清水理史の「イニシャルB」

1733Mbps対応で1万2000円、IPv6 IPoE不要ならアンテナ内蔵で安価なWi-Fiルーター、バッファロー「WSR-2533DHP2」

 バッファローから、無線LANルーターの新製品「WSR-2533DHP2」が発売された。従来モデルからハードウェアを強化することでパフォーマンスを向上させた製品だが、バッファローらしい使いやすさも兼ね備えたバランスのいいモデルだ。その実力をチェックしてみた。

バッファローの無線LANルーター「WSR-2533DHP2」。従来モデルからCPUを強化。アンテナ内蔵で、手頃な価格を実現した高性能モデル

実力的にはハイエンドながら、手の届きやすい価格

 バッファローの無線LANルーターのラインアップで見ると、今回登場した「WSR-2533DHP2」は、トライバンド対応の「WTR-M2133HP」、アンテナ外付けの「WXR-2533DHP2」に続く、3番手に位置するモデルだ。

 従来モデル「WSR-2533DHP」の後継で、CPUを1.35GHzのデュアルコアCPUへ、また無線チップも強化し、スループット性能が50%以上強化されている。

 無線LANのスペックはIEEE 802.11ac wave2準拠の最大1733Mbps(5GHz)+800Mbps(2.4GHz)で、新たにMU-MIMOにも対応。立派なハイエンドモデルと言えるが、実売価格は1万2000円前後で、それほど高い設定とはなっていない。

 "手の届くハイエンドモデル"とでも言ったところで、アンテナ内蔵でコンパクトな点を考慮しても、多くの人にとって購入の候補となりそうな製品だ。

正面
背面
側面

 ちなみに、同じく1733Mbps+800Mbpsに対応したアンテナ外付けの上位モデルであるWXR-2533DHP2との違いは、下の表のようになる。

 スペックでは、アンテナの内蔵と外付け、USBの有無が違いだ。機能面では、WSR-2533DHP2がビームフォーミングEXとペアレンタルコントロールに対応する点が有利だが、WXR-2533DHP2でサポートされているアドバンスドQoSや、IPv6 IPoE・IPv4 over IPv6への対応が、今回のWSR-2533DHP2では省かれている。

WSR-2533DHP2WXR-2533DHP2
実売価格1万2558円1万7908円
対応規格IEEE 802.11ac wave 2/n/a/g/b
2.4GHz帯対応チャネル:1-13ch
対応チャネル:W52(36/40/44/48)
対応チャネル:W53(52/56/60/64)
対応チャネル:W56(100/104/108/112/ 116/120/124/128/132/136/140)
対応バンド数2
通信速度(2.4GHz帯)800Mbps※1
通信速度(5GHz帯-1)1733Mbps
通信速度(5GHz帯-2)×
ストリーム数4
アンテナ数内蔵外付け
変調方式(最大速度時)256QAM
WAN1000Mbps×1
LAN1000Mbps×4
USB×USB 3.0×1
本体サイズ(幅×奥行×高さ)37.5×160×160mm316×161×57mm
重量382g740g

※1 初期設定は20MHz幅設定となっているため最大346.7Mbps。800Mbpsにするには変更が必要

WSR-2533DHP2WXR-2533DHP2
MU-MIMO
ビームフォーミング
ビームフォーミングEX×
バンドステアリング×
オートチャネルセレクト
4Kモード対応アドバンスドQoS×
IPv6 IPoE・IPv4 over IPv6×
Qrsetup
StationRadar
無線引越し機能
ペアレンタルコントロール機能×
ファイル共有/メディア共有×
中継機能

 このうちポイントとなりそうなのは、IPv6 IPoE・IPv4 over IPv6対応だ。

 最近では、混雑回避などの目的で、光回線を「v6プラス」や「transix」に対応するサービスへと切り替える人も少なくないが、今回のWSR-2533DHP2では、これらに対応していない。

 これらを利用する予定がない、もしくは利用する場合でも、ルーターはISPからレンタルされる製品に任せ、WSR-2533DHP2はアクセスポイントとして使う、というのであれば、問題はないだろう。

「引っ越し」というよりSSIDを「増築」できるイメージ

 初期設定に関しては、この分野のパイオニアだけあって、相変わらず、とてもカンタンにできるように工夫されている。

 付属の取扱説明書のページ構成が「本製品の設置(買い換えた方へ)」がメインになっているように、基本的には、既存の無線LANから設定を引き継ぐ「無線引越し機能」による初期設定が可能となっている。

 ISPや携帯電話事業者からのレンタル機器で、無線LANを使っている人が多くなっていることを考えると、無線LANルーターを入れ替えても、PCやスマートフォンといった、すでに無線LANで接続している機器を継続して利用できるこの方法は、とても合理的だ。

 やり方はカンタンで、既存の無線LANルーターを稼働させたままの状態でWSR-2533DHP2を起動し、本体前面のAOSSボタンを約10秒押し、続けて既存の無線LANルーターのWPSボタンを押すだけでいい。

 これで、既存の無線LANルーターのSSIDやパスワードが、WSR-2533DHP2へと引き継がれる。

無線引越し機能を使うと、既存の無線LANルーターのSSIDとパスワードをそのまま引き継げる

 実際、SynologyのRT2600ac(2.4GHzと5GHzでSSIDを分けた状態)を使って試してみたが、無事に設定は移行できたものの、移行できたのは2.4GHz側のみで、5GHz側は引っ越しできなかった。これは、現状、どのメーカーの引っ越し機能でも共通の課題だが、移行元となる既存の無線LANルーターが、WPSでどの帯域を使っているかの問題なので、仕方がないところだ。

 このため環境によっては、引っ越しの後で、一部機器の接続設定をやり直す必要があるかもしれない。ただし、このように端末を新たに無線LANに接続しなければならない状況でも、WSR-2533DHP2なら、さほど手間は掛からない。

 というのも、本製品では、引っ越しによって引き継がれるSSIDやパスワードは、マルチSSIDの一部として、「SSID3」に「追加」されるからだ。

標準のSSIDとパスワードはSSID1に残したまま、引き継がれた情報がSSID3に追加される

 本製品には、出荷時設定でSSIDとパスワードが登録済みだが、この情報はSSID1に登録されており、無線引越し機能を使っても上書きされずに残っている。このため、本体底面に仕込まれているセットアップカードのQRコードを使い、手軽にスマートフォンなどを無線LANに接続できるようになっている。もちろん、WPSなどを使って接続しても構わない。

 QRコードの読み取りには、「QRsetup」というアプリが必要だが、これでiPhoneのようにWPSに対応しない端末でも、手間なく接続できる。

 ほかの製品には、標準のSSIDが引っ越し機能によって上書きされてしまうものもあるが、本製品では、標準のSSID+引っ越しのSSIDという組み合わせで利用できるわけだ。イメージとしては、引っ越しというより、増築という感じだ。

QRsetupアプリを使うことで、標準設定のSSIDにカンタンに接続できる
本体設定用の「StationRader」アプリも提供される

アンテナ内蔵ながら、通信の実力は十分

 気になる通信の実力だが、アンテナ内蔵で本体がコンパクトなわりにパフォーマンスは悪くない。下のグラフは、木造3階建ての筆者宅で、1階にWSR-2533DHP2を設置し、各階でiPerfにより速度を計測した結果だ。

DownUp
1F541598
2F436386
3F入口273262
3F窓際36.945.2

※検証環境 サーバー:Intel NUC DC3217IYE(Core i3-3217U:1.3GHz、SSD 128GB、メモリ 4GB、Windows Server 2012 R2) クライアント:Macbook Air MD711J/A(Core i5 4250U:1.3GHz、IEEE 802.11ac<最大866Mbps>)

 利用したクライアントの最大速度が866Mbpsなので、1階の上限は600Mbpsに届いておらず、1733Mbpsの実力は発揮し切れていないが、2階で400Mbpsオーバー、3階で200Mbpsオーバーは立派な結果と言える。

 ただし、やはりアンテナを内蔵する関係からか、もっとも遠い3階窓際は、30~40Mbpsとあまり速度は高くない。これでも十分に実用的ではあるが、大容量データのダウンロードや動画の再生などの用途に使いたい場合は、中継機の併用も検討すべきだろう。

ペアレンタルコントロールは悪くはないが……

 このほか、特徴的な機能にペアレンタルコントロールがある。「i-フィルター for BUFFALO」を利用したウェブフィルタリング(60日間無料使用可)と、接続可能な時間帯を制限できる「キッズタイマー」を利用できる。

 キッズタイマーは、ドラッグ&ドロップで時間設定などができるなど、手軽に設定できるように工夫されてはいるが、MACアドレスをベースに端末を個別に設定しなければならない。

 PCやスマートフォン、ゲーム機など、機器ごとに個別に利用可能な時間を設定できるメリットはあるが、やはり1台ずつの設定は手間が掛かる。海外製のメッシュWi-Fi製品の一部では、人に対して複数の端末を割り当てるプロファイルベースの管理ができるので、こうした方法への対応も、そろそろ検討してほしいところだ。

v6プラスやtransixを使わないならお買い得

 以上、バッファローから登場したWSR-2533DHP2を実際に試してみたが、1733Mbps対応製品ながら、コンパクトかつ手の届きやすい価格で、同社のラインナップの中では、非常に買いやすい製品となっている。

 個人的には、現代の無線LAN製品に求められる機能は、IPv6 IPoE・IPv6 over IPv4対応、引っ越し機能、スマホ設定、ペアレンタルコントロールあたりだと考えている。本製品は、そのうちIPv6 IPoE・IPv6 over IPv4対応が欠けている点は残念だが、利用する回線環境によっては不要なので、割り切ってしまえば、欠点とはならないだろう。

 基本性能は高いので、純粋に無線環境をグレードアップしたい場合にお勧めの製品と言えそうだ。

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清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。