【ブロードバンド】
5GHz帯無線アクセスシステム、
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スペクトラムアナライザーで実験場所の電波状況を見ると、1チャンネル分にあたる5.030~50.50GHzに電波が出ているのが確認できた。実験用のシステムでは、この20MHzのうち約17MHzを占有する。なお、写真は実効速度を測定するために帯域を最大限使っている状態。4Mbps程度の動画ならば、このうち一部の帯域だけが使用されていた |
スピードネットの5GHz帯無線アクセスシステムの電波伝送実験の様子を伝えた先日の本誌記事では、この周波数帯を使ったサービスを面的に展開するのは難しいという同社の見解を紹介した。開発中のシステムがIEEE 802.11aに準じたものであり、1チャンネルで20MHzという広いバンド幅を使うためである。事実上3チャンネルしか確保できず、基地局が互いに干渉しないようにするには設置間隔を離さなければならないのだ。
一方、国内で解禁された5GHz帯無線アクセスシステムでは、5MHz幅や10MHz幅の“ナローバンド”チャンネルの使用が認められており、こちらのシステムを導入すれば、より多くのチャンネルを確保できる。結果として基地局の密度を上げることができ、面的なサービス展開も可能になる。伝送速度が20MHz幅の20Mbps以上よりは小さくなってしまうものの、それでも5MHz幅で5Mbps以上、10MHz幅で10Mbps以上と規定されている。
ところがこういったナローバンド仕様は、今のところ国内独自の規定だ。IEEE 802.11a規格を流用することで期待できるであろう、早期の機器開発と低コスト化というメリットが薄れてしまう。スピードネットもそのあたりをふまえて、まずはIEEE 802.11aに準じたシステムの開発にとりかかった。
ところで、5GHz帯無線アクセスシステムの技術的条件を審議した総務省の情報通信審議会が5月にとりまとめた報告書によると、2007年には同周波数帯を利用したサービスのユーザーが492万9,000人に達するという需要予測が示されている。屋外利用開放から1年あまりの2003年でも、45万4,000人というかなりの伸びが期待されている。
しかしこれは、住宅などを対象としたFWA(Fixed Wireless Access)だけではなく、ホットスポットなどのNWA(Nomadic Wireless Access)も合わせた数字だ。具体的には、2003年のNWAユーザー数が、ポータブルPCで35万人、PDAで7万1,000人。合計42万1,000人となり、FWAユーザー数の3万3,000人に対して10倍以上の規模となっている。2007年も同様の傾向で、ポータブルPCが345万1,000人、PDAが111万4,000人となり、NWA合計では456万5,000人。これに対してFWAは36万4,000世帯に止まる。
スピードネットの2.4GHz帯を利用した既存サービスの加入世帯比率を見ると、集合住宅ユーザーが7割近くに達する。このことからうかがえるように、有線系サービスの導入に制約のあるような集合住宅などにおいては、確かに5GHz帯FWAの需要は見込まれるだろう。しかし総務省では、5GHz帯無線アクセスシステムは今後の需要は、NWAのほうがメインになると見ているわけだ。
4日、報道関係者向けに公開された実験の場でスピードネットは、現行のFWAだけでなく、NWAの事業も視野に入れていることを示した。ただし、5GHz帯を導入するかどうかは今のところ明らかにしていない |
実は国内の5GHz帯無線アクセスシステムに独自に盛り込まれたナローバンド仕様は、チャンネル数が必要になるFWAの面的サービス展開に配慮しただけでなく、これらNWAサービスでの利用を想定して盛り込まれたものだ。伝送速度を抑える代わりに消費電力も少なくできるナローバンドチャンネルのシステムを、PDAなどの携帯端末で採用できるようにしたわけである。審議会の検討委員会に参加した大手PDAメーカーからも要望があった模様だ。
5.2GHz帯のIEEE 80211.aの存在があるせいか、どうも2.4GHz帯の高速版というイメージがついてまわる5GHz帯だが、この周波数帯の最たる特徴は「(2.4GHz帯と違って)通信事業者向きのクリーンなバンド」(スピードネット技術部技術開発グループの郷地元博グループマネージャー)であること。たとえ36Mbpsなどという最大速度が出なくとも、この周波数で無線アクセスサービスが受けられるメリットはあるのだ。
日本独自の仕様がどこまで普及するかはわからないが、報告書によれば、バンド幅は「変調方式にOFDMを採用した場合、クロック周波数の分周によって容易に変更することが可能」だという。ナローバンドへの対応が、FWAもNWAも含めて、5GHz帯無線アクセスシステムの普及のカギになりそうだ。
さて、このようなナローバンド仕様が標準化されれば、5GHz帯のFWAとNWAでローミングサービスが実現する可能性もあるだろう。実際、2.4GHz帯での話だが、スピードネットでは東京電力と共同でホットスポットサービスの実験も開始している。これはユーザー認証などの検証を目的としたもので、スピードネットのFWAユーザーが同じアカウントでホットスポットに接続できるといった実験も行なわれる。同社では今のところ具体的に計画を明らかにしているわけではないが、5GHz帯でそういったサービスが実用化されることも十分に考えられる。
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(2002/10/10)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]