Wi-Fiルーターを「拡張」しよう

「拡張できるWi-Fiルーター」は9千円から8万円まで価格差9倍!何が違うのか?

普及モデルから、トライバンドゲーミングルーターまで……

9千円弱から8万円強まで、実に様々な製品があるExtendable Router

「Extendable Router」はどれ?

 前回の記事では、ASUSが展開する「Extendable Router」がどんなものかを解説した。

 ざっくり言うと、同社のWi-Fiルーターを複数台接続してメッシュネットワークを構築できる「AiMesh」機能を使えば、同社のWi-Fiルーターの特徴である多機能さと、スマートフォンアプリ「ASUS Router」を使った簡単設定、セキュリティ機能「AiProtection」をそのまま活かして活用できる、という話だ。

 今回はより具体的に、「Extendable Router」とされるWi-Fiルーターの製品について紹介していきたい。先に言ってしまうと、同社のWi-Fiルーターであればほとんどの製品が「Extendable Router」に該当する。

Wi-Fi 6対応モデルは実は全てが「Extendable」最初のモデルは2013年発売……

AiMeshの解説
現在、Extendable Routerの最上位モデルとして販売されているGT-AX11000 Pro、価格は8万円超だが、その多機能ぶりはすごい。
Extendable Routerで最も安価なRT-AX1800U。こちらの価格は9千円弱。もちろん、「Extendable Router」としての機能はしっかり搭載している

 まず最初に、同社が発売したWi-Fi 6対応ルーターの一覧がこちらにあるのでご覧いただきたい。

 本稿執筆時点で、一覧には19機種のWi-Fi 6対応ルーターがある。Wi-Fi 6対応ルーターだけでこんなに出ているのかと驚いてしまうが、それはさておき。

 この一覧の中で、「AiMesh」の対応状況を見てみると、全ての機種が対応していることがわかる。つまり同社のWi-Fi 6対応ルーターは、全て「Extendable Router」なのである。「1台で家中に電波が届くかな」と心配になったら、とりあえずASUS製のWi-Fi6対応ルーターを選んでおけば後々困らない。

 なお、先のページには、19機種のほかに、同社が「メッシュWi-Fiシステム」と呼ぶメッシュ特化モデル「ZenWi-Fi」シリーズもあり、これもAiMesh対応なので「Extendable Router」とメッシュを組める、……のだが、ZenWi-Fiシリーズは「Extendable Router」には含めないそうだ。

 また従来規格となるWi-Fi 5対応ルーターの中にも、「AiMesh」に対応するものがある。それらもWi-Fi 6対応ルーターと組み合わせてメッシュネットワークの構築が可能だ。同社が「AiMesh」を導入してから既に長い時間が経っていることは、多くの実績を積んできている証拠でもあり、安心感があるし、それは未来に向けての安心感でもある。

 日本では6GHz帯を使うWi-Fi 6Eの展開が始まっているし、規格的にはWi-Fi 7の存在も見え始めている。今後それらの新規格が登場したとしても、この「Extendable Router」の仕組みで、メッシュネットワークを構築できるはず。

 つまり、今後、新規格のWi-Fiルーターや新機能のついたWi-Fiルーターに乗り換えたら、今まで電波が弱かったところに古い機種を置き、メッシュネットワークを構築する……」というのもできるというわけだ。セット販売されているメッシュWi-Fiシステムでは、こうした際、「全て交換」しないといけない製品もあるが、「拡張できる」概念のおかげで、部分差し替えできる、というのはメリットだろう。

普及モデルも超ハイスペックも「Extendable」9千円から8万円超まで、ゲーミングモデルもアリ

 ここからは「Extendable Router」の具体的な機種をいくつか紹介したい。同社のWi-Fiルーターには、安価な普及モデルや、高性能なゲーミング向け、ハイエンドのROGシリーズと様々なタイプがあり、安い方では9千円弱の普及機がある一方、ハイエンドモデルでは8万円超、トライバンドや10GbE LANまで備えたゲーミングルーターまで用意されている。

 好きな製品を自由に組み合わせてWi-Fi環境を構築できるのがメリットといえるだろう。

 なお、以下で価格も紹介しているが、実売価格は4月下旬時点のもの。将来は変わる可能性もあるので、それぞれのリンク先などで確認してほしい。

RT-AX1800U(実売価格:8,980円)
 ~安価な普及モデル

 同社の現行製品の中では最も安価な普及モデル。通信速度はWi-Fiで1201Mbps、有線LANは1Gbpsとベースラインの性能ながら、様々な機能を持たせられるUSBポートを搭載している。比較的コンパクトなサイズなのも利点。

RT-AX3000 V2(実売価格:14,980円)
 ~Wi-Fi高速化、メモリ増量のミドルスペック品

 Wi-Fi通信速度が2402Mbpsとなったミドルスペックの普及モデル。「RT-AX1800U」と比べると搭載メモリが倍の512MBになり、高負荷でも安定した動作が期待できる。

RT-AX86U Pro(実売価格:37,091円)
 ~Wi-Fiはさらに高速化、2.5GbE LANもある高速モデル

 Wi-Fi通信速度が現行最高の4804Mbpsとなり、ゲーミング向け機能も充実した高性能機。2.5Gbpsに対応した有線LANポートを搭載(WAN/LAN切り替え可能)するとともに、搭載メモリは1GBと大容量で、多機能と安定動作を両立する。同社の製品では珍しく縦置き型なのも特徴。

ゲーミング機能が充実した「TUF」「ROG」シリーズ

TUF-AX4200(実売価格:18,000円)
 ~2.5Gbpsの有線WAN搭載、高速回線の利用者向け

 高い耐久性と安定性を売りにする「TUF」シリーズの名を冠した製品。Wi-Fi通信速度は3603Mbpsで、有線のWAN側は2.5Gbpsに対応。1Gbps超のインターネット回線でオンラインゲームを遊ぶのに、コストパフォーマンスの高い製品となっている。

TUF-AX6000(実売価格:21,516円)
 ~2ポートの2.5Gbps ポートを搭載

 「TUF」シリーズの上位機種で、Wi-Fi通信速度は4804Mbps。有線はWAN側・LAN側に1つずつ2.5Gbps対応ポートを装備しており、Wi-Fiだけでなく有線接続でも1Gbps超のインターネット接続が可能。充実したスペックの割に、価格は安価に抑えられている。

ROG Rapture GT-AX6000(実売価格:50,282円)
 ~最高峰ブランド「ROG」のデュアルバンド機。有線も2.5Gbpsを搭載

 最高峰のゲーミング向けブランド「ROG」シリーズの製品。Wi-Fi通信速度は4804Mbpsで、有線もWAN側・LAN側に2.5Gbps対応ポートを備える。高性能な部材を大型筐体に搭載し、高性能・多機能と安定性を共存させている。デュアルバンドWi-Fiルーターで最高性能を求めるなら本製品で間違いない。

ROG Rapture GT-AX11000 Pro(実売価格:84,929円)
 ~「ROG」シリーズ上位のトライバンド機。5GHzを2本搭載、有線は10Gbpsポートも

 「ROG」シリーズの上位機種となる製品で、5GHz帯を2つ備えたトライバンド機。5GHz帯の通信速度は2つとも4804Mbpsで、有線はWAN側が2.5Gbps対応なのに加え、WAN/LANが切り替え可能な10Gbps対応ポートも備える。巨大な筐体を囲むような8本のアンテナと、「ROG」ロゴのLED装飾をあしらった外見も印象的だ。

最初のモデルは2013年! 昔のモデルも活用OK

 さて、最新モデルは上記の通りだが、どれぐらい昔から「Extendable」なのか、気になる人もいるだろう。

 そこで、既に販売終了となった人気モデルや、エポックとなった製品などを紹介してみたい。

 これらの製品ももちろん「Extendable Router」として活用できる。こうした製品を、現在、使っている人は最新モデルを1台購入すれば、すぐにメッシュ環境が構築できる、というわけだ。

RT-AX3000(2020年発売)

 2020年に発売されたヒット製品。「RT-AX3000 V2」の前モデルとなる機種で、外見やスペック上の違いはほとんどない。ファームウェアアップデートでフレッツ光のIPv6 IPoEサービス「v6プラス」にも対応しており、十分に現役で使えるミドルスペック機。

TUF-AX3000(2020年発売)

 「TUF」シリーズ初のWi-Fiルーターで、「TUF-AX4200」の前モデル。外見は共通だが、Wi-Fi通信速度は2402Mbps、有線のWAN側は1Gbpsまでとスペックが若干異なる。1Gbpsまでのインターネット回線であれば十分現役で使える性能だ。

TUF-AX5400(2021年発売)

 「TUF」シリーズの上位機種で、「TUF-AX6000」の前モデル。Wi-Fi通信速度は4804Mbpsで同じながら、有線LANが全て1Gbpsまでとなっている。「VPNフュージョン」などゲーミング向けの製品ならではの多機能さが売り。

RT-AC68U(2013年発売)

 「Extendable Router」としては最初期の製品で、発売は2013年。Wi-Fi 5(当時はIEEE 802.11acのドラフト版だった)対応で、Wi-Fi通信速度は1300Mbps。USB端子を2基備えるなど、多機能な点でも当時注目された。

自分に合った「Extendable Router」を選ぼう

Extendable Routerのアイコン。最近の対応製品にはこのアイコンがついている。

 「Extendable Router」が欲しくなったら、今売られているASUS製Wi-Fiルーターを購入しておけば、まず間違いない。同社は多彩な製品がラインナップされているので、それぞれの特徴や価格を見つつ、自分に合う製品を探してみていただきたい。

 次回は複数の「Extendable Router」を使って、実際の導入事例を想定しながら、メッシュネットワークを構築する様子を紹介する。作業的には「ASUS Router」アプリの指示に従うだけで済み、説明不要なくらい簡単だというところをお見せしたいと思う。

(協力:ASUS JAPAN株式会社)

石田 賀津男

ゲームなどのエンターテイメントと、PC・ネットワークなどのIT系の両方にまたがる分野を得意とするフリージャーナリスト。元GAME Watch記者で、2012年に独立。2016年より男児の育児にも奮闘中。個人ウェブサイト「ougi.net(https://ougi.net/)」