被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

「オークションの代理出品」詐欺、高額報酬がもらえると思いきや……

(「いらすとや」より)

 ネット広告で割のいい報酬がもらえる仕事がありました。オークションサイトに出品して、落札してもらったらその何割かをもらえるというものです。写真や文面も提供してくれるというので、そこまで手間もかかりません。申し込んでみると、すぐに素材が届いたので、オークションに登録したところ、高額だったのですが、割安価格だったのですぐに落札されました。

 別の方は、オークションに多数の商品を出品しているユーザーです。ある商品の質問欄に、中国で雑貨屋をしている日本人から連絡が入りました。とてもいい商品が激安なので日本で販売していただける方を募集しているというのです。1点につき、そこそこ高い手数料が得られるようなので、代理出品を行うことになりました。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 どちらも、「代理出品詐欺」の典型パターンです。他人から依頼を受けてオークションに代理出品すること自体は問題ないのですが、その仕組みを悪用して、金銭だけをかすめとるネット詐欺です。

 どちらも、振込先は依頼人の口座が指定されています。落札者はすぐにお金を振り込みますが、依頼人は商品を発送しません。連絡も取れなくなります。

 悪いのは依頼人とはいえ、落札者から見ると、出品者が詐欺をしていると見えてしまいます。状況を相手に説明しても、関係ありません。当たり前ですが、自分で被害を弁済することになるでしょう。その後、出品者が依頼人に請求することになりますが、相手はもともと詐欺を働くつもりなので、逃走準備は万端です。警察に相談するしかないでしょう。ただし、出品者も加害者になっているので、スムーズに話が進まないかもしれません。

 自分でオークションに出せば手数料なんか不要です。なぜ、そのような報酬を払うのか、ということに頭を巡らせてください。あり得ないほど美味しい話なんてあり得ないのです。

 ただし、詐欺師も本当にずる賢いです。あるケースでは、代理店契約をしたいと持ち掛けました。人気商品を多数扱っており、製造と発送業務で人手が足りず、オークションの登録や落札者とのやりとりにまで手が回らないというのです。そのため、報酬を払ってでも販売チャンネルを増やしたい、そこで多数の出品をしていて評価の高いあなたにお願いしたいと思った次第です、と持ち掛けます。実際にその手のビジネスをしたことがなければ引っかかってしまう可能性は高いでしょう。

 代理出品はトラブルの元。万一、手掛けるときはすべての可能性を考慮しましょう。また、代理出品依頼のときに、新しい銀行口座を用意し、共有しようという誘いもあります。これはネット詐欺に使う銀行口座を準備する別の詐欺も同時に仕掛けられています。絶対に、引っかからないようにしてください。

(「いらすとや」より)

 別の切り口で、詐欺師が代理出品を利用することもあります。オークションアカウントを新しく作ってもらい、多数の商品を代理出品してもらいます。このパターンでは、出品者の銀行口座に振り込まれます。その後、出品者は自分の取り分を引いた金額を依頼人に振り込むのです。出品者は労働量に見合った報酬をしっかり受け取ることができます。ここまではグレーとはいえ、犯罪ではありません。

 その後、仕事が完了するとアカウントを依頼人に返却します。そして、高評価がたくさん付いたアカウントで、ネット詐欺を仕掛けるのです。ユーザーは過去の履歴をチェックしますが、何の問題もなさそうに見えるので、高額な商品でも信頼してしまう可能性が高まるのです。

 このケースもネット詐欺に加担していることには変わりありません。直接犯罪を犯しているわけではありませんが、事件が起きたときには警察から連絡が来る可能性は否定できません。怪しいことには関わらないようにしましょう。君子危うきに近寄らずです。

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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。