清水理史の「イニシャルB」

あのAtermがメッシュに対応! テレワークの「途切れる」「届かない」悩みは「Aterm WG2600HP4」で解決

6千円の低いコストが魅力の下位モデル「Aterm WG1200HP4」ともメッシュが組める

 NECプラットフォームズから、Atermシリーズの「Aterm WG2600HP4」および「Aterm WG1200HP4」が登場した。最大の注目点は、複数台で電波のカバーエリアを拡張できる「メッシュ」に対応した点だ。

 Atermならではの安定性と使いやすさはそのままに、アンテナ技術にも改良が加えられた最新モデルとなっている。ヒートマップによる電波の見える化で、そのメッシュWi-Fiの実力を検証してみた。

電波が届かない! 遅い! を解消するメッシュ対応のWi-Fiルーターに対する需要が高まっている(写真は右からAterm WG2600HP4、Aterm WG1200HP4)

そのテレワークの悩み、メッシュで解決!

 テレワークが一般化した今、家庭内をオンライン会議ができそうな場所を求めてさまよったり、家族との同時利用を考慮してスケジュールを決めたりと、テレワークならではの悩みに疲れ始めた人も少なくないことだろう。

 映り込む背景や人の出入り、生活音の影響などを考えると、普段使わない部屋を確保するのが理想的だが、そういった部屋に限ってWi-Fiの電波が届きにくく、オンライン会議の映像が途切れたり、画質や音質の悪さを我慢しながら使ったりしなければならない。

 その上、オンライン会議の時間が家族と重なったり、学校や学習塾の遠隔授業で帯域がすでに占有されていたりと、家のWi-Fiの使用率は上がることはあっても、今後下がることはなかなかないだろう。

 今までなら、そもそも電波が届かない部屋があったとしても、そこではWi-Fiを使わないという選択肢があったし、さらに言えば、ウェブサイトが見られれば十分と、Wi-Fiの速度をあまり気にする必要もなかった。しかし今や、そうしたWi-Fi環境は過去のものとなりつつある。

 こうした状況下において、大きな注目を集めるようになってきたのが、メッシュに対応したWi-Fiルーターだ。

複数のアクセスポイントで広範囲をカバーできるAtermのメッシュ対応モデル

 今回、Atermシリーズに追加された新モデルは4製品あるが、このうちメッシュに対応するのは、型番の末尾が「HP4」となるAterm WG2600HP4とAterm WG1200HP4の2製品だ。

 いずれもWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)に対応した製品で、Aterm WG2600HP4が4ストリーム、最大1733Mbpsで実売価格は税込1万1100円ほど。一方のAterm WG1200HP4は、2ストリームで最大867Mbpsに対応し、実売価格が6000円前後とリーズナブルなのが特徴だ。

メッシュに対応したAterm WG2600HP4。Wi-Fi 5の4ストリームで、最大1733Mbpsに対応する
同じくメッシュに対応したAterm WG1200HP4。Wi-Fi 5の2ストリームで、最大867Mbpsに対応

 メッシュは、今まで1台のWi-Fiルーターでカバーしていたエリアを、複数のアクセスポイントによって広範囲をカバーできるようになる仕組みだ。

 例えば、3階建ての住宅で、今まで1階に設置したアクセスポイントのみで家中をカバーしていた場合に、3階にアクセスポイントを追加することで家中をカバーするようにできる。

 いわば、点ではなく面、もしくは三次元の発想で空間を捉えるWi-Fi環境と言える。

 中継機に似ている部分もあるが、メッシュの場合、アクセスポイント間の通信経路を自動的に最適化したり、ユーザーが移動しながら通信する際に電波の状態を自動的に判断して接続先のアクセスポイントをスムーズに切り替えたりと、複数のアクセスポイントを連携し、より効率的に活用できるのが特徴だ。

 もちろん、ルーター1台からスタートして、電波が届かない場所があったり、速度面での不満が出たりしたときに、後からアクセスポイントを追加してカバーするエリアを拡張するといったことも可能だ。このため、通信速度が遅く古いWi-Fiルーターからの置き替えにも最適だ。

11ac4ストリームで最大1733Mbpsの「Aterm WG2600HP4」異なるモデルでのメッシュを構成にも対応

 今回はAterm WG2600HP4を中心にレビューをするが、2ストリーム対応のAterm WG1200HP4も注目の製品だ。それこそ2台構成のメッシュ環境が1万円強で構築できる上、ファームウェアの自動バージョンアップやWPA3など、新モデルならではの機能も搭載されている。

 IPoE IPv6(IPv4 over IPv6)関連の機能も強化され、OCNバーチャルコネクトやクロスパスといったサービスへの対応や、IPv6の「DHCPv6-PD」への対応も実装されている。

 さらに今回の製品は、同じモデル同士はもちろん、Aterm WG2600HP4+Aterm WG1200HP4という、異なるモデルを組み合わせでメッシュを構成することも可能だ。

 基本的にこれまでのメッシュ製品は、同一メーカーの同一モデル(同一チップベンダーモデル)でないとメッシュを構成できない場合が多く、組み合わせに制限があった。

 さらに、もしかすると「メッシュは高額」というイメージを持っている人も少なくないと思われるが、こうした選択肢が限られる点が影響していた側面も大きいのかもしれない。

 これに対してAtermシリーズのメッシュ方式は、チップベンダーにとらわれない汎用的な方式となっており、対象モデルの確認は必要なものの、組み合わせを比較的自由に選べる。

 カバーしたいエリアが広く、接続する台数も多ければ、初めからAterm WG2600HP4×2を用意してもいいが、利用者や同時接続の台数が少ないなら、Aterm WG1200HP4×2の構成もコスト的な魅力が大きい。もちろん、Aterm WG2600HP4、もしくはAterm WG1200HP4のいずれかでスタートし、様子を見ながら追加するモデルを後で選ぶ手もある。

 接続台数やコストなどを検討して、最適な組み合わせで利用するといいだろう。

Aterm WG2600HP4Aterm WG1200HP4
実売価格(税込)約1万1000円約6000円
Wi-Fi対応規格IEEE 802.11ac/n/a/g/b
バンド数2
最大速度(2.4GHz)800Mbps300Mbps
最大速度(5GHz-1)1733Mbps867Mbps
最大速度(5GHz-2)
チャネル(2.4GHz)1~13
チャネル(5GHz-1)W52/W53/W56
チャネル(5GHz-2)
新電波法(144ch)
ストリーム数42
アンテナ内蔵
WPA3
DS-Lite
MAP-E
WAN1000Mbps×1
LAN1000Mbps×41000Mbps×3
USB
動作モードRT/AP/CNV
ファーム自動更新
サイズ(幅×奥行×高さ)38×129.5×170mm33×97×146mm

アンテナがさらに進化! 全方位カバーで端末の向きを意識せずとも電波が届く

 それでは実機を見ていこう。

 デザインは従来モデルから大きく変化しておらず、サイズも同じだ。どこに設置しても違和感がない落ち着いたデザインは、相変わらずAtermならではの美点だ。Atermシリーズが長らくこだわり続けてきたアンテナの内蔵も健在で、無駄な主張がなく、シンプルで好印象だ。

正面

 しかも、このアンテナがスゴイ。

 Atermシリーズのアンテナの進化には、毎回感心させられるが、今回のAterm WG2600HP4でも「ワイドレンジアンテナPLUS」という技術が採用されている。

 内蔵されている4本のアンテナが、全て3直交タイプの「μSR+無給電」アンテナとなっており、1本ずつのアンテナがそれぞれ前後、左右、上下の全方位をカバーできるようになっている。

側面
背面

 外付けアンテナを採用したWi-Fiルーターでは、例えば3階建ての建物で、上の階に電波を届けるためにアンテナを水平方向に調整する必要があるが、本製品では、こうしたアンテナ調整の手間が一切必要ない。

 それだけでなく、端末の「向き」も意識する必要がない。スマートフォンのような機器では縦向き、横向き、平置きなど、端末の向きによって内部のアンテナの方向が変わってしまうため、アクセスポイント側のアンテナの向きによっては相性が悪く、Wi-Fiの感度が落ちたり、速度が低下する現象が見られた。

 こうした端末の向きの違いによる速度変化が、全方位をカバーするAterm WG2600HP4のワイドレンジアンテナPLUSでは、発生しにくいことになる。

Aterm WG2600HP4に新たに採用された「ワイドレンジアンテナPLUS」

 アンテナの技術は地味なものだが、実は最も技術力が問われる部分で、まさに日本製品らしい“匠の技”と言える。「安定性のAterm」を裏付ける技術の1つと言えるだろう。

初期設定もメッシュ構成の設定も簡単にできる

 安定性に加え、使いやすさもAtermシリーズの特徴の1つだが、本製品も初期設定が簡単だ。

 同梱のQRコードを専用アプリ「らくらくQRスタート2」で読み込むだけで初期設定のための接続が可能で、インターネット接続に関しても回線環境を自動的に判断し、接続設定が済む。

 筆者宅では、テスト用回線を複数用意していて、DHCP、PPPoE、DS-Liteでも接続できるようにしているが、こうした環境でも正確にDS-Liteを選択して自動接続してくれた(メーカーによってはDHCPと判断するケースも多い)。

QRコードを読み取ることですぐに接続可能
インターネット接続も自動判定で正確だ

 IPoE IPv6を使ったサービスへの対応も拡張され、v6プラス/transix/IPv6オプション/OCNバーチャルコネクト/クロスパスの各方式が利用できる。

 こういった国内の回線事情を知り尽くした上で、ユーザーが意識することなく使えるようにしている点は、さすがAtermという印象だ。

LAN直結でメッシュ構成可能。オートチャネルセレクトやバンドステアリングでシームレスに良好接続

 さて、肝心のメッシュの構成については、複数の方法で設定が可能となっているが、今回は一番簡単と思われるLANケーブルを使った接続を試してみた。

 1台目のAterm WG2600HP4を設置後、このLANポートに挿したケーブルを、2台目として設置するAterm WG2600HP4のWANポートへ接続する。この状態で、2台目の背面のスイッチを「CNV」に切り替えて電源を入れると、1台目と2台目で自動的にメッシュの構成が実行されるのだ。

 その後、前面のランプで設定の完了が確認できたら、ケーブルを取り外して2台目を家の別の場所に設置するだけでメッシュの構成作業は完成だ。

 設置してあるアクセスポイントが2台あり、それぞれ利用できる帯域が5GHz帯×1、2.4GHz帯×1の2系統あるので、接続先としては4つあるのだが、利用者がそれを意識する必要は全くない。

 オートチャネルセレクト機能によって、電波状態のいいチャネルが自動的に選択される上、アクセスポイント同士を接続するためのメッシュのバックホールも、自動的に5GHz帯と2.4GHz帯のいずれか良好な帯域を選択してくれる(標準は5GHz帯接続)。

2台のアクセスポイントの接続状態をグラフィカルに確認可能。画面ではバックホールが5GHz帯で接続されていることが分かる
各アクセスポイントを選択すると、そこに接続されている端末などを「見えて安心ネット」で確認できる

 接続先のSSIDは、「aterm-xxxxxx-a」など1つに統一されるので、スマートフォンやPCなどをWi-Fiにつなぐときも、そこに接続するだけで、あとは全て「良きに計らって」くれる。

SSIDは1つで意識せずに利用可能。チャネルも自動選択。ローミングも自然と意識せずに利用できる

 また、バンドステアリングによって、端末の対応規格や、5GHz帯と2.4GHz帯のどちらが空いているかを自動的に判断し、必要に応じて適切な帯域へと接続先を自動的に変更してくれる上、移動時のローミングも自動的に適切に制御してくれる。

 例えば、3階建ての住宅で1台目を1階に、2台目を3階に設置したとしよう。この際、スマートフォンで動画などを再生しながら、1階から3階へと移動した場合、移動の途中(おおむね2階近辺)で自動的に接続先のアクセスポイントを1階の1台目から、3階の2台目へと切り替えてくれる。

 もちろん、接続先が切り替わっても映像が途切れることはない。こうしたメッシュならではのシームレスなローミングが、Atermでももちろん実現できているわけだ。

 つまり、2台のメッシュによって確実に使えるエリアが広がり、速度も向上(後述)するが、ユーザーはアクセスポイントが2台あることや、それがメッシュ構成であることを、一切意識しなくて済む。

 さらに言うと、最新のWPA3への対応でしっかりとWi-Fiのセキュリティを確保できる上、ファームウェアの自動バージョンアップによってユーザーが何もしなくても最新のファームウェアで安全性を確保できる。

 いや、何というか、「縁の下の力持ち感」がすごい。こういったあたりが、安心感や信頼性へとつながっているのだろう。

3階窓際で40Mbps→256Mbps、メッシュの効果は明らか

 それでは、実際のメッシュの実力を見てみよう。

 今回は、いつものiPerf3による実効速度に加えて、「NetSpot」というツールを利用したヒートマップも作成してみた。

 以下の図は、Aterm WG2600HP4を1階に1台設置した場合と、1階と3階に2台設置したメッシュ構成とした場合のヒートマップだ。電波レベルのみを計測した場合と、ノイズを考慮したSNR(電波レベル―ノイズレベル)の結果になる。赤が電波レベルが高いエリアで、黄→緑→青と、色が寒色系になるほど電波レベルが弱くなる様子を表している。

 これを見ると、1台のみの場合、1階の屋外、2階の窓際、3階の窓際それぞれの画像の下側に緑色のエリアがあるが、メッシュ構成の場合には、これが見事に赤色へ変わっていることが分かる。

 ちなみに、どれくらいの電波レベルのときに、どれくらいの速度でリンクするかは、利用する規格や周波数帯、チャネル幅、さらに機器側の制御によって異なる。

 目安としては、5GHz帯でIEEE 802.11ac(80MHz幅)の場合、-64dBmでMCS9(867Mbps)、-87dBmでMCS0(65Mbps)と想定すると、赤い部分はほぼ867Mbpsでリンク可能で、1台構成3階の下側など-70dBmのあたりは、おおむねMCS6(585Mbps)~MCS7(650Mbps)でリンクするくらいの想定となる。

 要するに、1台のみでは速度が低下するエリアがあるが、2台のメッシュ構成にすることで家中のどこでも867Mbps(一般的なクライアントのフルスピード)でリンクすることになる。

 続いて実効速度を見てみよう。前述したヒートマップは、電波レベル(とフロアノイズ)しか見ていないが、実際の通信速度は、こうした電波レベルから、さらにいろいろな要素(エラー訂正や再送、中継ロス)などの影響を受ける。

iPerfテスト
1F2F3F入口3F窓際
Aterm WG2600HP4単体上り58432014012
下り59747524038
メッシュ(2台構成)上り553301204187
下り587469285256

 ※サーバー:Synology DS1517+、クライアント:iPhone 11

 とはいえ、その差は歴然で、黄色系のグラフ(1台構成)に比べ、青系(メッシュ構成)の結果が、特に長距離で際立って高くなっている。

 2階までは大きな差はないが、3階の窓際では、1台構成では下りで40Mbps前後だった速度(先のヒートマップで緑色だったエリア)が、256Mbpsにまで上昇している。この差は大きい。

 単純に200Mbps以上の速度が出るのは有利だが、冒頭で触れたようにテレワークで3階からオンライン会議に参加する場合も安定した速度が実現できる。また、200Mbpsの帯域が確保できれば、単純に端末が2台のときは100Mbpsずつ、4台なら50Mbpsずつの帯域を確保できる。これだけの帯域があれば、複数のオンライン会議が重なっても、安定した通信が可能なはずだ。

メッシュ構成も比較的自由、アンテナが進化して使いやすいWi-Fiルーター

 以上、NECプラットフォームズから発売されたAterm WG2600HP4を実際にテストしてみたが、メッシュの実力の高さを実感させられた印象だ。

 ワイドレンジアンテナPLUSの効果も大きく、上記iPhone 11を使ったiPerf3の複数回の計測でも安定した速度が表示されていたのが印象的だ。

 おそらく、メッシュ構成時にアクセスポイント同士をつなぐバックホール接続においても、ワイドレンジアンテナPLUSの恩恵で、位置や向きに左右されない安定したバックホール接続が実現できているのではないかと推測できる。

 デザインもシンプルで、使いやすさも高く、IPv6サービスの対応も豊富で、WPA3やファームウェア自動更新などで安心して利用できる。速度、安定性、信頼性と、どの部分を見ても満足度が高いWi-Fiルーターと言えるだろう。

(協力:NECプラットフォームズ株式会社)

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。