Wi-Fiルーターを「拡張」しよう
Wi-Fiの範囲を「拡張」してみた、後から「ゲーミングルーターが欲しくなった……」でも無駄にならない!
実際やってみた「Extendable Router」
2023年6月2日 06:55
メッシュネットワークをスマートフォンアプリで構築
「Wi-Fiを拡張する」という概念をウリとするASUSのルーターブランド「Extendable Router」の解説をする本連載。今回は実際に「Extendable Router」を使って、メッシュネットワークを構築してみたい。
想定するのは、「起こりそうなシチュエーション」として考えた2つのパターンだ。
1つめは「安価な普及モデルのルーターを最初に導入したが、高い性能や機能が欲しくなってゲーミングルーターを追加した」というもので、2つめは「旧世代のWi-Fi 5ルーターを使用していたが、Wi-Fi 6に対応した普及モデルを導入した」というもの。
実際の「Extend」がどういうイメージになるか、感触をつかんでいただければ幸いだ。
パターン1:安価な普及モデルを買ったけど、ゲーミングルーターが欲しくなってしまった……
さて、事例の1つ目は、「安価な普及モデルのルーターを最初に導入したが、高い性能や機能が欲しくなってゲーミングルーターを追加した」例だ。
Extendable Routerは、9千円ほどの安価な製品から、10GbE LANに対応するような高級機まで、多様にそろっているのが特徴だが、「いきなり高級機を買うには踏ん切りがつかず、安価なモデルを買ってしまったが、使っているうちに上位モデルが欲しくなった」というのはどんな分野でもあり得る話だろう。
今回想定するのは、実売価格9千円弱のWi-Fi 6対応普及モデル「RT-AX1800U」と、2.5GbE LAN搭載のゲーミング向けモデル「TUF-AX4200」(実売価格1万8000円)の組み合わせだ。
なお、今回の設定には、スマートフォンアプリ「ASUS Router」を使用する。1台目の本体設定から2台目以降とのメッシュネットワーク構築まで、アプリの指示に従うだけで完結できるようになっており、とても使い勝手がいい。
もちろんPCでの有線接続によるWebインターフェイスの設定にも対応している。どちらでも初期設定からメッシュネットワークの構築まで可能なので、好みの手順を選んでいただきたい。
まずは安価なモデルを導入
まずは「安価なモデルを買ってきた」というシチュエーションを再現、ということで、1台目の「RT-AX1800U」の導入手順を説明しよう。
物理的に設置して、ACアダプタも接続、モデム等からのLANケーブルをWAN端子に接続した後に、電源オン。1分ほど待ってから「ASUS Router」アプリを起動する。
あとはアプリの指示に従って設定をしていくだけで、インターネット接続設定が完了する。筆者宅はNURO光を使用しており、ISPから提供されるIDやパスワードの入力は必要ない。もしそれらが必要な環境であれば、IDとパスワードを入力するステップが足される。
ここまでの設定で「RT-AX1800U」は利用可能になった。
ゲーミングルーターを追加してみる
さて、ここからが今回のメインの話だ。
「RT-AX1800Uよりも高い機能が欲しくなった」ということで、2台目となる「TUF-AX4200」を導入していきたい。
まずはテストとして、「RT-AX1800U」がインターネット接続を任される親機、「TUF-AX4200」がメッシュネットワークの末端にあたる子機になる形で設定してみよう。
最初に、子機となる「TUF-AX4200」の電源を入れる。メッシュネットワークに組み込むのでWAN側の有線LANケーブルの接続は不要だが、Wi-Fi接続が安定した状態で設定したいので、子機は親機の近くに置いておく。
次に「ASUS Router」アプリのホーム画面で表示できる「AiMesh WiFiシステム」から「ノードを追加」を選択するか、「設定」にある「AiMesh」を選択する。
「AiMesh」デバイスの検索を開始するボタンが表示されるのでタップすると、「TUF-AX4200」が見つかった。
これをタップすると、デバイスの位置を選択せよとの指示。位置というのは子機の設置場所を指しており、リビングやキッチンなど選択項目から選べる。これは管理で見分けやすくするためだけのもので、何を選んでも構わない。選択したら適用ボタンをタップする。
この後、数分間待てば、子機の設定が完了する。これで「AiMesh」のソフトウェア面の設定は完了だ。親機のようなインターネット設定やWi-Fi設定をする必要はなく、親機と同じWi-Fi設定が自動で設定されている。
あとは子機の電源をいったん抜き、別の部屋などWi-Fiの電波を拡張したい場所へと持っていき、再び電源を入れる。
親機と子機の間はWi-Fiで接続されるので、あまり遠い場所に持っていくと速度が遅くなったり接続できなくなったりするが、電波が十分に届く範囲であればどこに置いても構わない。
親機と子機の間のWi-Fiの電波の強さも「ASUS Router」アプリで確認できる。「AiMesh WiFiシステム」の画面から子機(今回は「TUF-AX4200」)を選択すると、十分に電波が届く範囲なら「最良」という緑色の表示が出る。実際に設置してみて「最良」の表示が出る範囲であれば問題ない。
子機を設置した分だけ電波の範囲が広がり、今までは電波が届かなかったり弱かったりした場所でも通信が利用しやすくなっているはずだ。
ゲーミングルーターを親機、普及モデルを子機に変更
さて、ここまででメッシュネットワークの構築そのものは完了するが、「RT-AX1800U」が親機、「TUF-AX4200」が子機にすると、Wi-Fiルーターの機能としては「RT-AX1800U」のものを使うことになる。より多機能な「TUF-AX4200」を活用したい場合、改めて「TUF-AX4200」を親機としてインターネット接続設定をし直し、「RT-AX1800U」を初期化、子機として再設定する方がいい。
例えば「モバイルゲームブースト」は「TUF-AX4200」は対応しているが、「RT-AX1800U」は非対応。親機が「RT-AX1800U」の時には利用できないが、「TUF-AX4200」を親機にすれば利用できる。
なお「ASUS Router」アプリでメッシュネットワークの構築作業をする場合、機器が初期化されていないと、「ASUS Router」アプリで「AiMesh」デバイスを検索しても見つけてくれない。一度Wi-Fiルーターとして使用した機器は、取り外し前に初期化しておくのを忘れずに。
メッシュの効果はてきめん、3LDKでも遠距離なら効果大
試しにこの状態で、筆者宅の電波が届きにくい場所で通信速度を確かめてみよう。テストにはiperf3を使い、Wi-Fi接続の通信速度を調べる。子機となるPCは160MHz幅の2402Mbpsで接続できるものを使用。通信相手は「TUF-AX4200」から2.5Gbpsで有線接続されたPC。
親機と同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。さらに子機の「RT-AX1800U」を間取りの中央部となるキッチンに設置し、電源オフ(未設置時と同様)とオンで速度を比較した。
【計測データ】 | ||
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上り | 下り | |
近距離 | 686.4 | 1289 |
遠距離(子機オフ) | 35.2 | 205.6 |
遠距離(子機オン) | 196.3 | 274.4 |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
近距離では親機の「TUF-AX4200」に接続しており、当然ながら十分に高速だ。しかし遠距離ではかなり電波が弱くなり、通信速度が大幅に低下している。
子機の電源をオンにすると、通信状態が大幅に改善した。「RT-AX1800U」はWi-Fi速度が最大1201Mbpsなのと、バックホール(親機と子機の間の通信)にもWi-Fiを使っているため、親機との近距離接続に比べると速度は落ちてしまう。それでも子機がない状態よりは明らかに高速化している。
パターン2:Wi-Fi 6のルーターを新調するが、今使っているルーターも流用して快適にしたい
もう1つの事例は、Wi-Fi 5対応ルーターの「RT-AC68U」(2013年発売)を使用していた環境に、Wi-Fi 6対応ルーターの普及モデル「RT-AX1800U」を導入するイメージだ。
対応デバイスの購入などで「Wi-Fi 6のルーターを購入したい」という場合、普通は今使っている製品は捨てるしかないが、Extendable Routerであれば、今使っている旧製品でメッシュネットワークを構築できる。
旧製品がカバーする範囲ではWi-Fi 6は利用できないが、「電波が届かない」とか「電波が極端に弱い」のであれば、Wi-Fi 5でも「ちゃんと電波が届く」ほうがいいだろう。
設定手順としては先の事例とほぼ同じ。
「ASUS Router」アプリで「RT-AX1800U」のインターネット接続設定を行った後、「RT-AC68U」を「AiMesh」で子機に設定する。
注意点としては、「RT-AC68U」のように古い機種の場合、ファームウェアを最新のものにアップデートしておかないと、「AiMesh」がうまく動かない可能性がある。筆者は今回、数年間使われていなかった「RT-AC68U」を利用したのだが、ただ初期化しただけでは「AiMesh」デバイスとして発見できなかった。いったん「RT-AC68U」を親機としてインターネット接続設定し、ファームウェアを更新してから再び初期化という手順を取った。
その点にさえ注意すれば、作業としては変わりなく、すぐにメッシュネットワークを構築できる。Wi-Fi 6の親機とWi-Fi 5の子機という、Wi-Fi通信の規格が異なる組み合わせでも対応可能だ。
端末が子機に接続した場合はWi-Fi 5での接続となるため、Wi-Fi 6の親機よりも通信速度では不利になる。それでも親機では電波が届きづらい場所での通信は、子機の導入で高速かつ安定したものにできるはずだ。
ちなみに「AiMesh」は2台で終わりではなく、最大5台でのメッシュネットワークを構築できる。試しに親機を「TUF-AX4200」、子機を「RT-AX1800U」にした環境に、さらに「RT-AC68U」を加えてみたところ、ちゃんと3台体制によるメッシュネットワークを構築できた。
メッシュネットワーク構築後もアプリでの管理が便利
今回は「AiMesh」の具体的な構築作業を行ったわけだが、まだ語り足りない便利な点がある。
「AiMesh」に組み入れたWi-Fiルーターは、「ASUS Router」アプリで一括管理できる。機器1つ1つの設定もでき、LEDの発光を止めるような設定変更も可能だ。
また、ファームウェアの更新チェックも、接続した全機で一斉にできる。さらにメッシュネットワークを解いて初期化したい場合にも、親機と全子機を一括で初期化できる。今回は検証の中で親機と子機の入れ替えが何度か発生し、そのたびにネットワークの組み直しが発生したのだが、一括で初期化できたので快適に作業を進められた。
またWi-Fiルーター同士を接続するバックホールは、今回、Wi-Fiを使用したが、有線LANを使うこともできる。この場合はWi-Fiの電波を端末間との通信に全て使用できるため、さらなる速度向上が期待できる。形としてはWi-Fiルーターのアクセスポイント(ブリッジ)モードを使った増設と同じだが、設定作業は「AiMesh」の方が手間がなく確実だ。
「AiMesh」による柔軟なメッシュネットワーク構築に加え、「ASUS Router」アプリによる手軽で確実な管理ができ、同社の強みであるゲーミング機能も活かせる。これが「Extendable Router」の強みであり、実際に使ってみてより納得できる部分だ。
次回は「Extendable Router」の拡張性に目を向け、同社のWi-Fiルーターが持つ多機能さと組み合わせた際の魅力をお伝えする。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)