控除の38万円に加え、給与所得控除が最低で65万円、合計103万円までは所得税が掛からない。無税だ。スーパーやコンビニで毎月8万円を稼げば年間96万円の収入でも無税だ。

 主婦がアクセサリーを売ったり、料理教室を開いて収入を得た場合は給与所得ではなく事業所得となる。フリーランス、自営業、個人事業主の仲間入りだ。給与所得控除がなく、基礎控除の38万円だけとなり、所得が38万円を超えると所得税を納めなければならない。毎月8万円、年間の所得が96万円になると2万9000円の所得税を納め、さらに所得が38万円を超えるため、旦那の配偶者控除の対象からも外れることとなる。日本の税制は起業する人に優しくない。

 働き方の多様化が進む中、給与所得者(サラリーマン、パート、アルバイト)は得、フリーランス、自営業、個人事業主は損というこれまでの税制が、ほんの少し(給与所得控除の100~200万円に対し10万円だけ)フリーランスの減税に進みそうだ。

 ちなみに、サラリーマン時代の筆者は、「自営業はサラリーマンより税金面で優遇されている」となんとなく思っていた。起業してから給与所得控除の存在を知り、実はサラリーマンは税的にものすごく優遇されていることに気付いた。税金だけでなく、年金や健康保険もサラリーマンは自営業より優遇されている。筆者は起業してから気付いたが、これから起業を考えている人は税金のことを知っておくと後悔が減るだろう。

源泉徴収票の所得控除は分かりにくく書かれている

 ピンクの部分は各種所得控除に関する金額などが記載されている。パッと見ると一番上の「所得控除の額の合計額」に308万円と記載されていて、その下の段には○印や数字の1、さらに下の段には99万円、12万円などの金額が記載されている。最下段にも12万円、8万円の金額があるが、それらを合計しても308万円にはならない。

 所得控除とは、から説明しよう。「大学生の子どもがいるとお金掛かるよね」といった感じで、所得控除は「親と同居している」「生命保険に加入している」などの個人個人の事情に合わせて、所得から一定額を差し引き(控除し)、税金を計算するときの金額(課税所得)を引き下げ、納税額を減らすものだ。同じ所得のサラリーマンなら、養う家族がいる人は独身の人より納税額が減ることになる。

 各種所得控除の中で多くの人が関係するのは配偶者控除、扶養控除といった人的控除、年金、健康保険、雇用保険といった社会保険料控除、生命保険に加入していると受けられる生命保険料控除だろう。これらの所得控除が源泉徴収票には「分かりにくく」記載されている。

扶養家族は印や人数を見逃すな

 「控除対象配偶者の有無」の「有」に○が付いていると、控除対象となる配偶者がいるということだ。配偶者は旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さんだ。控除対象となるのは所得が38万円以下であること。例えばパート勤めの奥さんは本人の給与所得控除があるので、年収103万円以下なら所得が38万円以下となる。正社員でバリバリ働いている奥さんは配偶者控除の対象とはならない。配偶者控除の金額は38万円だ。

 右側を見ると「控除対象扶養親族の数(配偶者を除く。)」という欄があり、その下の特定の欄に1人、老人の欄の左に1人、点線をはさんで右側に1人となっている。扶養控除は子どもや親を養っていると受けられる控除だ。扶養控除は対象となる親族の年齢により控除額が異なっていてやや複雑なので図を見ていただこう。

 その年の年末時点の年齢が16~18歳(ほぼ高校生)であれば38万円。19~22歳(ほぼ大学生)であれば63万円。23~69歳であれば38万円。70歳以上で同居していれば58万円、別居であれば48万円となっている。年齢以外の条件があり、控除対象となるのは配偶者控除と同じく所得が38万円以下となっている。

 増額になっている19~22歳はほぼ大学生で、対象となる親族を特定扶養親族と呼ぶ。「大学に通う子どもがいるとお金が掛かるから控除を増やして税金を減らしましょう」ということだ。ただし、大学に通っていることは条件となっていないので、浪人中でもフリーターでも年齢と所得の条件を満たし、生計を一としていれば(親が養っていれば)別居でも控除の対象となる。もう1つ増額されているのは70歳以上で、老人扶養親族と呼ばれている。老人扶養親族は同居(同居老親等)と別居で控除額が異なっている。

 もう一度、源泉徴収票を見てみよう。特定(特定扶養親族)が1人となっているので、ほぼ大学生の子どもが1人いることが分かる。老人の欄は真ん中の1人は70歳以上の老人扶養親族が1人いることを表し、点線をはさんで左側の内1人は老人扶養親族の内、同居老親が1人いることを表している。もし別居で老人扶養親族がいる場合は真ん中が1人、点線の左側の内は0人となる。

 源泉徴収票に金額は記されていないが、配偶者控除は38万円、扶養控除は特定扶養親族の63万円と同居老親の58万円となっている。

生命保険料控除は年末調整を思い出せ

 「社会保険料金等の金額」に記載された99万円は厚生年金、健康保険、雇用保険の合計額。毎月天引きされた社会保険料の合計額がそのまま記載されている。その右側が生命保険料の控除額だ。ここに記載された12万円と最下段に記載された支払った額の12万円、8万円、12万円の関係が分かりにくい。

 図で説明しよう。生命保険は平成23年以前に契約したものは旧制度、平成24年以後に契約したものは新制度と分けられている。さらに旧制度は一般と年金の2つ、新制度は一般、介護医療、年金の3つに分けられ、計5つに分類されている。保険料ごとに控除額を算出し、合計した額が生命保険料控除の額となる。ただし上限額があり、この例では上限額の12万円となっている。

 支払った保険料から控除額を算出する計算式は以下の図のとおりだ。旧制度と新制度で計算式が異なり、上限額も異なるので分かりにくい。これに限らず所得税も住民税も、迷路のような計算式が多く、もっとシンプルにできないものかと思う。

 この生命保険料控除に記載された金額は、少し前に年末調整で提出した内容が反映されている。年末調整で生命保険料を申告して、それを元に控除を行い最終的な所得税を算出。その結果が源泉徴収票に記載されている、ということだ。

 年末調整で記入したものを見ると、旧制度の生命保険に12万円、介護医療保険(新制度)に8万円、旧制度の個人年金保険に12万円を支払っていて、最終的な生命保険料控除の額は12万円。支払った額と最終結果だけが源泉徴収票に記載されている。

減税が期待される基礎控除が見あたらない

 では源泉徴収票に記載された○印、人数、金額の意味がなんとなく理解できたとして、それぞれの控除額を合計してみよう。

配偶者控除    38万円
特定扶養親族   63万円
同居老親     58万円
社会保険料控除  99万円
生命保険料控除  12万円
合計       270万円

 「所得控除の額の合計額」の308万円に38万円足りない。源泉徴収票のどこにも記載されていないが、所得がある人は全員に38万円の基礎控除があるので、自分自身の基礎控除を足すと、所得控除の額の合計額は308万円となる……スッキリ。

 そう、この基礎控除の38万円を平成30年税制改正大綱では10万円上乗せする方向で進んでいる。サラリーマンもフリーランスも、所得のあるすべての人が減税されるが、サラリーマンは給与所得控除が減額(=増税)されるので、差し引きするとこれまでと同じか増税となり、フリーランスは減税となる。

 各種所得控除の計算ができたので、所得税の計算式の2行目を計算してみると課税所得が算出できる。

給与所得-各種所得控除=課税所得
474万円-308万円=166万円

課税所得に税率を掛けると納税額

 最後のグリーンの部分を説明しよう。ここでは課税所得から所得税の納税額を算出する。課税所得に税率を掛けるだけで簡単に最終的な納税額は計算できる。まずは税率を確認しよう。所得税の税率は以下の表となっている。

所得税の税率

 表を見ると、課税所得の額に応じて5%から45%まで税率は上がっていくが、課税所得が195万円から196万円になったら納税額がいきなり倍になるわけでない。課税所得全体にその税率が掛かるわけではなく、課税所得の195万円以下の部分の税率が5%、195万円を超え330万円以下の部分の税率が10%とそれぞれの部分ごとに税率が異なるということだ。

 例えば課税所得が300万円の場合、195万円までの部分の5%、195万円を超え300万円の部分の10%を合計した額が納税額となる。実際に計算してみよう。

課税所得300万円の所得税

195万円×5%=9万7500円 ①
105万円(300万円-195万円)×10%=10万5000円 ②

①+②=9万7500円+10万5000円=20万2500円

となる。税率表の右側にある控除額を使用すると、簡単に計算することができる。

課税所得金額×税率-控除額=納税額
300万円×10%-9万7500円=20万2500円

 安倍進次郎さんの事例の所得税を計算してみると、

課税所得×税率=所得税
166万円×5%=8万3000円
(課税所得は1000円未満の端数は切り捨て)

 源泉徴収票に記載された「源泉徴収税額=所得税」の8万4700円にかなり近づいたが、まだ1700円の差異がある。所得税の納税額は計算のとおり8万3000円で間違いないが、平成25年から25年間は東日本大震災の復興特別所得税を上乗せする必要がある。復興特別所得税額は所得税の納税額の2.1%分となっている。

8万3000円+(8万3000円×2.1%)=8万4743円
100円未満を切り捨て       =8万4700円

 う~ん、スッキリ。これで源泉徴収票のすべての金額が明らかとなった。このように源泉徴収票は知識がないと理解できない。と言うよりワザと分かりにくく作られている印象だ。国民が税金のことを理解しない方が、都合がよいという姿勢の表れかもしれない。

 給与所得控除、各種所得控除額、税率など源泉徴収票に記載されていない所得税の算出方法を知らないと理解できないのが源泉徴収票だ。だが一度理解すれば、ほぼ一生役に立つ知識だと思われる。サラリーマンの所得税の計算式をイメージ図にしてみた。年収から給与所得控除が引かれ、各種所得控除が引かれ、最後に税率を掛けたものが納税額となっている。

 ここまで理解できた人は「基礎控除が引き上がられる」「給与所得控除が引き下げられる」「給与所得控除の収入の上限が850万円になる」とった報道を見て、自分への影響がどれくらいかの判断もできるだろう。前編はここまで。1月にお届けする後編では、2018年から変わる配偶者控除や平成30年税制改正大綱の影響がどれくらいあるかを検証してみたい。