【イベントレポート】
2006年までにインターネットITSでビジネス展開を目指す■URL
IICは、2002年10月29日に慶應義塾大学やトヨタ自動車などが中心になって設立されたITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)の実現を目指す団体。現在112社が参加しているほか、官・学の協力を得てインターネット自動車社会の実現を目指している。 IICの時津事務局長は、「2006年までにインターネットITSをビジネスとして成立させたい。今日、携帯電話やカーナビなどが充実し、また多くの会員の支援を受けているバックグラウンドがある以上、2006年までに必ずビジネス社会を実現できると思う」と語った。また、これまでの官の支援を受けた実証実験から、民間主導の実験へと移行する方針で、「官には、民間が作り出した仕組みを有効利用する形で参加してほしい」とコメントした。 ●10億台の車が10億ノードになるインターネットITS社会村井教授は「我々が挑戦しなくてはいけないものは何か」をテーマに基調講演を行なった。「将来、10億台の車が走っていれば、それは移動する10億ノードが存在することになるはずだ。バッテリー技術や液晶技術の向上によって、未来社会では人間が移動するところにインターネットのノードが存在する、人間中心的なネットワークが構築されるべき。現在、足りないものは通信の分野だ」と語る。また、日本の携帯電話の進歩に触れ、「日本の携帯技術の進歩がインターネットのモビリティを促進している。インターネットが設計された時、コンピュータは移動しないものとして設計された。これからのインターネットの基盤はモビリティが中心になり、むしろ固定のものが例外になる」と予測する。 村井教授はインターネットの特性を「何にでもつながるし、何ででもつなげることができるもの」と定義する。「インターネットのメリットは足まわりを共有できること。その上で動作するアプリケーションの開発のコストや負担を下げることができる。例えば電話回線を考えてみれば、世界の人口が60億人だとすれば30億回線を用意すればいい。これは、インターネット回線全体の微々たる帯域に過ぎず、インターネット電話で課金することなどできない」と語る。 さらに、「ユーザーは移動するにつれてネットワークの接続先が変更されていても、それに気づきたくないという要求がある」とし、村井教授は「これを実現するための技術はすでに10年前から存在している」と語る。その技術とは「MobileIP」であり、「IPアドレスが足りないことだけがネックだった」と語る。つまり、IPv6社会が実現することで、MobileIPが本来の役割を果たすことができるのだ。 ●脱サイバースペースへインターネット空間はときどき、「サイバースペース」と呼ばれることがある。村井教授も「インターネットの発展は、現実の場所や位置を無視することで成長してきた側面がある」と指摘する。しかし、「これからは、現実の位置情報をインターネットと組み合わせることで新たなビジネスが成立する」として、「GLIシステム(地理位置情報システム)」の実験を積極的に推進していくという。GLIシステムではないが、似たような実験としてマンハッタンでは、タクシーが走行している場所や時間によって、表示する広告を切り替える試みを行なっているという。村井教授は「本来なら、この手の実験は日本が得意とするジャンルだし、日本が先にやらなくてはならない。非常に悔しい」とコメントした。 しかし、現在のGPSを使ったインターネットITSの実験では、どうしても衛星を捕捉できずにエラーとなってしまう場所が存在する。これをどのように解決していくかがこれからの課題であり、その解決方法の1つとして「準天頂衛星」を紹介した。準天頂衛星は、仰角70度の方角に静止する衛星で、GPSの苦手とするビルの陰などで発生する電波の遮断を軽減することができるという。 最後に村井氏は、「本当に何でもつながる空間」に必要なものをいくつか列挙した。それは、無線インターネットの定額化、インターネットローミング機能としてのMobileIPの普及、現在よりも安定的な位置情報空間の確保、ITSサービスのビジネスモデルの確立、および携帯電話サービスなど広義なモバイルサービスとの連携などだ。そして、もっとも必要としているものとして「お金が実際に儲かるという成功事例が欲しい」と語る。さらに、「IPv6といえば、世界の中でも日本が一番進んでいる。そのため、日本の技術者がもっと積極的に世界に出て行く必要がある」とハッパをかけた。
◎関連記事 (2003/6/5) [Reported by okada-d@impress.co.jp] |
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