清水理史の「イニシャルB」
1733Mbps対応で1万2000円、IPv6 IPoE不要ならアンテナ内蔵で安価なWi-Fiルーター、バッファロー「WSR-2533DHP2」
2018年10月1日 06:00
バッファローから、無線LANルーターの新製品「WSR-2533DHP2」が発売された。従来モデルからハードウェアを強化することでパフォーマンスを向上させた製品だが、バッファローらしい使いやすさも兼ね備えたバランスのいいモデルだ。その実力をチェックしてみた。
実力的にはハイエンドながら、手の届きやすい価格
バッファローの無線LANルーターのラインアップで見ると、今回登場した「WSR-2533DHP2」は、トライバンド対応の「WTR-M2133HP」、アンテナ外付けの「WXR-2533DHP2」に続く、3番手に位置するモデルだ。
従来モデル「WSR-2533DHP」の後継で、CPUを1.35GHzのデュアルコアCPUへ、また無線チップも強化し、スループット性能が50%以上強化されている。
無線LANのスペックはIEEE 802.11ac wave2準拠の最大1733Mbps(5GHz)+800Mbps(2.4GHz)で、新たにMU-MIMOにも対応。立派なハイエンドモデルと言えるが、実売価格は1万2000円前後で、それほど高い設定とはなっていない。
"手の届くハイエンドモデル"とでも言ったところで、アンテナ内蔵でコンパクトな点を考慮しても、多くの人にとって購入の候補となりそうな製品だ。
ちなみに、同じく1733Mbps+800Mbpsに対応したアンテナ外付けの上位モデルであるWXR-2533DHP2との違いは、下の表のようになる。
スペックでは、アンテナの内蔵と外付け、USBの有無が違いだ。機能面では、WSR-2533DHP2がビームフォーミングEXとペアレンタルコントロールに対応する点が有利だが、WXR-2533DHP2でサポートされているアドバンスドQoSや、IPv6 IPoE・IPv4 over IPv6への対応が、今回のWSR-2533DHP2では省かれている。
WSR-2533DHP2 | WXR-2533DHP2 | |
実売価格 | 1万2558円 | 1万7908円 |
対応規格 | IEEE 802.11ac wave 2/n/a/g/b | ← |
2.4GHz帯対応チャネル:1-13ch | ○ | ← |
対応チャネル:W52(36/40/44/48) | ○ | ← |
対応チャネル:W53(52/56/60/64) | ○ | ← |
対応チャネル:W56(100/104/108/112/ 116/120/124/128/132/136/140) | ○ | ← |
対応バンド数 | 2 | ← |
通信速度(2.4GHz帯) | 800Mbps※1 | ← |
通信速度(5GHz帯-1) | 1733Mbps | ← |
通信速度(5GHz帯-2) | × | ← |
ストリーム数 | 4 | ← |
アンテナ数 | 内蔵 | 外付け |
変調方式(最大速度時) | 256QAM | ← |
WAN | 1000Mbps×1 | ← |
LAN | 1000Mbps×4 | ← |
USB | × | USB 3.0×1 |
本体サイズ(幅×奥行×高さ) | 37.5×160×160mm | 316×161×57mm |
重量 | 382g | 740g |
※1 初期設定は20MHz幅設定となっているため最大346.7Mbps。800Mbpsにするには変更が必要
WSR-2533DHP2 | WXR-2533DHP2 | |
MU-MIMO | ○ | ← |
ビームフォーミング | ○ | ← |
ビームフォーミングEX | ○ | × |
バンドステアリング | × | ← |
オートチャネルセレクト | ○ | ← |
4Kモード対応アドバンスドQoS | × | ○ |
IPv6 IPoE・IPv4 over IPv6 | × | ○ |
Qrsetup | ○ | ← |
StationRadar | ○ | ← |
無線引越し機能 | ○ | ← |
ペアレンタルコントロール機能 | ○ | × |
ファイル共有/メディア共有 | × | ○ |
中継機能 | ○ | ← |
このうちポイントとなりそうなのは、IPv6 IPoE・IPv4 over IPv6対応だ。
最近では、混雑回避などの目的で、光回線を「v6プラス」や「transix」に対応するサービスへと切り替える人も少なくないが、今回のWSR-2533DHP2では、これらに対応していない。
これらを利用する予定がない、もしくは利用する場合でも、ルーターはISPからレンタルされる製品に任せ、WSR-2533DHP2はアクセスポイントとして使う、というのであれば、問題はないだろう。
「引っ越し」というよりSSIDを「増築」できるイメージ
初期設定に関しては、この分野のパイオニアだけあって、相変わらず、とてもカンタンにできるように工夫されている。
付属の取扱説明書のページ構成が「本製品の設置(買い換えた方へ)」がメインになっているように、基本的には、既存の無線LANから設定を引き継ぐ「無線引越し機能」による初期設定が可能となっている。
ISPや携帯電話事業者からのレンタル機器で、無線LANを使っている人が多くなっていることを考えると、無線LANルーターを入れ替えても、PCやスマートフォンといった、すでに無線LANで接続している機器を継続して利用できるこの方法は、とても合理的だ。
やり方はカンタンで、既存の無線LANルーターを稼働させたままの状態でWSR-2533DHP2を起動し、本体前面のAOSSボタンを約10秒押し、続けて既存の無線LANルーターのWPSボタンを押すだけでいい。
これで、既存の無線LANルーターのSSIDやパスワードが、WSR-2533DHP2へと引き継がれる。
実際、SynologyのRT2600ac(2.4GHzと5GHzでSSIDを分けた状態)を使って試してみたが、無事に設定は移行できたものの、移行できたのは2.4GHz側のみで、5GHz側は引っ越しできなかった。これは、現状、どのメーカーの引っ越し機能でも共通の課題だが、移行元となる既存の無線LANルーターが、WPSでどの帯域を使っているかの問題なので、仕方がないところだ。
このため環境によっては、引っ越しの後で、一部機器の接続設定をやり直す必要があるかもしれない。ただし、このように端末を新たに無線LANに接続しなければならない状況でも、WSR-2533DHP2なら、さほど手間は掛からない。
というのも、本製品では、引っ越しによって引き継がれるSSIDやパスワードは、マルチSSIDの一部として、「SSID3」に「追加」されるからだ。
本製品には、出荷時設定でSSIDとパスワードが登録済みだが、この情報はSSID1に登録されており、無線引越し機能を使っても上書きされずに残っている。このため、本体底面に仕込まれているセットアップカードのQRコードを使い、手軽にスマートフォンなどを無線LANに接続できるようになっている。もちろん、WPSなどを使って接続しても構わない。
QRコードの読み取りには、「QRsetup」というアプリが必要だが、これでiPhoneのようにWPSに対応しない端末でも、手間なく接続できる。
ほかの製品には、標準のSSIDが引っ越し機能によって上書きされてしまうものもあるが、本製品では、標準のSSID+引っ越しのSSIDという組み合わせで利用できるわけだ。イメージとしては、引っ越しというより、増築という感じだ。
アンテナ内蔵ながら、通信の実力は十分
気になる通信の実力だが、アンテナ内蔵で本体がコンパクトなわりにパフォーマンスは悪くない。下のグラフは、木造3階建ての筆者宅で、1階にWSR-2533DHP2を設置し、各階でiPerfにより速度を計測した結果だ。
Down | Up | |
1F | 541 | 598 |
2F | 436 | 386 |
3F入口 | 273 | 262 |
3F窓際 | 36.9 | 45.2 |
※検証環境 サーバー:Intel NUC DC3217IYE(Core i3-3217U:1.3GHz、SSD 128GB、メモリ 4GB、Windows Server 2012 R2) クライアント:Macbook Air MD711J/A(Core i5 4250U:1.3GHz、IEEE 802.11ac<最大866Mbps>)
利用したクライアントの最大速度が866Mbpsなので、1階の上限は600Mbpsに届いておらず、1733Mbpsの実力は発揮し切れていないが、2階で400Mbpsオーバー、3階で200Mbpsオーバーは立派な結果と言える。
ただし、やはりアンテナを内蔵する関係からか、もっとも遠い3階窓際は、30~40Mbpsとあまり速度は高くない。これでも十分に実用的ではあるが、大容量データのダウンロードや動画の再生などの用途に使いたい場合は、中継機の併用も検討すべきだろう。
ペアレンタルコントロールは悪くはないが……
このほか、特徴的な機能にペアレンタルコントロールがある。「i-フィルター for BUFFALO」を利用したウェブフィルタリング(60日間無料使用可)と、接続可能な時間帯を制限できる「キッズタイマー」を利用できる。
キッズタイマーは、ドラッグ&ドロップで時間設定などができるなど、手軽に設定できるように工夫されてはいるが、MACアドレスをベースに端末を個別に設定しなければならない。
PCやスマートフォン、ゲーム機など、機器ごとに個別に利用可能な時間を設定できるメリットはあるが、やはり1台ずつの設定は手間が掛かる。海外製のメッシュWi-Fi製品の一部では、人に対して複数の端末を割り当てるプロファイルベースの管理ができるので、こうした方法への対応も、そろそろ検討してほしいところだ。
v6プラスやtransixを使わないならお買い得
以上、バッファローから登場したWSR-2533DHP2を実際に試してみたが、1733Mbps対応製品ながら、コンパクトかつ手の届きやすい価格で、同社のラインナップの中では、非常に買いやすい製品となっている。
個人的には、現代の無線LAN製品に求められる機能は、IPv6 IPoE・IPv6 over IPv4対応、引っ越し機能、スマホ設定、ペアレンタルコントロールあたりだと考えている。本製品は、そのうちIPv6 IPoE・IPv6 over IPv4対応が欠けている点は残念だが、利用する回線環境によっては不要なので、割り切ってしまえば、欠点とはならないだろう。
基本性能は高いので、純粋に無線環境をグレードアップしたい場合にお勧めの製品と言えそうだ。