被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

高齢者のネット詐欺被害を撲滅しよう!

ますます巨大化するネット詐欺集団! 「詐欺を防ぐ10カ条」で迫り来るリスクに準備せよ

 中国の公安部は2019年末、半年間でテレコム詐欺を11万8000件摘発し、9万9000人を逮捕したことを発表しました。ネット詐欺では11月にはマレーシア移民局が680人を一斉逮捕、ジャカルタでは91人を逮捕しています。

 マレーシアの事件では、174台のノートPCと787台のPC、8230台の携帯電話が押収されています。犯人たちが働いていた6階建てのビルの賃料は36万マレーシアリンギット、つまり967万円。それだけの賃料を払い、680人以上を養っていたほど儲かっていたのです。

 詐欺集団はどんどん巨大化しています。現在、主流は中国目当ての詐欺となっています。やはり、お金が動いており、デジタルリテラシーが低いところを狙います。とはいえ、いつ矛先が日本に向くとも限りません。電話での詐欺は検挙されやすいため、そのうちネット詐欺に転向する輩も増えてくるでしょう。そんなときに備え、今のうちにデジタルリテラシーを高めておくことが大切です。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 アメリカの連邦取引委員会(FTC)は、詐欺を避けるため10カ条を公開しているので、ご紹介します。

  1. 詐欺師は公務員や家族、慈善団体、取引先の企業など、信頼できる人を装います。それらから予期せず個人情報やお金を求められた場合、簡単に提供しないようにしてください。
  2. 耳慣れない人物や会社、製品に絡んでお金や個人情報を求められた場合、その名前と「レビュー」「苦情」「詐欺」というキーワードで検索してください。ネット詐欺ならほかの人の報告が見つかります。
  3. 電話やメールアドレスといった発信元の番号や情報を信じないようにしてください。偽装する技術は出回っており、簡単に嘘がつけるのです。もし、話の内容が本当っぽくても、万全を期すなら自分から正規の番号に折り返したほうがよいでしょう。
  4. 前払いは避けましょう。借金をきれいにする、ローンを組むとか、新しい仕事を提供する、賞を授与するといった連絡があっても、税金や手数料を先に振り込むように言われたら注意してください。支払ったら連絡が取れなくなる可能性が高いのです。
  5. 支払うとしてもクレジットカードを利用しましょう。クレジットカードには詐欺防止の機能が用意されているので、現金が引き落とされる前にある程度のリカバリーができます。しかし、ギフトカードやプリペイドカードといったほかのサービスを利用すると回収ができなくなります。
  6. 本連載でも繰り返しているように、誰かと話してください。お金や個人情報を渡す前に、信頼できる家族や友人に相談しましょう。犯人はそうさせないように焦らせたり、脅したりしてきます。その場合でも、相手の言うストーリーを検索して、詐欺かどうか確認してみましょう。消費者センターや警察といった専門家に相談するのもありです。
  7. 電話に出たら、録音によるセールストークが始まったら切ってしまいましょう。最後まで聞く必要も、文句を言う必要もありません。これはロボコールと言われるセールス手法で、詐欺によく使われています。現在はネット電話を利用して摘発を逃れています。2019年の大晦日、トランプ大統領はロボコールを摘発するための法案に署名しました。今後は減っていくと思われます。
  8. キャンセルポリシーをよく読みましょう。筆者も膨大な数のアプリやサービスの無料トライアルを利用しています。しかし、一部の製品は一定期間後から定期的に料金が発生します。ポリシーに明記されているので、見逃したら自己責任です。また、万一に備え、クレジットカードの引き落とし履歴は毎月きちんと確認するようにしましょう。
  9. 小切手に入金してから返金したりしないでください。小切手が偽の場合、もう一度支払いを求められます。とはいえ、日本の個人間では小切手はほとんど使われていないので、気にしなくてよいでしょう。
  10. FTCのサイトでネット詐欺に関するヒントとアドバイスを入手しましょう。筆者としては、ぜひ本連載を拡散していただければと思います。

 以上が詐欺を防ぐ10カ条です。メールやウェブ、SMS、SNSといった新しい技術と古い詐欺テクニックを組み合わせ、さまざまなパターンが考案されています。個別の事例を学ぶのと同時に、未知のネット詐欺に遭遇しても、被害に遭わないようなデジタルリテラシーを身に付けておきましょう。

「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事

NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。