更新しました!
住民税が高い/安い自治体はどこ? 差額はいくら?【2024年版 最新ランキング】 名古屋市が住民税の一番安い自治体に!?
全47都道府県+4市を比較してみた
2024年6月28日 11:55
勘違いしている人がいる住民税の地域差。正しい情報を伝えるため2022年から掲載している住民税ランキングの記事を、今年も徹底的に調べて正確な情報をお届けしたい。
住民税は住む自治体によって差がある。ただし、差があると言っても多くの自治体でわずかな差しかなく、引っ越してメリットがあるほどの差ではない。ところが都市伝説的に「愛知県豊田市はトヨタがあるから住民税が安い」「自分の住む〇〇市は住民税が高い(らしい)」などと思っている人は少なくない(特に年配の人)。今回も住む自治体によって住民税がどれくらい高いのか、安いのかを「2024年版 最新ランキング」としてお知らせしよう。
住民税が高い/安いランキング1位の自治体は?「課税所得200万円の人」で比べてみた
住民税の課税所得(課税標準額)が200万円の人の年間の住民税額をランキングで見てみよう。47都道府県に、住民税の高い「兵庫県豊岡市」「神奈川県横浜市」「兵庫県神戸市」、住民税の安い「愛知県名古屋市」を加えた51自治体を住民税が高い順に並べてみた。
事例の課税所得200万円というのは、サラリーマン独身(扶養家族なし)、生命保険未加入で社会保険(厚生年金+健康保険+雇用保険)を65万円とすると、年収は440万円ほどとなる。なお、表の住民税額には森林環境税は含まれているが、調整控除(-2500円~)は含まれていない。また、2024年(令和6年)度限定の定額減税も反映していない。
ほとんどの都道府県内の市町村民税に差はない。市町村まで含めたランキングにすると1700を超えるランキングとなってしまうので、ここでは税額が高い・安いことが知られている一部の市(4市)を加え、やや変則的なランキングとしている。これら4市以外の人は、原則、自分の住む都道府県ごとに税額を参照してほしい。
住民税高いランキング1位は兵庫県豊岡市、2位は横浜市、3位タイは宮城県と神戸市、以下、5位タイは岩手県など6県が並んでいる。
表の「差額」は、住民税を増税していない東京都(を含む41位タイの10都道県)を基準とした場合の差を表している。東京都に比べ兵庫県豊岡市は2800円、横浜市は1700円、宮城県と神戸市は1200円高い。サラリーマンは12分割(平成6年度のみ定額減税のため11分割)して毎月天引きされるので、宮城県や神戸市に住むと東京都より住民税が月額100円高くなる。
一方、住民税が安いのは名古屋市。昨年まで減税を行っていた大阪府田尻町が通常課税に移行したため、住民税の減税を行っている自治体は名古屋市だけとなった。
住民税が安い「名古屋市」の市民として
筆者は自宅マンションが名古屋市内、住民票も名古屋市なので住民税が減税されている。ここ10年ほど筆者は川崎市にオフィス兼住居を借りて仕事をしている。たまたま住民税が高めの神奈川県だ。
名古屋市民は住民税が安くていいことずくめなのかを考えてみた。今、名古屋市民として不満に思うのはマイナンバーカードによる住民票などのコンビニ交付ができないことだ。政令指定都市で唯一、名古屋市だけが未対応。これに関する名古屋市の回答は「コンビニ交付の導入には、システムの改修等が必要となるため、令和6年度に調査を行い、令和8年度中の導入を予定しております」とのことで、2年後にやっと対応される予定だ。
悪い面だけではない。名古屋市民で国民健康保険に加入していると、年に一度「特定健康診査」を無料で受けることができる。SNSで知り合いのライターさんのコメントを見ると自費で診断を受けている人もいて、自治体の差がありそうだ。川崎市は無料だが「令和元年度から無料になりました」と記載されている。筆者は起業した十数年前からずっと無料。健康診断はそこそこ費用が掛かるので、住民税の差は簡単に逆転できる。自営業の人はチェックする価値はありそうだ。
名古屋市の減税は魅力的ではあるが、地元民として土地勘・肌感で思うに、近隣の豊田市、日進市、大府市、東海市、長久手市などから名古屋市内に引っ越せば確かに税金は安くなるが、住居費(アパート、分譲住宅、駐車場など)の増加は減税分を上回る可能性が高い。
価値観は人それぞれだと思うが、筆者自身はトータルバランスで名古屋市は住みやすいと思っている。
住民税の一番高い「兵庫県豊岡市」とは
住民税の一番高い兵庫県豊岡市。初めて自治体の名を聞いた読者がいるだろう。そこには何があるの? なぜ住民税が高いの? そもそもどこにあるの?……疑問にお答えしよう。
日本一住民税の高い兵庫県豊岡市は、兵庫県の北東の端、北は日本海、東は京都府に面した自治体だ。兵庫県で最も面積が大きな自治体で、日本で最後の野生コウノトリの生息地とのこと。人口約7万5000人の市が日本一住民税の高い自治体となった理由は「都市計画税の廃止に伴い、平成21年度から超過課税を適用しています」としたためだ。どういうこと?
家を購入した人は固定資産税と都市計画税を納めていると思う。このうち都市計画税を廃止し、市民税の所得割の税率を6.0%から6.1%に引き上げている。
筆者は毎年4月に納付している名古屋の自宅マンションの「固定資産税・都市計画税課税明細書」を見てみた。土地と家屋それぞれの価格、固定資産税課税標準額、都市計画税課税標準額、税相当額などが明記され、別紙「納税通知書」に固定資産税と都市計画税の納税額が記載されている。
都市計画税の算出根拠は理解していないが、手元にある通知書の都市計画税の金額がゼロ円になるなら、市民税所得割の税率が0.1%増税されても、トータルの納税額は減りそうな印象だ。
豊岡市の住宅事情は知らないが、豊岡市の市民で自宅を購入していて、これまで都市計画税を納税していた人はこの部分が減税、市民税所得割が増税され、減税分の金額が上回っていれば得となる。固定資産税・都市計画税は立地に左右される。例えば駅近の物件で不動産価値が高ければ都市計画税の廃止はかなり美味しい。一方でアパートなどの賃貸物件に住んでいると都市計画税廃止の恩恵はなく増税されるだけだ。大都市圏と比べると地方都市は持ち家の率が高くなるので、この日本一高い住民税という市民税の改正は豊岡市の多くの住民にとってウェルカムかもしれない。
住民税の地域差はネタとしては面白いが、ほとんどの地域で大差はない。一人歩きする住民税の都市伝説を少しでも訂正するため、来年以降も正しい情報をお伝えしたい。そして今回も最後にお願いをしたい。筆者は執筆した記事に対するコメントを全て読ませていただいて参考にしている。住民税に関しては全国1700を超える自治体の情報を調べることは困難なので、読者の中に「自分の住む町は税金安いよ」などの情報をお持ちの人は、X(旧Twitter)などでコメントを寄せていただけると幸いだ。
住民税が高い自治体・安い自治体はどこなのか、差額はいくらなのか――全47都道府県+5市町をランキングにして比較した2022年8月初出の記事をアップデートし、今回、その一部を紹介した。このほか、「都道府県民税」と「市町村税」、「均等割」と「所得割」の内訳なども詳しく比較しているほか、自治体指定ゴミ袋の価格差や無料健康診断といった“住民サービスのコスト差”についても考察。自治体の主要財政指標である「財政力指数」のランキングも掲載している。同記事を未読の方はもちろん、すでに読んだことのある方もあらためて記事全編を読んでいただければ幸いだ。
[目次]
- 住民税が高い/安いランキング1位の自治体は?
「課税所得200万円の人」で比べてみた - 住民税の計算方法――
「都道府県民税」「市町村民税」と「均等割」「所得割」の内訳 - 住民税の差=ほとんどが都道府県の「均等割」の差
-住民税(所得割)の税率を上げている自治体は神奈川県と兵庫県豊岡市の2つ
-住民税が安い自治体は名古屋市のみ - 課税所得ごとに「住民税が高い自治体」をランキング
神奈川県民は高所得者ほど順位が上昇!? - 住民税の差額を指定ゴミ袋の差額が上回ることも
- 住民税が安い「名古屋市」の市民として
- 住民税の一番高い「兵庫県豊岡市」とは
- 裕福な自治体はどこ?
- コラム
-夕張市の税率は?
※「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。関連記事インデックス『サラリーマンと個人事業主の“税金の話”まとめ』よりご参照ください。