先週は、火曜日に以前から予定されていた「はてなブックマーク」のリニューアルがあり、木曜日には「mixi」の今後の方針についての発表がありました。mixiについては、「mixiアプリ」や「mixi Connect」によって海外のSNS「Facebook」のような環境が生まれそうな点も楽しみですが、多くの方にとって驚きだったのは年齢制限の引き下げと登録制(招待がなくても登録可)の導入でしょう。
また先週は、Googleマップの「ストリートビュー」がリニューアル。以前から指摘されていたプライバシー問題に関連し、報告フォームのリンクがわかりやすくなりました。一方で、この問題について日弁連は緊急集会を行っています。後半では、この「ストリートビュー」とプライバシー問題関連を整理します。
◆mixi、年齢制限を15歳に引き下げ。2009年春に招待制から登録制へ
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/27/21677.html
11月27日、ミクシィは「mixi」の今後のサービス展開について発表。アプリ開発環境「mixiアプリ」「mixi Connect」の提供と、12月10日より利用年齢を15歳まで引き下げ、2009年春には招待がなくても登録できるようにすることを明らかにした。また、さらなる年齢制限緩和や家族向けサービスなどの見通しも示した。
◆Google「ストリートビュー」刷新、画像削除依頼もわかりやすく
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/26/21652.html
11月26日、グーグルは「ストリートビュー」のインターフェイスを刷新。Googleマップとストリートビューの切り替えをスムーズにし、デフォルトの表示サイズを大きく。ストリートビュー内の操作性も向上した。また、不適切な内容を報告するフォームへのリンクをわかりやすく変更している。
◆児童ポルノの閲覧をISPが一律ブロック、2009年度に実証実験を
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/28/21674.html
11月27日、総務省「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」は「『安心ネットづくり』促進プログラム」最終とりまとめ案を公表。パブリックコメントを12月17日まで募集する。誰もが参加できる「国民運動」として民間主導での取り組みを基本としつつ、児童ポルノに関しては受信側ISPが接続を一律遮断する「ブロッキング」を提案した。
◆「はてなブックマーク」新バージョンが正式公開
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/25/21636.html
11月25日、はてなは「はてなブックマーク」新バージョンを公開した。11月6日からベータ版として公開されていたもので、他ユーザーのブックマークから情報をフィルタリングする「お気に入り」機能の強化、ブックマークした記事の検索機能の強化などが盛り込まれている。
◆Yahoo!年間検索ランキング、「YouTube」が1位で「mixi」を上回る
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/11/25/21635.html
11月25日、ヤフーは「Yahoo! JAPAN」の2008年年間検索ランキングを発表。2006年から2年連続で1位だった「mixi」を「YouTube」が抜いた。同サイトではその他、著名人ランキングや専門検索ランキングなどを公開している。なお、27日にはgooが年間検索ランキングを発表。こちらの1位は「yahoo」で、2位に「YouTube」が入っていた。
● プライバシーに配慮してリニューアル!? ストリートビューとマイマップ問題
日本版のGoogleマップに「ストリートビュー」機能が加わったのは2008年8月5日のこと。東京、大阪など主要都市近郊の、路上から撮影した360度のパノラマ写真がGoogleマップ上で閲覧可能になりました。
グーグルは同日に説明会を実施し、撮影は公道からに限っている、日本版の解像度では車のナンバープレートなどは読めないと思われるため、人の顔にのみ自動的なぼかし処理を行っている、不適切な画像は報告があれば削除する、といったコメントをしました。
しかし、実際にはナンバープレートの読める画像があったり、個人宅の様子が精細に映されすぎているなど、問題の指摘が多発。ネット上の調査で約7割がプライバシーに不安を感じているという結果が出たり、8月末にはユーザー団体「MIAU」のシンポジウムが実施されたりしています。
こうした中で、米Googe法務担当は9月に「新しいサービスについてはリスクやクレームが付きものだが、それらがすべて事前にわかるわけでもない」などとコメント。「ストリートビューは意見をもとに改善していく」としました。
Googleは「すべての情報を整理しつくし、世界中からアクセス可能にする」という理念を持っている企業で、情報は何でもオープンにすべきと考えているようです。ですからストリートビューの映像もオープンで、問題が指摘されてから削除すればよい、という方針です。しかし、実際問題としては、問題が発覚した時点で「祭り」が起こり、データは各所で複製され、取り返しのつかないことになってしまう事例も少なくありません。
プライベートな情報を載せた「Googleマイマップ」を作成したら意図に反してデフォルトで公開になってしまっていた、または非公開のつもりがURLが漏洩してアクセスされてしまった、という「マイマップ」問題も、この「基本的にオープン」という思想とユーザーの感覚との乖離が一因となって起きた問題だと考えられます。
11月21日の記事では、「デフォルトでは非公開」の設定になっているYahoo!「ワイワイマップ」との比較を行っています。仕様を完全に把握しないまま利用したユーザーだけの責任としてしまっては、同種のサービスを使うことがユーザーにとって非常にハイリスクなこととなり、気軽に利用できなくなってしまうのではないでしょうか。グーグルはこれに関してブログでの注意喚起とマイマップのUI修正を行いましたが、デフォルトの公開設定は変わっていません。
秋に入り、ストリートビュー問題に関して様々な団体が動きを見せています。10月には町田市議会が政府などに法規制検討を要請。11月には杉並区がグーグルに、区民から複数の苦情が寄せられているとして対応を申し入れています。また、日弁連は緊急集会を実施し、問題点について意見交換が行われました。
そうした中でグーグルは先週、ストリートビューを刷新。基本的には機能強化ですが、プライバシー問題への配慮として、削除依頼画面へのフォームをわかりやすい位置に表示しました。また、9月には携帯電話向け「Googleモバイル」で、11月21日にはiPhoneでもストリートビューが閲覧可能になっています。
プライバシー問題に関しては、11月12日にマイクロソフトが方針の説明会を実施。個人情報保護の重要性の高まりを指摘し、フィッシング詐欺などからプライバシー情報を守るための機能の提供や、個人情報に含める情報の範囲を広げ、ユーザーにコントロール手段を提供し、信頼に繋げるといった方針が示されました。
このようなマイクロソフトの考えや、「ワイワイマップ」に見られるヤフーの慎重さに比べると、「可能だから実行した。問題があったら後で修正する」といったグーグルの方針はあまりにも素朴すぎ、また乱暴なように見えます。一方で、「新しいサービスについてはリスクやクレームが付きものだが、それらがすべて事前にわかるわけでもない」といった考えも、完全に否定されるものではないでしょう。では、どのように折り合いを付けるべきか、司法や行政も交えた話し合いが今後行われていくと思われます。
2008/12/01 12:06
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小林祐一郎 プログラマ、編集者、Webディレクター等を経て、ライター・編集者として活動。興味のあるテーマは「人はどうすればネットで“いい思い”ができるのか」 。ごく普通の人の生活に、IT技術やネットのコミュニケーションツールがどんな影響を与え、どう活用できるのかを研究している。近著「Web2.0超入門講座」(インプレス) |
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