被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

「減税」や「給付」の話題に乗じた怪しいメールや電話に気を付けて! すでに被害事例も

 2024年6月から、「定額減税」が実施されています。デフレ脱却を目的とした経済政策のとして、所得税と住民税から1人当たり年間4万円が減税されるというので、注目を集めています。とはいえ、控除ということで納付する(給与などから引かれる)税金の額が減るだけであって、通常は、手元にお金を受け取ることはありません。

 しかし、定額減税で減税しきれない世帯には給付金が支給されます。「お金を受け取ることができる」という話が出れば、ネット詐欺が発生するのは世の常です。福井県警は5月に「定額減税等に便乗した詐欺の発生が予想される」という注意喚起を行っていましたが、すでに被害が発生しています。

国税庁で公開されている定額減税についてのパンフレット。

 確認されているケースは、電話が発端のようです。税金を還付するとして、被害者を誘導してATMを操作させるという手口です。「入金されると」だまして外部に送金させるわけですが、そのことを気付かせないために、「直ちにカードを使うと申請手続きがブロックされる」などと、しばらくカードを使わないように言ったりもしたそうです。女性が通帳を確認し、だまされたことに気が付いたのは数日後のことでした。

 鳥取県では、鳥取税務署の生活減税課を名乗った電話がかかってくるケースもあったようです。税金が還付されるので、取引銀行を教えてくれといいます。この時は、電話を受けた女性が不審に思って警察に相談したことで、事なきを得ました。

 政府は定額減税や給付金を騙った電話、ショートメッセージ(SMS)、メールに注意するよう注意喚起を行っています。国税庁や税務署を騙り、銀行口座情報を聞き出そうとしたり、還付金を支払うと言ってATMを操作させて振り込みをさせるといった事例を紹介しています。

 定額減税については、内閣官房や内閣府、総務省、国税庁、国税局、税務署、都道府県および市区町村は「電話やショートメッセージ、メールで銀行の口座情報を聞き出そうとしたり、ATMの操作をお願いすることは一切ありません」とのことです。

 また、国税局や税務署を含む国税庁はショートメッセージでURLを記載した案内を送信したり、国税の納付を求めたり、差押えの連絡をすることはありません。あまり触れる機会のない「国税」という言葉に焦らず、ネット詐欺なのではないか、という疑問の目で見るようにしてください。

政府から、定額減税を騙った詐欺に関する注意喚起が行われています。

 定額減税に限らず、給付金や還付金などの話が出ると、必ずネット詐欺が流行ります。そして、被害者が出てしまいます。昨年末も還付金詐欺が猛威を振るい、1000万以上の被害にあった方も出ました。一度送金したお金は、取り戻すことが困難です。ATMを操作して税金が返ってくることなどない、ということを肝に銘じておきましょう。

 少しでも不審に思った電話やメールは、無視することが鉄則です。相手が国税庁や税務署を名乗っていても、個人情報を伝えたり、指示に従ったりしてはいけません。警察では、「犯罪や事故に当たるのか分からないけれど、相談したい」という場合のために、相談専用電話(#9110番)も設けています。これは、家族全員で認識しておいてください。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと