先週は「Web 2.0 Expo San Francisco 2008」が開催され、ティム・オライリー氏やMicrosoft、Google、Yahoo!など主要各社の発表内容などをINTERNET Watchでもレポートしました。
国内のニュースとしては“青少年インターネット規制法案”に関連したものが目立ちました。マイクロソフトやヤフーらネット業界大手が合同で反対意見を表明。さらに、健全サイト認定の第三者機関設立の動きや、総務省の検討会からの中間報告もありました。「携帯サイトのフィルタリングに続いて、さらに規制法案?」と思ってしまう方も多いのではないかと思いますが、こうした動きについて後半で解説します。
◆Windows Vista SP1の自動更新による配布、日本国内では5月9日から
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/24/19354.html
4月24日、日本国内におけるWindows Vista SP1の自動更新による配布を5月9日から開始するとの発表があった。約570の更新プログラムが含まれる。
◆「Twitter」日本語版公開、日本独自で広告配信も
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/23/19338.html
4月23日、デジタルガレージと米Twitterはミニブログサービス「Twitter」の日本語版(PCサイトのみ)を公開。あわせて日本語版に広告を挿入した。Twitterはこれまで英語版のみ提供されてきたが、米国外のトラフィックのうち約4割が日本からだったという。
◆公正取引委員会、JASRACに独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/23/19335.html
4月23日、公正取引委員会は独占禁止法違反(私的独占)の疑いでJASRACに立ち入り検査を実施。同協会が放送事業者に対して結んでいる契約が、他の事業者の参入を制限していると判断したと見られる。
◆マイクロソフトやヤフーら5社、“青少年ネット規制法案”に反対表明
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/23/19337.html
4月23日、マイクロソフト、ヤフーら5社は合同して、複数の政党で検討されている“青少年インターネット規制法案”について反対意見を表明。全国高等学校PTA連合会会長も出席し、保護者の意見が無視されていることに遺憾の意を表明した。
◆Skype、わかりやすい3種類の定額プランを発表
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/22/19316.html
4月21日、Skypeは、世界の固定電話に対する通話が定額になる料金プランを発表。日本のユーザーは「1か国限定プラン(695円)」「アジア限定プラン200(895円)」「世界中どこでもプラン(1,495円)」の3種類を利用できる。
● “青少年インターネット規制法案”とは? 事業者や有識者は反対意見を表明
未成年者のインターネット利用を規制しようという“青少年インターネット規制法案”が自民党と民主党の一部議員の間で検討されており、これに対してインターネット事業者や有識者などが反対意見や慎重意見を表明しています。
ネットを規制すべし、という意見が出る背景には、大々的に報じられたいくつものインターネットに絡んで青少年が被害を受けた事件があります。2007年夏には「学校裏サイト」が大きな原因と見られる高校生の自殺事件がありました。この頃に「裏サイト」「プロフ」といった言葉を初めて目にし、報道されたその内容を見て「こんなことになっているのか!」と目を剥いた方も多いのではないでしょうか。未成年者が出会い系サイトを通じて被害に遭う事件なども枚挙にいとまがなく、何らかの対策は講じられてしかるべきという考えになるのは自然なことだと言えるでしょう。
こうした状況に対しては、これまでにも携帯・PHSのフィルタリング義務化や出会い系サイト規制法といったルールが作られてきました。さらに出会い系事業者の届け出義務化提言、携帯コンテンツの審査団体発足などもあり、先週は違法・有害情報に関する検討会の中間報告、健全なサイトを認定する第三者機関設立など、対話、研究、自主規制などの動きが各所で始まっています。
“青少年インターネット規制法案”は、その具体性に欠ける点や実現性に乏しい点、また、「規制してしまえば良し」という発想の安易さなどが各方面から指摘されています。
4月9日にはMIAUが懸念を表明。有害情報の判断基準に問題があること、プロバイダーに義務づけられる対策内容が不明瞭な上に広すぎること、技術上の問題があること、知る権利の侵害にあたること、教育視点の欠如――といった7つの問題点を指摘しました。
また4月12日には、MIAU、WIDEプロジェクト、多摩大学情報社会学研究所など12の団体・個人が共同で反対声明を発表。青少年の保護や犯罪防止のための努力は重要であると前置きした上で、強引な規制は検閲に繋がりかねず、コンテンツビジネスを萎縮させてしまう、などの指摘を行なっています。そして、教育による情報リテラシーの向上と、民間事業者による自主規制の強化による対応を提案しました。
そして先週、4月23日には、インターネット事業者5社が反対意見を表明。マイクロソフト、ヤフー、楽天、ディー・エヌ・エー、ネットスターの5社がそれぞれに自社の取り組みを紹介し、進みつつある民間の取り組みに対する後押しを要請しました。
5社の会見には全国高等学校PTA連合会の会長も出席。2007年に初めて携帯フィルタリング義務化の話を聞き、「なぜ保護者側の意見を聞かずに話を進めているのかと驚いた」とエピソードを紹介しました。また、保護者の意見が反映されない法規制には反対とし、「一律にフィルタリングという蓋をしてしまうのではなく、保護者や教員のリテラシーを高めることが重要。事業者の責任を言うなら、買い与えた親にも責任がある」と語っています。
2007年末には、欧州委員会においてメディアリテラシーの問題は「コントロールよりも教育が重要」との認識が発表されています。インターネットや青少年の身近にいる人たちの意見も、この認識とほぼ重なるようです。安易で一方的な規制は、青少年やインターネットから遠く離れた場所にいる人たちのモヤモヤを解消するかもしれませんが、実際に現場にいる人たちを、誰も幸せにはしないでしょう。
2008/04/30 12:05
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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