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【特集】

標準化を待たずに使える“日本語ドメイン名”
VeriSign GRSのIDN普及作戦あの手この手

 インターネットユーザーで、いわゆる“中国語ドメイン名.com”や“日本語ドメイン名.jp”など、英数字以外の文字で表わされた「国際化ドメイン名(Internationalized Domain Names:IDN)」を使ったことのある人がどれだけいるのだろう? この技術が標準化されていない現時点では、Internet Explorler(IE)などの主要アプリケーションから利用できないということで、一般的に使える環境が整っていないからだ。

 しかし、2000年秋に米VeriSign社のGlobal Registry Services部門(VeriSign GRS)が登録サービスを試験的に開始してからそろそろ2年半が経つ。「.com」「.net」「.org」における登録数は100万件近くに達し、そのうち日本語ドメイン名だけでも約18万件存在する。さらに、翌2001年春に日本レジストリサービス(JPRS)が開始した“日本語ドメイン名.jp”も、今年に入って5万件を突破している。決して少ない数ではなく、特に日本のユーザーにとってはお目にかかることがあってもおかしくないはずである。

 今回の特集では、VeriSign GRSのNeil Edwards副社長へのインタビューを中心に、日本語ドメイン名をはじめとするIDNの利用環境について動向をまとめてみた。実は現時点でもIDNで運用されているWebサイトは存在し、これにアクセスする手段も用意されているのだ。

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■国際化ドメイン名を今後3年で1,000万件に~VeriSign GRSがサービス強化
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0116/veris.htm
■JPドメイン名の累計登録数が50万件を突破
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0107/jprs.htm

●登録されたIDNの多くは“塩漬け”状態
VeriSign GRSのNeil Edwards・Internationalized Naming Systems担当副社長

 Edwards副社長によれば、登録数が100万件近いとはいえ、「今のところ、その多くはアクティブではない」。もちろん、同社がネームサーバーのホスティングサービスを提供しているわけではないので、登録された個々のIDNがアクティブかどうかを正確に判別することはできないが、「Webサイトで運用されているのは、20%くらいではないか」と指摘する。

 登録サービス開始当初はあれだけ騒がれたIDNだが、当時は間近いとされていたIDNの標準化作業に時間がかかり、登録はしても実際には使えない状態では当然のことだろう。

 そこでVeriSign GRSでは2001年6月、IEに搭載された検索機能と米RealNamesのインターネットキーワードサービスを組み合わせた暫定的なアクセス手段を提供。これに続いてJPRSもRealNamesと提携して同様のサービスを開始し、IDNを扱うレジストリとして“塩漬け”状態への不満を解消しようとした。

 ところがこれは、最大シェアを持つとはいってもIEという特定のWebブラウザーに依存したサービス。そもそもDNSとは別の擬似的な手段であり、根本的な解決とは言えない。それどころか、翌2002年にはRealNamesの営業停止によってサービス中止に追い込まれてしまう。

 そんな中、IDNの利用環境の普及を目指してVeriSign GRSがとったのが、次に説明する2つの方法である。

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■米VeriSign、独自の方法で多言語ドメイン名を実現
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■日本語汎用JPドメイン名によるIE向けウェブアクセスサービスが終了
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0516/jprs.htm

●プラグインソフトでIDNに対応する「i-Nav」

 IDNの仕組みを簡単に言えば、英数字以外の文字列を、英数字からなる文字列(ASCII文字列)に変換してネット上でやりとりするというものだ。この変換をWebブラウザーやメールソフトなどのアプリケーション内で行なうことで、既存のDNSプロトコルでも漢字などをドメイン名としてやりとりできるようにしている。

 例えば、VeriSign GRSやJPRSのIDNで仮に用いられているRACE(Row-based ASCII Compatible Encoding)という方式では、「日本語ドメイン名試験.jp」は「bq--3bs6kzzmrkpdbsjq4eykimhtkqgyuzu2cm.jp」といった具合に変換される。識別子「bq--」により、もともとASCII文字例のドメイン名と区別している。

 VeriSign GRSではまず、この変換機能などを既存のインターネットアプリケーションに追加するプラグインソフト「i-Nav」を用意した。同社がレジストリとして管理するgTLDだけでなく、「.jp」「.kr」「.cn」「.tw」「.ru」といったccTLDのIDNもサポートしており、JPRSもパートナー企業として2002年10月から配布を開始した。

 Edwards副社長はi-Navの普及状況について、「厳密ではないが、これまでのダウンロード数は100万件を超えている。毎日、数万件のダウンロードがあり、世界中で活発に動いている」と述べる。

VeriSign GRSの「i-Nav」ダウンロードサイト JPRSの「i-Nav」ダウンロードサイト

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■日本語ドメインはいつから“使える”のか?
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0528/idn.htm

●DNSの拡張でIDNに対応する「Web Based Navigation」
VeriSign GRSの「Internationalized Domain Name FAQs」

 i-Navでは、WebブラウザーのURLバーだけでなく、履歴やブックマーク、さらにはメールソフトやアドレス帳などでもIDNが入力/表示できるようになるため、一見すると便利そうである。しかし、対応しているアプリケーションソフトがIEやOutlook Expressなどに限られる上、ユーザーがわざわざインストールしなければならないという点が致命的だ。

 そこで、VeriSign GRSが次に用意したのが、1月16日に日本でも公式にアナウンスされたばかりの「Web Based Navigation」というシステムである。Webアクセスのみに限定されるが、Edwards副社長は「どんなWebブラウザーからでも利用できるサービスを1月3日から開始した」と自信を見せる。

 このシステムは、DNSサーバー側の拡張機能により、IDNで運用されているWebサイトへのナビゲーションを実現するものである。IDNに対応していない多くのWebブラウザーが、非ASCII文字列からなるIDNのURLをそのままDNSサーバーに問い合わせてしまうという性質を利用。IDNと思われる非ASCII文字列でクエリーがあった場合、DNSサーバーが、VeriSign GRSが運営する「Web Navigation Servers」のIPアドレスを返してくる仕組みだ。

 その結果、ユーザーのWebブラウザーにはWeb Navigation Servers上のページが表示。そこでユーザーにi-Navプラグインのダウンロードするか、それとも登録されている可能性のあるIDNのWebサイトにリダイレクトするか選択してもうらうようになっている。

 VeriSign GRS自身がIDNのプロモーションのために用意した「英語いらず.com」やグローバルメディアオンラインの運営するレジストラ「お名前.com」をはじめ、「理容ナカムラ.com」「きくどら.com」「おもしろラジオジャパン.com」などの国内企業のほか、中国語や韓国語、デンマーク語、スペイン語、スウェーデン語などのIDNですでにいくつかアクティブになっているWebサイトがあるという。Webブラウザーや経路途中のDNSサーバーによっては通らない場合もあるようだが、上記のようなIDNで実際にWebにアクセスできることが確認されるはずだ。Edwards副社長によれば、「Web Navigation Serversには、毎日100万件単位でクエリーが来ている」という。

例えば「英語いらず.com」などのIDNでWebサイトにアクセスしようとすると、Web Navigation Servers上のi-Navプラグインのダウンロードを促すページが表示される i-Navをダウンロードしなければ「英語いらず.com」にリダイレクト。WebブラウザーのURLバーにも日本語ドメインのまま表示されている
●Web Based Navigationには技術的な懸念も
ICANNの「Advisory Concerning VeriSign Announcement of Changes to .com and .net Nameserver Behavior」

 プラグイン不要でIDNのWebサイトにアクセスできるということで、一見便利なWeb Based Navigationだが、実は問題が指摘されている。「非ASCII文字列の8bitデータをIDNであるとみなすような振る舞いをDNSにさせることが、DNSの一貫性を損なうのではないか」(IDNに詳しい技術者)という懸念だ。DNSでは、存在しない名前は「存在しない」と応えることが望まれるためである。

 この点についてEdwards副社長は、「DNSの機能を拡張したといっても、DNSそのものを損なうものではないと考えている」と説明するが、事態は、IAB(Internet Architecture Board)にアドバイスを求めた上でICANNが1月6日、勧告というかたちでWeb Based Navigationに対する懸念を表明するまでに発展した。

 もうひとつ、Web Based Navigationに関して留意しておかなければならないのは、i-Navとは異なり、「.jp」や「.kr」のIDNはサポートしていない点だ。同サービスがDNSサーバーの機能拡張を前提としているためであり、これはVeriSign GRSの管理下にある世界13カ所のサーバー拠点にしか施されていない。すなわち、「.com」と「.net」のゾーンにしか対応しない。

 もちろん、JPRSと提携して「.jp」のサーバーに同様の機能拡張を施せば対応できるわけだが、Edwards副社長は「JPRSでは、ユーザーに提供するサービスとして、プラグイン方式が選ばれたということだ。要請があれば、Web Based Navigationの技術を提供していく準備はある」と述べるに止まっている。JPRSはi-Navの配布などで提携しており、ユーザーの利便性という観点からだけ考えれば採用しても不思議はない。

 しかし、IDNの標準化にあたってIETFは、DNSを含むインターネットのインフラに影響を及ぼさないことを最優先課題として検討してきた経緯がある。したがって、IDNに関連する技術コミュニティの中にも、今回のWeb Based Navigationについて「特定のTLDに依存して挙動が異なるサービスが実現されてしまうことへの懸念がある」(先述の技術者)としており、そうである以上はJPRSとしても慎重にならざるを得ないのだろう。

●IEが対応するまでは待つわけにいかなかった

 VeriSign GRSではこのように、IDNを広く使えるようにするために、標準化を待たずに使える技術を提供しているわけだが、「最終的にはIEが対応してくれることがベスト」だということは、Edwards副社長も大いに認めるところである。

 MicrosoftとはIDNの進捗状況に関してブリーフィングするようにしており、「MicrosoftからIDNサポートが発表されるのを心待ちにしている」という。また、Netscapeとも話し合いが進んでおり、「いずれNetscapeでも実装されることを目指している」。

 ただし、Edwards副社長は「Microsoftの製品開発サイクルは1年から2年。すべてのエンドユーザーにIDN対応ブラウザーが浸透するのは、そのくらいの時間がかかる」と見ており、VeriSign GRSとしては「ユーザーをあまり待たせたくない」。Microsoftを待っているだけではなく、i-NavやWeb Based Navigationを開発するに至った。

 「我々はこの半年で、少し考え方を変えた。とにかく標準に準拠していればよいというだけではなく、やはり本当にユーザーが必要としている技術を提供していくべきという認識に立った。特にWeb Based Navigationについては、どこかのお墨付きを得なければ提供できないというサービスではない。お客様にとってためになるものであれば提供していく考えだ」。

 その一方でEdwards副社長は、「もちろん、ユーザーにとってためにならないことはやらない」とも強調する。「我々は、標準も守っていきたいと思っている。技術団体の方々が少しでも懸念をお持ちであれば、対話する姿勢をとっている」としており、ICANNの勧告を受けてVeriSign GRSでは、すでにIABと話し合いを持ち、そこで指摘された変更すべき点について「それをどのように実装していくかを検討しているところだ」としている。

●IDN登録者の契約更新時期にも配慮?
16日に東京都内で行なわれた記者会見では、グローバルメディアオンラインやPSI-Japanなどの国内のgTLDレジストラが列席してIDNの可能性をアピールした。写真は、「よいしょー」のかけ声とともに餅つきでその意気込みを表わす(?)VeriSign GRSのRussell Lewis上級副社長兼ゼネラルマネージャー

 それにしてもなぜ、今まさにIDNがRFCとして標準化されようとしているこの時期に、VeriSign GRSはわざわざWeb Based Navigationのようなサービスに踏み切ったのだろうか?

 実はVeriSign GRSが提供している「.com」と「.net」のIDNは、3月に最初の更新時期を迎える(本来なら2001年11月だが、無料延長を繰り返している)。

 当初、サービス開始当初に登録が殺到したIDNだが、これは社名や商品名など商標保護の意味あいが大きかったと思われる。しかし現在では紛争処理プロセスなども確立されてきており、一般的な環境からはアクセスできないようなIDNを取得しておく必要は薄れてきていると言えるだろう。取得するのは、IDNが標準化され、対応アプリケーションが浸透してきてからでも遅くないのだ。

 そうなれば、3月の更新時期にかなりのIDNが契約を終了する可能性がある。そうならないためにも、「(Web Based Navigationなどにより)IDNが実際に使えるのだということを示すために、更新時期の前に開始したという配慮は確かにある」(Edwards副社長)。

 ただしそれだけでなく、同社がWeb Based Navigationを開始したのは、逆にIDNがRFC化されることが見えてきたとからこそだとEdwards副社長は強調する。

 当初の見込みより大きくずれ込んでいたIETFにおけるIDNの標準化作業において、昨年12月から今年1月にかけて大きな動きがあった。Edwards副社長は、「3つあるRFCのうち2つが最終的に標準として承認され、残る1つについても今後3週間から6週間で承認される見込みとなっている。『IDNが世界のユーザーから使える時期がきた』として、今回の提供に踏み切った」と述べている。

 また、「VeriSign GRSからのIDNに関する発表はこれで終わりというわけではなく、2月から4月にかけても予定している」としており、IDNを使える環境の普及に向けて、VeriSign GRSの繰り出すあの手この手はまだ続きそうな気配である。

(2003/1/20)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]

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