読めば身に付くネットリテラシー

前澤友作氏や石破首相のフェイク動画を使った投資詐欺へ誘導するネット広告が氾濫!

Facebook広告をタップしたところ、前澤友作氏が話す動画が再生されました

 著名人の写真を流用した詐欺広告については、本誌連載で何度か取り上げました。しかし、とうとう日本でもフェイク動画による詐欺広告が氾濫し始めました。

 Facebookを閲覧中にZOZO創業者の前澤友作氏の写真が出てきたので、詐欺広告の事例として証拠を確保するべくタップしたところ、動画が再生されました。投資をすることで経済的な自由を手に入れよう、といった内容です。音声は合成で本人のものではありませんが、なかなかのクオリティでだまされてしまう人もいそうです。

 動画生成AIの実力は普通の人の想像が及ばないレベルに進化していて、1枚の写真があれば、そこに写った人物が自然に動く動画を生成できます。日本語の音声合成AIも相次いで登場しています。動画や音声があるからといって、本物だと判断してはいけない時代になってしまったのです。

 さらに動画広告をタップすると、無料の株式知識トレーニングクラスを開催するといった投稿が表示され、次の画面でLINEの友だち追加をするように誘導されました。「前澤友作コミュニティ」に参加すると、お勧めの株を教えてくれるというのです。

株式投資の情報共有コミュニティに誘導されます
LINEの友だち追加を求められます

 LINEの友だちになると、「どのようにお呼びすればよろしいでしょうか」などと言ってきます。これに反応しても無視しても、しばらくするとLINEグループに招待されます。ここで、株式の情報を共有するとしつつも、投資詐欺に誘導するのです。

LINEで前澤氏をかたる詐欺師が接触してきます

 石破首相のフェイク動画を使った投資詐欺も報告されています。動画や音声そのものはフェイクと見破るのが難しいクオリティかもしれませんが、翻訳の間違いが多く、話している内容が変なので、総合的にはフェイクだと見破ることができるレベルかもしれません。とはいえ、これも生成AIの性能がさらに向上すれば、ITに詳しい人でも見分けがつかなくなるでしょう。

 Facebookを運営するMeta社は、フェイク画像・動画詐欺に対し、顔認識技術の分析や人間による審査を行い、詐欺広告を検出すると述べています。しかし前述のとおり詐欺広告が氾濫しており、本物の前澤氏も「顔認識技術が機能してないか、僕が著名人でないか、どちらかだと思いますが、いずれにせよ早急な削除や対策を望みます」とXに投稿しています。

 Meta社も早急に対応する必要がある一方で、だまされる人が出る限り、この手の詐欺はなくなることはありません。私たち皆がリテラシーを身に付け、フェイク動画による詐欺に引っ掛からないようにすることが重要です。何はともあれ、「手軽に確実にたくさん儲かる」などという話は絶対にない、と肝に銘じてください。

 お金が必要な状況にある人ほど、余裕資金ではなく、失えないお金を投資詐欺に突っ込んでしまい、悲惨な目に遭ってしまうケースがあとを絶ちません。このようなネット詐欺が多発していることを肝に銘じて、「万一本当だったら」とか「話半分でもいいのでちょっとだけ」などと思わず、完全スルーを心掛けてください。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと