よくわかる音楽著作権ビジネス
実践編 第30話
サンプリングと著作権―裁判例2―
元ネタがわからないようなサンプリングでも違法なの?
2018年4月27日 18:05
当連載「よくわかる音楽著作権ビジネス」では、書籍「よくわかる音楽著作権ビジネス基礎編 5th Edition」およびその続編「よくわかる音楽著作権ビジネス実践編 5th Edition」(安藤和宏著/リットーミュージック刊)の中から、注目のトピック(章)をピックアップして転載しています。
新妻の瞳嬢に無断サンプリングを叱られ、反省しきりの著作ケンゾウ君。まだまだケンゾウ君の修行の旅は終わらないようである。そんなある日、友人のミュージシャンから相談があると言われて、近所のカフェに呼び出された。知識が不足しているわりには人望が厚いケンゾウ君は、なぜか頼られる兄貴なのである。ここが彼の悩みの種であるが、今回も何やら難しそうな気配が……。
ケンゾウ君の友人のケースのように、インターネット上で無断サンプリングや盗作の指摘をするユーザーが増えている。的外れな指摘も少なくないが、アーティストに与える影響が大きいのも確かである。今回のように、無断サンプリングを指摘されるとその真偽にかかわらず、アーティストのイメージや評判が傷つくおそれがある。
それでは、元ネタを教えない限り、誰にもわからないようなサンプリングについても、権利者から許諾を得る必要があるのだろうか。実はこの問題を扱った裁判例がアメリカには存在する。そこで、前回に引き続き、今回もアメリカにおけるミュージック・サンプリングの重要裁判例を解説することにしよう。
今回取り上げるNewton事件とBridgeport事件、VMG Salsoul事件は、アメリカの音楽業界に大きな影響を与えた事件である。特にBridgeport判決には批判が多く、その妥当性については大きな疑問が投げかけられている。今回は、この3つの重要裁判例を詳しく解説し、アメリカが直面しているサンプリング紛争の問題点を明らかにしてみたい。
- Newton事件とは
- Bridgeport事件とは
- VMG Salsoul事件