被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

イーロン・マスクが投資を教える!? 「有名人の画像を勝手に使ったSNS広告」の手口と対策を、警察庁の資料から分析

 警察庁は6月17日に、2024年1月から4月末までに起きたSNS型投資・ロマンス詐欺に関わる調査結果を発表しました。この期間、SNS型投資詐欺の認知件数は2508件で被害額は約334.3億円、SNS型ロマンス詐欺は832件で84.1億円。どちらも前年同期比で急増しており、特にSNS型投資詐欺はプラス2133件(約6.7倍)、被害額もプラス294.6億円(約8.4倍)と、とてつもない増加量です。

 今回は、警察庁が公開した資料をもとに、この2つの詐欺について、手口や被害の実態を見ていきましょう。

「有名人が資産運用の方法を教えます」の広告が典型的な詐欺の入り口

 SNS型投資詐欺を、警察庁は「SNS等を通じて対面することなく、交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ、投資金名目やその利益の出金手数料名目などで金銭等をだまし取る詐欺(SNS型ロマンス詐欺に該当するものを除く)」と定義しています。一般的な詐欺との違いは、対面しないこと。メッセージのやり取りを通じて信用させて、金銭をだまし取るのです。

 その入り口は、SNSに表示される。有名人の画像を勝手に使って、見た人に投資をすすめる広告が典型例です。この人が言っているなら信用できそう、と思ってクリックすると、LINEやInstagramなどのメッセージ機能を使い、言葉巧みに投資に誘い、出資金をだまし取るのです。

 堀江貴文さんや前澤友作さん、ビル・ゲイツさんやイーロン・マスクさんといった、幅広い事業家や芸能人、知識人の画像と名前を勝手に使った投資詐欺の広告があり、問題になっています。

池上彰さんの写真を無断使用した詐欺広告の例

 SNS型投資詐欺の最初の接触手段は、男性ターゲットと女性ターゲットで異なり、男性ターゲットの場合は「LINE」が23.8%、次いで「Facebook」が22.6%となっています。女性の場合は「Instagram」が32.2%、「LINE」が18.0%です。下位には「投資のサイト」や「動画配信サイト」も挙がっており、大手SNSに限らず、有名人の名前を出しながら投資や資産運用をすすめる広告は、すべて詐欺を疑うべきでしょう。

 広告を見たユーザーが広告を出した詐欺師に接触した後は、LINEなどのメッセージングアプリのやり取りに移行し、その中で信頼させ、お金をだまし取るパターンとなるようです。94.7%の被害例ではLINEのやりとりの中で被害が発生したとされています。

令和6年1月~4月におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等についてより。被害例のうち94.7%において、LINEによるやり取りの中で被害が発生しています

 以上を踏まえ、SNS型投資詐欺の対策のポイントをまとめておきましょう。

SNS型投資詐欺対策のポイント

  • SNSなどに出てくる有名人の投資バナーは、ほぼネット詐欺だと警戒する
  • LINEに誘導されたら、だましてお金を出させたいのだなと警戒する


SNS型ロマンス詐欺は「投資家や著名人からダイレクトメッセージ」が入り口

 SNS型ロマンス詐欺とは、SNSで知り合った相手を口説き落とし、投資や資金援助などの名目でお金を奪い取るネット詐欺の手口です。警察庁では「SNS等を通じて対面することなく、交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ、恋愛感情や親近感を抱かせて金銭等をだまし取る詐欺」と定義しており、こちらも、顔を合わせずメッセージのやり取りを通じて信用させるのが特徴です。

 最初の接触ツールでは、男性女性ともにマッチングアプリ(のダイレクトメッセージ)がトップです。それ以外だと、男性ターゲットではFacebook、女性ターゲットではInstagramが続いています。接触した後にやりとりをするツールは、LINEがトップで全体の94.3%を占めます。

 詐欺師が詐称する身分は、地域では外国人でなく日本人を詐称するケースが78%を占め、職業では「投資家」が34.5%、「その他著名人」が19.7%と多くなっています。かつては外国人(特に欧米の白人)で、軍人や医師といった職業を詐称するケースが多くなっていましたが、手口が周知される中で、詐欺師も試行錯誤しているようです。

 金銭などを要求する名目として、以前は、結婚資金や海外から日本への渡航費が多かったものですが、近年は投資目的が多く、名目ベースでは72.1%、金額ベースでは82.6%を占めています。

令和6年1月~4月におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等についてより。男女とも、マッチングアプリのダイレクトメッセージから始まり、LINEでのやりとりに移行するケースが最多です

 以上を踏まえて、SNS型ロママンス詐欺の対策のポイントをまとめてると、次のようになります。

SNS型ロマンス詐欺対策のポイント

  • ネットで知り合った他人を簡単に信じない
  • ネットで知り合った人に投資を持ちかけられたら詐欺と考える
  • 病気の治療費ややむを得ない借金の返済など、名目で要求されても、お金を渡さない

 今回取り上げた2つの手口の中でも、SNS型投資詐欺についてはテレビなどでも頻繁に取り上げられており、目にしたことが全くないという人も少なくなっていると思います。また、また、SNS型ロマンス詐欺は、手法は少しずつ変わっているにせよ、古典的と言える詐欺です。それなのに、被害が拡大しているのは残念です。手口と対策のポイントを知っていれば、簡単にだまされることはないはずです。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと