【ブロードバンド】
5GHz帯でFWAサービスを展開するには
|
公開実験では、約40メートルの距離を置いて基地局と加入者局のアンテナを設置。動画サーバーから4MbpsのMPEG2映像をストリーム配信するデモが披露された。写真は加入者局側の無線端末 |
スピードネットが4日、報道関係者向けに公開した5GHz帯無線アクセスシステムの電波伝送実験では、実効速度が23Mbpsに達する性能が披露された。しかも、既存の2.4GHz帯システムで通信できるような基地局が見通せる環境ならば、5GHz帯システムも同様に運用可能だという。すなわち、2.4GHz帯の既存基地局の設置された場所に5GHz帯の基地局を併設すれば、同じセル範囲内をそのまま高速化できることになる。
しかし実際にサービスとして展開するには、法制上、5GHz帯無線アクセスシステムを中継回線として利用できないことがネックとなっているのは、先日の本誌記事で紹介した通り。さらに、「チャンネルが少ない」(技術部技術開発グループの郷地元博グループマネージャー)という制約もある。
同社がすでに提供中のサービスで、2.4GHz帯無線アクセスシステムに採用しているのは、IEEE 802.11に準拠したFH-SS(周波数ホッピングスペクトラム拡散)という方式だ。最大速度は小さいものの、チャンネルあたりの占有帯域が狭く、ノイズによる速度劣化も比較的少ない。基地局同士の干渉が抑えられるためセルを密に配置することができ、結果として面的なサービスエリア展開が可能になる。
これに対して今回、実験用に開発された5GHz帯システムは、IEEE 802.11aに準拠した仕様である。IEEE 802.11よりも高速な一方で、1チャンネルあたりの帯域は20MHzと広くなっている。当面の間、無線アクセスシステムとして利用できる5.030~5.091GHz帯では、3チャンネル分しか確保することができないわけだ。
確かに、新たに屋外利用が解禁となった5GHz帯無線アクセスシステムでは5MHzや10MHzといったナローバンドチャンネルの運用も認められており、これならばより多くのチャンネルが確保できる。しかし、スピードネットでは現時点においてそのようなシステムの開発にはまだ着手していないという。やはり最初に実用化できるのは、既存の無線システムとの互換性があり、機器の低価格も期待できるIEEE 802.11a準拠の製品と見ているからだ。
このような制約もあり、来年4月以降に予定している5GHz帯サービスを直ちに「面的に展開するのは難しいかもしれない」(郷地元博グループマネージャー)としている。2.4GHz帯サービスをこれまで通り継続/拡大する一方で、まずは同社のメインターゲットである集合住宅に絞ってスポット的に5GHz帯サービスを追加提供していく方針だ。また、新規エリアについては、5GHz帯のチャンネル事情に合わせて新たにセル配置を行なう方法も考えられるとしている。
◎関連記事
■5GHz帯のFWA、商用化にはさらなる規制緩和が不可欠か
■5GHz帯無線アクセスシステム、普及のカギは“ナローバンド”?
(2002/10/8)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]