読めば身に付くネットリテラシー

知らないと危険! 奨学金を受けようとしている/返済中の人は「奨学金詐欺」の手口を把握しておこう

 大学などに進学する際の学費を借りることができる奨学金はありがたい制度ですが、お金が絡むところにネット詐欺ありです。昔からさまざまな手口がありますが、リテラシーがないと詐欺に引っ掛かり、進学どころではなくなってしまうリスクがあります。今回は、国内外の奨学金詐欺の手口をまとめて紹介します。奨学金を受けようとしている人/受けたことがある人(返済中の人)、そしてそのような人の家族はぜひチェックしてください。

奨学金の情報を常に収集していて詳しいという人は少なく、自分自身や家族が必要になって初めて調べ始める人が多いでしょう。学費を確保しようとして逆にお金を失うとことのないように、詐欺の手口を知り、危険な情報を見極められるようになってください

1)手数料や税金などの前払い料金を要求する

 「当選した奨学金を受け取るには、手数料や税金が必要だ」と言ってくるパターンです。そうしたお金を先に振り込めば、奨学金を振り込むというのですが、正規の奨学金で申込金や受給のための料金を請求されることはありません。海外では、偽の小切手を送りつけ、「小切手を換金する前に、税金分を返送してほしい」と持ち掛ける巧妙なケースもあります。

 また、出願した覚えのない奨学金について「選考を通過しました」「受給資格があります」と一方的に連絡してくる手口もあります。その際に手数料を要求してくるのです。

 宝くじの当選詐欺もそうですが、いずれもお金をもらうためにお金を払うように要求してくるものは典型的な詐欺の手口ですので、肝に銘じておいてください。

2)個人情報を詐取するフィッシング詐欺

 奨学金の給付には本人確認が必要だとして、口座番号やクレジットカード番号、マイナンバーなどの個人情報を盗み取ろうとするフィッシング詐欺の手口です。取得した情報は不正送金やクレジットカードの不正利用、身分盗用などに悪用されます。

 2022年6月には、大学生に少額援助を行う公益財団法人石井育英会が、同財団を装う詐欺メールに関する注意喚起を行っています。「高額支援」や「支援金」に関する登録や連絡依頼などを謳ったメールが出回ったそうです。

公益財団法人石井育英会の詐欺メール注意喚起

3)公的機関や奨学財団のなりすまし詐欺

 実在の団体や官公庁、奨学財団などを装う手口です。例えば、日本学生支援機構(JASSO)や大学の奨学金担当者をかたり、「奨学金返還が滞納しているので一括返済を」「給付金申請の案内」などといって接触してきます。返済することになれば、職員をかたった犯人が家に直接来て現金を受け取ることもあるそうです。もちろん、JASSOの職員が直接現金を徴収しに来ることはありません。

 海外では、日本政府奨学金(MEXT)の応募代行を謳う偽サイトが現れ、「出願にあたって手数料が必要」と留学生から金を取ろうとする詐欺が問題になりました。一般的に、団体や官公庁がメールやSNSで突然連絡して金銭を要求してくることはありません。このような連絡が来たら、組織の公式窓口に確認しましょう。

 ただし、奨学金の支払いを延滞した場合、督促の電話がかかってくることはあります。この電話を無視してしまうと大きなトラブルになるので、その連絡が詐欺なのか本物なのかはきちんと判断してください。

4)必ず奨学金がもらえる情報があると言ってくる

 「100%奨学金がもらえる方法を教える」とか「有料会員だけに非公開の奨学金情報を提供する」と宣伝する業者にも注意が必要です。実際は、奨学金の獲得を保証することはできません。手数料を払っても奨学金をもらえるとは限らないのです。「返金保証」を謳っていても、実際には条件をつけて返金に応じない例が多いです。

 有料サービスに登録すれば、他では手に入らない奨学金リストを閲覧できるといった謳い文句にだまされてはいけません。奨学金情報は基本的に公開されており、「ここだけの特別な奨学金」や「昨年は何百万もの奨学金が未支給だった(予算が残っている)」といった謳い文句は信用できません。


 奨学金詐欺に遭わないためには、怪しい話を見抜き、近づかないことが第一です。上記のような手口を知っておくだけで、被害に遭う可能性を減らすことができます。応募していない奨学金の当選などはあり得ません。「お金がもらえるかも!」と舞い上がってしまうと危険です。あり得ないほど美味しい話はあり得ません。奨学金を利用する際は、文部科学省や日本学生支援機構(JASSO)、各大学の学生課などの情報を参照してください。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと