特集
大増税が迫ってくる? 自分への影響は? まずは源泉徴収票の見方を理解しよう<後編>
~サラリーマン増税? 年収850万円? フリーランス減税? どうなる……自分~
2018年1月25日 12:00
サラリーマンは12月か1月の給与明細と一緒に「源泉徴収票」なるものを受け取っているはずだ。サラリーマン時代の筆者は小さな紙切れを見て「この金額が年収?」「この数字は何?」と理解不能だった。前編では、筆者のように源泉徴収票を見て「なんじゃこれ?」という人向けに、源泉徴収票の見方を説明した。
税制は毎年変更があり、自分自身に関係するもの関係しないものがある。改正された税制が自分自身にどのような影響があるかを知るには、少しだけ税の知識が必要だ。サラリーマンは源泉徴収票を受け取り、自営業者は間もなく確定申告を迎える。税の話題が増える時期なので、今回の後編では、これから予定されている税制改正について説明をしたい。
前編をお読みでない人はまず前編で源泉徴収票の見方を理解していただきたい。重複する部分は詳しい説明を省くことがあるので、筆者が昨年11月以降に執筆した税金に関する記事の一覧を掲載しておこう。必要な人はこちらも参照いただきたい。
前編でも紹介したとおり、すでに税制改正が決まっているもの、これから改正されそうなもので、個人に関係しそうなものの一覧が以下となる。
この中ですでにスタートした2018年1月の配偶者控除の見直し、今後予定されている2019年10月の消費税、2020年1月の所得税の見直し、2024年4月の森林環境税につてい触れてみたい。
皆さんはご自身の所得税や住民税の納税額を把握されているだろうか。筆者はサラリーマン時代の納税額は記憶になく、現在は自分で確定申告をし、住民税はコンビニで納付しているので把握はしている。税金に関しては「自分が納める税金は少ない方がいいなあ」「でも日本の現状はもっと税収が必要だよね」「どこかのお金持ちの人がたくさん納税してくれないかなあ」と思っている。
参考程度に所得税の納税状況を確認してみよう。下の図は平成29年2月に公開された平成27年分 申告所得税標本調査(PDF)に掲載された所得階級別の構成割合だ。
上段は所得階級別の納税者の人数構成。所得100万円以下の人は全体の7.5%、100万円超200万円以下は23.3%……1億円を超える人は0.3%となっている。中段は各階級の所得合計額の構成比率。下段は階級別の納税額で所得100万円以下の人の納税額は全体の0.1%、100万円超200万円以下は0.9%……1億円を超える人は20.3%となっている。
黄色く塗った部分は所得1000万円を超える人(サラリーマンであれば年収1231万5789円超:平成27年)だ。所得1000万円超えの人数は全体の12.8%だが、納税総額は全体の82.6%を占めている。逆の言い方をすると所得1000万円以下の人数は全体の87.2%もいるが、納税総額は17.4%に過ぎない。ヒェ~っと思ったのは筆者だけではないだろう。筆者が納めている税金は微微……微々たるもので、どこかのお金持ちの人は想像以上にたくさん納税してくれているようだ。
前編の源泉徴収票の例として掲載した安倍進次郎さんのポジションを見ると、年収(660万円)から給与所得控除を引いた所得は474万円で所得階級別の300万円超500万円以下に該当する。人数構成としては20.1%の中で中心よりやや右側だが、納税額は左端の3.6%に含まれる。
配偶者(特別)控除の見直しで奥さんの収入が増える?
2018年から配偶者(特別)控除の仕組みが変更となった。配偶者とは、旦那さんから見た奥さん、奥さんから見た旦那さん。旦那さんが稼いで奥さんが専業主婦をしていれば、旦那さんは配偶者控除が受けられ、納税額が減る仕組みだ。ザックリ言うと「奥さんがいると独身より生活費が掛かるから税金を減らしましょう」という制度だ。
2017年までのルールを確認しておこう。配偶者控除の対象となるのは所得が38万円以下の配偶者。パート勤めの奥さんの場合は、年収が103万円以下であれば、給与所得控除の65万円が引かれ所得が38万円以下となる。
給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得
例 103万円(年収)-65万円=38万円 ←所得
当然、奥さんが正社員で年収300万円であれば旦那さんは配偶者控除を受けられない。この場合、もし旦那さんがリストラなどでその年の所得が38万円以下になれば、奥さんが配偶者控除を受けられる。
配偶者控除の控除額は38万円。この38万円が所得から控除され(差し引かれ)課税所得(税率を掛ける額)が下がり、納税が減少する。所得税の税率が5%の人は1万9000円、10%の人は3万8000円、20%の人は7万6000円の減税だ。奥さん(控除対象配偶者)の年齢が70歳以上であれば控除額は48万円となる。住民税の配偶者控除は33万円で税率はほぼ一律10%なので3万3000円の減税となる。
所得が38万円を超えた場合は配偶者特別控除があり、38万円超76万円未満の間で徐々に控除額が減少し、所得が76万円(パート収入なら141万円)以上で控除額は0円となる。配偶者特別控除は条件があり、(旦那さんの)所得が1000万円(サラリーマンなら年収1220万円:平成30年)を超えると控除を受けることができない。
平成27年の所得控除額のデータを見ると、配偶者控除の総額は3番目。ほとんどの人が受けられる社会保険料控除(年金、健康保険など)、全員が受けられる基礎控除に続く大きな控除となっている。配偶者特別控除は0.4%と少ない。
2017年までの配偶者控除、配偶者特別控除のイメージを国税庁の資料をベースに加工したのが以下の図となる。旦那さんが配偶者控除の38万円が受けられるようにパート収入をセーブする主婦は多く、「103万円の壁」と言われてきた。このことが労働の抑制や女性の社会進出のさまたげになっていると指摘されている。
2018年から配偶者(特別)控除の仕組みが大幅に改正され、かなり複雑となった。大きな変更点は3つ。
- 旦那さんの所得額により配偶者(特別)控除の額が異なる
- 旦那さんの所得額が1000万円を超えると配偶者控除が受けられない
- 103万円の壁を150万円に引き上げ
従来は旦那さんの所得が400万円でも2000万円でも、所得額に関係なく配偶者控除の額は38万円で固定されていたが、2018年からは所得額が増えると控除額が減る仕組みとなる。加えて、旦那さんの所得が1000万円を超えると、配偶者特別控除だけでなく配偶者控除も受けられなくなる。
旦那さんの所得額 | 配偶者控除の控除額 |
900万円以下 | 38万円(変更なし) |
900万円超 950万円以下 | 26万円 |
950万円超 1000万円以下 | 13万円 |
1000万円超 | 0円 |
これにより旦那さんの所得が900万円を超える家庭は配偶者控除が減り増税となる。先ほど紹介した納税の実績のとおり、所得1000万円超えの人数は全体の12.8%なので900万円を超える家庭は多くはないが、「金持ち狙い撃ち」の増税は加速の一途だ。
逆に減税されるかもしれないのが、旦那さんの所得が900万円以下の家庭だ。103万円の壁は150万円に引き上げられる。従来であればパート収入が150万円の奥さんは配偶者控除、配偶者特別控除の対象外だったが、2018年から150万円以下であれば38万円の控除を受けることができる。旦那さんの所得が950万円以下、1000万円以下の場合でも減額はされるが控除を受けることはできる。この部分だけ見れば、103万円を超えないように年末のパート仕事を減らす主婦が減りそうだ。
過去、民主党政権時代には「配偶者控除をなくせば女性の社会進出が促進される」と言う乱暴な意見も聞かれたが、筆者には増税するための詭弁に聞こえた。現政権で103万円の壁を150万円に引き上げる方向に進んだことは、好ましいことだと思っている。反面、税の仕組みをこんなに複雑にすると、分かりにくい税金がますます理解できないものになりそうだ。103万円の壁を崩したい側と、税収を減らしたくない側のせめぎ合いの結果と思われるが、もっとシンプルな改正にして欲しい。
旦那さんの所得の900万円、950万円、1000万円はフリーランス、自営業、個人事業主と呼ばれる人の事業所得であれば「売上-経費」の額。サラリーマンは給与所得控除の特典があるので年収にすると1120万円、1170万円、1220万円となる。奥さん側もパート収入であれば給与所得控除があるので年収103万円、150万円は、所得にすると38万円、85万円となるが、事業所得の場合は青色申告をしなければ「売上-経費」がそのまま所得額となる。
配偶者控除・配偶者特別控除の2017年と2018年の違いをイメージ図にしてみた。縦軸が旦那さんが受けられる控除額。横軸は奥さんの所得額(年収ではない)。手前の黄色が2017年、奥の青色が旦那さんの所得900万円以下、その手前の緑が所得900万円超 950万円以下、さらにその手前の紫が所得950万円超1000万円以下だ。
チョット待った! 主婦の壁は103万円だけではない
103万円の壁ほど知られていないが、主婦の年収には100万円(98万円)、別の103万円、106万円、130万円といくつもの壁が存在している。「配偶者控除がもらえなくなる心配がなくなったから、好きなだけ働いていいぞ」とはならないので、ザックリとした説明をしておこう。
1.奥さん自身の所得税は別の103万円の壁
配偶者(特別)控除の見直しで奥さんの年収が103万円から120万円になっても、旦那さんの控除が減ることはなくなった。ただし、奥さん自身の年収が103万円以下であれば所得税は無税だが、年収が120万円になれば課税所得は17万円となり、5%の税率をかけた8500円の所得税を納めなければならない。103万円を超えた分の5%なので、大きな壁ではないが103万円の壁は残っている。
2.住民税は100万円(98万円)の壁
住民税はほぼ全国一律の税制だが、自治体により少しルールが異なっている。住民税の税率は10%が一般的で、内訳は県民税が4%、市民税が6%だ(平成30年度から政令指定都市は2%と8%)。神奈川県は県民税が4.025%(平成29年度)でやや高め、名古屋市の市民税は5.7%(同)でやや低めと、一部の自治体は異なっている。
所得税(国税)はパート主婦で年収103万円以下なら無税だが、住民税(地方税)は100万円(98万円、96.5万円などさまざま)を超えると課税される自治体が多い。そのため、住んでいる自治体の税制に合わせて103万円より手前で年収を調整している人もいるだろう。名古屋市の市民税が税率6%から5.7%に減税されたのは河村たかし市長の公約だ。自治体の首長が舵を切れば税制を変えることは不可能ではない。国は103万円の壁を崩す方向に進んだので、もし東京都知事が「住民税は150万円まで無税」と舵を切れば、女性の社会進出は勢いを増すかもしれない。
3.106万円、130万円、社会保険の壁は険しい
旦那さんがサラリーマンなら、奥さんは旦那さんの被扶養者として健康保険や厚生年金に加入している人が多い。被扶養者には制限があり、奥さんの年収が130万円以上になると扶養から外れ、自分自身で社会保険料を支払うことになる。
また、501人以上の従業員がいる大きな企業でパート勤めをしていると、
- 週20時間以上の労働(残業は除く)
- 年収106万円以上(月収8万8000円以上)
- 雇用期間1年以上
の条件に当てはまるとパート先の社会保険に加入し、社会保険料を奥さん自身が納めることになる。社会保険料は年額15~20万円くらいになるので、旦那さんの会社の社会保険のルール、奥さんが勤めるパート先のルールを事前に確認しておきたい。特に旦那さんサラリーマン、奥さん自営業の場合は所得ではなく売り上げが130万円以上で扶養から外れたり、青色申告特別控除は認めないなど保険組合のルールはさまざまなので要注意だ。
社会保険の心配がないのは個人事業主の旦那さんを持つ奥さん。個人事業主にはサラリーマンの優遇がないので、もともと奥さん自身の国民年金を年額20万円弱(平成30年度は1万6900円/月)を負担しているし、国民健康保険も人数分を負担しているので奥さんの年収が130万円を超えても新たな社会保険料の増加はない。
4.家族手当など
旦那さんの会社が奥さんや子のいる社員に家族手当を支給している場合も要注意だ。もし旦那さんの会社のルールが「年収103万円以下なら月額1~2万円の家族手当を支給」となっていると、奥さんの年収が103万円を超えると、年額12~24万円の手当を失うことになる。特に旦那さんが大会社に勤めている人はこれも確認しておこう。
このように配偶者(特別)控除が見直されても、さまざまな壁が存在している。今回の見直しは最初の一歩として高く評価できるが、政府は社会保険や手当のルールに関しても組合や企業に働きかけをしないと女性の社会進出は進まないように思える。
2019年10月、消費税の税率が10%に。軽減税率ってなんだ?
消費税の税率は2014年4月に5%から8%になり、さらに2015年10月には10%に引き上げられる予定だったが、2017年4月に延期となり、その後2019年10月に再延期された。再々延期の可能性もあるが、現状は来年秋に10%となる予定だ。
消費税は所得税とは別物で、源泉徴収票とは関係ないが、多くの人が影響を受けるので簡単に説明をしておこう。消費税が導入されたのは平成元年(1989年)。元号が昭和から平成に変わったこの年はバブル絶頂期で、ソニーがコロンビア映画を買収、三菱地所がロックフェラーグループを買収、横浜ベイブリッジが開通、セルシオ、ユーノスロードスターなどが発売され、12月には日経平均株価が3万8957円の史上最高値を記録した。消費税という国民にとって未知の増税をするにはよい時期だったように思う。
消費税の税率が3%から5%に引き上げられたのは8年後の平成9年(1997年)。バブル崩壊から元気を取り戻しつつあった時代で、長野新幹線、東京湾アクアライン、山陽自動車道が開通し、500系新幹線が営業運転を開始。大阪ドーム、ナゴヤドームが完成、ハリヤー、エルグランドなど高級車も登場した。Windows 95から98へ向かうころで、パソコン業界もイケイケだった。
イケイケの時代の到来は期待できないが、2012年12月に第2次安倍内閣が発足し、アベノミクスの提唱で経済が上向き始めた2014年に5%から8%に税率の引き上げが行われた。
一般的には消費税の税率は3%、5%、8%、10%とされているが、5%の内訳は消費税4%(国税)、地方消費税が1%(地方税)。同様に8%は国税6.3%+地方税1.7%、10%は国税7.8%+地方税2.2%となっている。
国税を代表する所得税、法人税、消費税の税収の推移を、財務省が公開している平成22年度までのグラフに、平成23年以降のデータを追加してグラフにしてみた。所得税、法人税が景気の動向に影響される中、消費税の税収の安定度は高い。消費税5%(国税分は4%)の時代はリーマンショックで法人税が半分以下に減っても消費税はほぼ横ばいとなっている。
消費税10%から新たに導入されるのが軽減税率だ。国民の生活に密接するものの税率を8%に据え置くことになっている。対象となる品目で代表的なのは食飲料品。ただし酒類と外食は除かれる。読者の中には「ノンアルコールビールは?」「宅配ビザは?」「コンビニ弁当を自宅で食べたら?」などと疑問を持った人もいるだろう。軽減税率の対象か否かは国税庁のウェブサイトに詳しく書かれているが、一例を紹介しておこう。
- ノンアルコールビールは8%
- 宅配ビザは8%
- コンビニはイートインスペースで食べると10%、持ち帰ると8%
- ファーストフードも店内で食べると10%、持ち帰ると8%
- 医薬品に該当しない健康食品は8%
- 自販機で売られるジュース、パンは8%
- ネット通販で買った食品は8%
- 医薬部外品に該当する栄養ドリンクは10%
- 社員食堂の食事は10%
食飲料品以外で軽減税率の対象となるのは新聞だけだ。対象となるのは週2回以上定期発行され定期購読契約がされているもの。この条件に当てはまればスポーツ新聞や経済新聞も8%に据え置きとなる。週1回発行、月1回発行の業界紙は10%、駅の売店やコンビニで買った新聞は10%。電子版の新聞も10%だ。
筆者自身は新聞を定期購読していないので、プロバイダー料金やスマホの通信量を軽減税率の対象とした方が実情に即しているように感じられるが、圧倒的大多数の国民は新聞が最大の情報源という国の判断だと思われる。
余談となるが、筆者は消費税率引き上げ賛成派だ。もちろん1万円のものを買って支払額が1万800円から1万1000円になるのはうれしくはないが、国の状況を考えるとやむを得ないと思っている。50代後半の筆者の人生は残り20年ほどだが、2人の子どもは20代、孫は2歳半、若い姪や甥もいる。愛する日本が数十年先にも素晴らしい国であるためには、税収を増やすことが必要だと思っている。
賛成する理由の1つは、所得税や法人税に比べ消費税の税収が安定していること。先ほどのグラフのように消費税は業績や景気の影響を受けにくい。2つ目の理由は、節税が難しいこと。小規模な事業者には消費税免税事業者などによる節税策はあるが、所得税、法人税に比べると消費税の節税は困難だ。実際、Googleで「節税」を検索し上位に並ぶ記事を見ても、消費税の節税について言及しているものはほとんどない。
さらに加えると、軽減税率も不要だと思っている。税金の仕組みはできるだけシンプルにすることが望ましく、義務教育レベルで理解できるようにするべきで、必要なら生活保護世帯などに手当で対応して欲しい。配偶者(特別)控除が複雑化したのも賛同できないし、軽減税率も同様だ。コンビニのレジで「温めますか? 店内で食べますか?」と聞いて8%、10%を打ち分けるなどは、客にも店員にも無駄。POSレジのプログラム変更も無駄だと思っている。
念のために言うと世の中の“うわさ話”で、新聞は消費税率の引き上げに賛成する記事を書き軽減税率の対象になったとか、政府は新聞に消費税引き上げ賛成の記事を書いてもらうために新聞を対象にした、と揶揄されているが、筆者は消費税率の引き上げに賛成しても軽減税率の摘要を受ける売り上げはない。
2020年1月、基礎控除、給与所得控除の改正で自分の税金は?
2年後、2020年から所得税は大幅な見直しとなる予定だ。ただし、これは与党の「平成30年度税制改正大綱」(PDF)なので確定ではない。
確定ではないが、配偶者(特別)控除が今年から変更になったことを知らない人は大勢いると思うし、わずか2年後の予定なので、方向性を知っておくのは損ではないだろう。「平成30年度税制改正大綱」のPDFは図解などはなく、ほぼ文字だけで132ページ。その中の所得税に関する部分のさらに一部だけ紹介しよう。
1.基礎控除の引き上げ
これまですべての人が受けられた基礎控除を10万円引き上げ38万円から48万円に変更する(減税)。ただし、所得額が2400万円を超えると控除額が減少し、所得額が2500万円を超えると基礎控除はなしとなる。すべての人が受けられる控除ではなくなるということだ。所得額と基礎控除は以下のようになる。
所得額 | 2019年までの控除額 | 2020年からの控除額 |
2400万円以下 | 38万円 | 48万円 |
2400万円超 2450万円以下 | 32万円 | |
2450万円超 2500万円以下 | 16万円 | |
2500万円超 | なし |
2.給与所得控除の引き下げ
給与所得控除の控除額を10万円引き下げる(増税)。加えて上限は現在の年収1000万円(控除額220万円)から850万円(控除額195万円)に引き下げとなる。
給与等の収入金額(年収) | 2019年まで給与所得控除額 |
162万5000円以下 | 65万円 |
162万5000円超 180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1000万円超 | 220万円(上限) |
給与等の収入金額(年収) | 2020年から給与所得控除額 |
162万5000円以下 | 55万円 |
162万5000円超 180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
この基礎控除と給与所得控除の改正(案)がサラリーマンにどう影響するかを見てみよう。安倍進次郎さんの源泉徴収票を例にすると、年収660万円のサラリーマンの給与所得控除は
給与所得控除
2019年まで 660万円×20%+54万円=186万円
2020年から 660万円×20%+44万円=176万円(-10万円)
基礎控除
2019年まで 38万円
2020年から 48万円(+10万円)
となり、給与所得控除が10万円減り(=所得が10万円増え)、基礎控除が10万円増え(所得控除の合計額が10万円増え)、課税所得(=所得-所得控除)に変更はなく納める所得税の納税額は同じだ。源泉徴収票は以下のように変更される。
このように年収850万円以下のサラリーマンには影響はない。影響があるのは年収の高額なサラリーマンと自営業(個人事業主、フリーランス)だ。2013年から給与所得控除の上限額は3回引き下げられ、2020年の引き下げは4回目となる。その変遷は以下のとおり。
年 | 給与所得控除の年収の上限 |
2012年分まで | 上限なし |
2013~2015年分 | 1500万円(控除額上限245万円) |
2016年分 | 1200万円(控除額上限230万円) |
2017年分 | 1000万円(控除額上限220万円) |
2020年分から | 850万円(控除額195万円) |
これに加え2020年に改正予定の所得2500万円を超える人の基礎控除廃止と、2015年から改正された課税所得4000万円を超える人の税率変更(40%から45%)により、高年収のサラリーマンに対する増税はすさまじい。例えば年収7200万円のサラリーマンは、2012年は基礎控除38万円、給与所得控除530万円、税率区分40%だったが、2020年には基礎控除なし、給与所得控除195万円、税率区分45%となるため増税額は300万円弱となる。
年収900万円、1800万円、3600万円、7200万円のサラリーマンが給与所得控除、税率、基礎控除の改正で2012年に対しどれくらい増税になるかをグラフにしてみた。年収の高いサラリーマンほど納税額の増加度合いが高いことが分かる。配偶者控除を受けている人は2018年からさらに増税となる。年収900万円の人は2020年の改正で1万円の増税だが、年収850万円の上限が今後は徐々に下がってくる可能性はある。
最初に紹介した平成27年分の所得階級別の構成割合で、所得1000万円超えの人数は全体の12.8%だが、納税総額は所得税収全体の82.6%を占めているグラフ掲載した。2012年(平成24年)から2015年(平成27年)の推移を見ると、所得1000万円超えの人の納税額の比率は80.5%、81.9%、82%、82.6%と年々比率が上がっている。
高所得者は増税、所得850万円以下のサラリーマンは現状維持。もともと給与所得控除の恩恵がない自営業の人は基礎控除が10万円増え少し減税となる。ただし、e-Taxを使用して申告をしないと青色申告特別控除が65万円から55万円に引き下げられる。2020年分の申告は2021年の2月だ。3年後の確定申告はe-Taxを使用して、これまで同様65万円の控除を獲得しよう。
2024年4月、謎の森林環境税とは?
2024年4月の森林環境税(仮称)は6年後と随分先の話で、唐突に出てきた改正案だ。「平成30年度税制改正大綱」には、国内に住所を有する個人に対して課する国税で、税率は年額1000円。徴収は個人住民税と併せて行うこととし、市町村は都道府県を経由して国に払い込むこ、と記載されている。ザックリ言うと、住民税が年額1000円増税となり、市町村が集めて国が没収する、という新たな税制だ。
読者は自分の住む県が独自の環境税を徴収していることをご存じだろうか。47都道府県のうち38府県(約80%)で、「みやぎ環境税」(1200円)、「やまがた緑環境税」(1000円)、「あいち森と緑づくり税」(500円)などの名称の環境税が自治体独自の超過課税として徴収されている。
新しいところでは2016年から京都府で「豊かな森を育てる府民税」(600円)、大阪府で「森林環境税」(300円)が導入された。京都府、大阪府に籍を置く人は増税されたばかりなので、多くの人が認識しているだろう。
この多くの地方自治体が徴収している環境税と、与党が提案する森林環境税(仮称)の関係がよく分からない。与党が提案した森林環境税(仮称)に統合されるのか、環境税が二重で課税されるのか不透明だ。
これとは別に、住民税には東日本大震災の復興特別税が2014年4月から2024年3月まで、年額1000円が上乗せされている。そう、2024年4月から住民税は年額1000円の減税になる予定だ。あれ、あれあれ。偶然とは思うが復興特別税の10年の課税が終わると同時に森林環境税(仮称)の課税が始まることになる。さらに偶然は重なり税額は年額1000円と同じだ。
一部報道では、復興特別税の徴収が2024年に終わるので、名称をすげ替えて増税を継続するために唐突に提案されたのがこの森林環境税(仮称)と言われている。要するに「復興特別税が2024年で終わるよね」「国民は税金に疎いから復興特別税の存在を忘れてるだろ」「消費税以外の税金は興味も理解もないから、名前をすげ替えてこっそり増税を継続しよう」と生まれたのが森林環境税(仮称)という説だ。
そんなバレバレなことを国民を代表する国会議員や役人が考えるとは思えないので、庶民には思いつかない深い考えがあって提案された税制が、たまたま時期と金額が復興特別税と重なったのだと思われる。他の税制と同様まだ確定ではないので、1人でも多くの国民が関心を持つことが大切だと思う。