先週は「クラウドコンピューティング」に関するニュース、「クリエイティブ・コモンズ」に関連したイベントのニュースがありました。「クラウドコンピューティング」とは、PC内や企業の限られたネットワーク内でなく、インターネット全体のコンピュータリソースを利用していくという考え方。また、「クリエイティブ・コモンズ」は、著作権者が全ての権利を保留し続けるのでなく、インターネットを通じて一部を開放することで新たな創造を促そうという考えに基づいています。
両者には、インターネットの存在を前提とした新たな利用形態であること、従来の価値観・固定観念を大きく変える可能性があること、現在芽を出し育ちつつある段階であることなど、いくつかの共通点が見られます。どちらも注目し続けていきたいテーマです。
◆Google出身者らが“世界最大”のサーチエンジン「Cuil」公開
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/29/20406.html
7月28日、元Google社員らが立ち上げた米Cuilは、新しい検索エンジン「Cuil(クール)」を公開。1200億ページをインデックスしており、世界のどのサーチエンジンよりも3倍以上大きいインデックス数だという。ちないに、GoogleはCuil公開の直前に同社のブログで1兆以上のURLを把握している(全部をインデックスしているわけではないが)と述べている。
◆HP、Intel、Yahoo!がクラウドコンピューティング研究で提携
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/30/20422.html
7月29日、HP、Intel、Yahoo!の3社は、クラウドコンピューティングの研究・教育のためのオープンソーステストベッドを創設するために提携したと発表した。イニシアティブにはシンガポール情報通信開発局、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、独カールスルーエ工科大学も加わり、利用希望の世界中の研究者を年内に選別した後、利用開始になる予定。
◆ニコ動で1回目の「ニコ割アンケート」実施、8万人以上が回答
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/30/20419.html
7月29日の午後9時30分、ニワンゴは「ニコニコ動画(夏)」にて、特定時刻に閲覧中の全ユーザーに向けて情報を配信できる「ニコニコ割り込み(ニコ割)」機能を使ったアンケートを実施した。実施時間は90秒で、8万6225人からの回答があった。結果は50分後に動画で発表された。
◆アッカ、イー・アクセスと業務提携でイー・アクセスの子会社に
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/31/20448.html
7月31日、アッカ・ネットワークスとイー・アクセスは事業統合に向けた戦略的資本・業務提携について合意。アッカはイー・アクセスの連結子会社となり、ADSL事業者として22%のシェアを持ち業界2位となる。イー・アクセスは2008年1月にアッカの筆頭株主となっていた。
◆2ちゃんねるにIPv6ユーザーのみ書き込める「IPv6@2ch掲示板」
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/07/28/20397.html
7月27日、2ちゃんねるはIPv6で接続しているユーザーだけが書き込める「IPv6@2ch掲示板」を開設した。これはライブドアと未来検索ブラジルによるIPv6ネットワークを使ったコンテンツ配信実験の一環。IPv4ネットワークからでも閲覧は可能となっている。
● 「iCommons Summit'08」で復習する著作権関連ニュース
INTERNET Watchでも数々の著作権関連のニュースをお伝えしていますが、表現物の複製や流通が容易でなかった時代に作られた法律に基づいてビジネスを続けたい権利者側と、「コピーが容易、かつ劣化しない」「インターネットを通じて簡単に共有できる」といった新しいツールのメリットを最大限に享受したいユーザー側とが対立する構図が、あちこちに生まれています。
そうした中、クリエイティブ・コモンズを中心にインターネット文化について語り合おう、というイベント「iCommons Summit'08」が、札幌で開催になりました。世界中から参加者が集まる中で、日本の著作権関連ニュースのキーパーソンの多くも出演しています。最近の著作権関連の話題を、iCommons Summitのレポートから復習しておきましょう。
「ダビング10」や「iPod課金」等の震源地である私的録音録画小委員会の委員であり、「ダウンロード違法化」問題をきっかけに設立されたMIAUの発起人でもあるジャーナリストの津田大介氏は、「自由文化と著作権政策」シンポジウムに出席。「これまでは権利者・権利者団体の要望だけを聞き入れてきたが、これからはユーザーやメーカー、インフラ業者などすべてのプレイヤーの声を聞いた、総合的な著作権制作に転換すべき」とコメントしました。
こうした問題意識は、「米国で制定された著作権延長法はディズニーの意を受けたもの」と批判するローレンス・レッシグ教授の意見とも重なるものだと言えそうです。
日本ではクリエイティブ・コモンズが普及しているとは言い難い状況である一方で、新しい著作権ルールの実践として、独自の試みが行なわれつつあります。先日「ニコニコ動画(夏)」で新しい著作権ルール「ニコニ・コモンズ」を発表したニワンゴは、「ニコニ・コモンズ」の概要を説明。「クリエイティブ・コモンズは法的規約という比較的厳しいルール。ニコニ・コモンズは素材を集めて自由に使ってもらえる柔軟なルールとなっている」と述べました。
「初音ミク」がブームとなっているクリプトン・フューチャーメディアは「オープンビジネスの可能性」というテーマで講演。同社の投稿サイト「ピアプロ」について紹介し、「二次創作を可能とすることで、コラボレーションや自己実現を後押ししたい」としています。
2008/08/04 11:12
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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