被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってネット詐欺ですよ!
総務省から「NOTICE」で検知されたので対応するようにメールが来た
2019年3月1日 06:00
2019年2月20日より、総務省は「NOTICE(National Operation Towards IoT Clean Environment)」という取り組みを行っています。ネットワークにつながっている監視カメラのようなIoT機器が悪用されるリスクを調査するためのものです。これは無差別に行われるので、家庭や会社で利用している機器にもアクセスされる可能性があります。テレビでは、政府が個人の機器に不正侵入すると盛んに報道されていますので、耳にした方も多いのではないでしょうか。
さて、しばらくすると、総務省やNOTICEを実施している情報通信研究機構、インターネット回線を契約している電気通信事業者などを名乗るところからメールが来る可能性があります。
「NOTICEのチェックであなたの利用しているウェブカメラ、PC、スマホなどに脆弱性が発見されました。以下のURLから対応をしてください。」
「NOTICEにより、セキュリティに問題があることが発見されました。以下のソフトをインストールしてください。」
「総務省によるサイバー攻撃対策のための取り組みNOTICEにおいて、あなたのデバイスから不正なアクセスが検知されました。至急、○○に電話し、問題を解消してください。」
もしこれらの連絡が来たら注意してください。メールに記載されているURLにアクセスすると、本人の確認のため、メールアドレスや電話番号、マイナンバーの入力を求められるかもしれません。ユーザーが訝しむまで、とことん個人情報を盗まれてしまうのです。最後はクレジットカード番号まで求めてくるでしょう。
セキュリティソフトのインストール詐欺の場合は、2パターンあります。無料なら、マルウェアをインストールさせ、PC内の情報を抜き取ったり、犯罪のための踏み台に利用します。お金が目的なら、有料で購入を勧めてきます。
電話してしまったら、総務省を名乗ってとことん脅してくるでしょう。個人情報も取りにきますが、人が対応する場合は、大きなお金を狙ってきます。セキュリティ対策のソフトや機械、コンサルティングなどを販売してくるでしょう。初回は数万円で釣り上げ、その後は銀行口座が空になるまで騙され続けます。
問題は、利用者のIoT機器に問題があった場合、注意喚起の連絡が来る可能性があります。その連絡は見逃してはいけないので、一律で無視していいわけでもありません。個別に、ネット詐欺かどうかを判別する必要があるのです。
実際は、まだ上記のようなネット詐欺の被害が発生しているわけではありません。この手の大きなニュースで、しかもデジタルリテラシーのない人には内容が把握しにくい場合は、ネット詐欺に利用される可能性が高いのです。特に、いたずらにNOTICEの危険性を煽るようなニュースに惑わされてしまうような人は引っかかる可能性がさらに高くなります。
詐欺に遭わないためには、デジタルリテラシーを身に付けるのが最も効果的です。NOTICEは政府がやっている怪しい陰謀ではありません。みなさんが便利だと思って利用しているデジタル機器が、きちんと設定されていないために、悪意のある人たちにより不正アクセスの被害に遭っているのです。ふわっとしたリスクではありません。現時点で日本だけでも万単位の監視カメラが不正アクセスされ、世界中にその映像を公開しています。企業のオフィス内や個人の家の庭といった情報もリアルタイムで動画として流れているのです。
ユーザーがパスワードをきちんと設定せずにインターネットに接続しているためです。もし、ネットにつながる機器を利用しているなら、全て必ずパスワードを設定してください。それだけで、この被害は防げます。NOTICEはこの現状を把握するためのテストなのです。
NOTICEは日本での取り組みなので、ネット詐欺メールは日本語からスタートします。他の一般的なネット詐欺なら英語から広がり始めるので、情報収集の時間があるのですが、NOTICEがらみの詐欺メールは事前に心の準備をしておく必要があります。デジタルリテラシーに疎いご両親などには、あらかじめ注意喚起をしておくことをお勧めします。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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