清水理史の「イニシャルB」

欲しいならセールまで待て! Amazonから登場したメッシュルーター「eero 6+」を試す

Amazonから発売されたWi-Fiメッシュシステム「eero 6+」

 Amazonから、メッシュWi-Fiシステム「eero」シリーズが登場した。米国では以前から有名なブランドで、独自のメッシュシステム「TrueMesh」の採用と、AmazonのEchoシリーズを中継機として使える点、そしてデザインが秀逸なことが特長の製品となっている。エントリーモデルとなるWi-Fi 6対応の「eero 6+」の2台セットを購入したので、その実力を検証してみた。

強気の価格設定

 結論から言ってしまうと、今回検証したeero 6+だけでなく、eeroシリーズは全体的に割高な印象だ。

 個人的には、既存のWi-Fiルーターの中でも1、2を争う秀逸なデザインで、使いやすさも問題なく、性能もそこそこだと思うが、競合となる同クラスの製品と比べると価格が高すぎる。

 具体的にライバル製品と比べてみよう。海外メーカーのTP-Link、国内メーカーのバッファローの同クラスの製品と、実売価格を比べたのが以下のリストだ。いずれも2024年9月19日にAmazon.co.jpにて確認した価格となる。

Wi-Fi 7 BE18000クラス 10Gbps対応メッシュルーター

  • Amazon「eero MAX 7」 実売価格:9万5980円(1台)
  • TP-Link「Deco BE85」 実売価格:4万9790円(1台)
  • バッファロー「WXR-18000BE10P」 実売価格:6万4980円(1台)

Wi-Fi 6E AX5400クラス 2.5Gbps対応メッシュルーター

  • Amazon「eero Pro 6E」 実売価格:6万480円(2台)
  • TP-Link「Deco XE75」 実売価格:3万1000円(2台)
  • バッファロー「WNR-5400XE6P」 実売価格:3万3480円(2台)

Wi-Fi 6 AX3000クラス 1Gbps対応メッシュルーター

  • Amazon「eero 6+」 実売価格:2万8980円(2台)
  • TP-Link「Deco X50」 実売価格:2万280円(2台)
  • バッファロー「WNR-3000AX4」 実売価格:1万8979円(2台)

 エントリーモデルの「eero 6+」は、まだ価格面でもライバルに対して健闘しているとは言えるが、Wi-Fi 6Eの「eero Pro 6E」、Wi-Fi 7の「eero MAX 7」は、競合製品の1.4~1.8倍ほどの価格設定になっている。このため、デザインと「Echoシリーズを中継機として使える」というeeroならではの特徴に対して価値を見出せるかが、本製品を購入するかどうかの判断基準となる。

 もちろん、惜しくないと考える人もいれば、そうではない人もいることだろう。仮に惜しくないとしても、Amazon製デバイスはセールで大幅に値引きされる傾向があるため、タイムセール、プライムデー(2024年はすでに終了)、プライム感謝祭、ブラックフライデー、ホリデーセールなどの同社のセールを狙って、もう少し安く購入するようにすることを、強くおすすめする。

デザインは文句なし

 それでは、実際の製品をチェックしていこう。

 今回、筆者が購入したのは、Wi-Fi 6に対応した「eero 6+」の2台セットだ。スペックは以下のようになっており、Wi-Fiは5GHz+2.4GHzのデュアルバンド対応で、5GHz帯が2ストリーム160MHz幅時に最大2402Mbps、2.4GHz帯が2ストリーム40MHz幅で最大574Mbpsとなる。

eero 6+
価格2万8980円(2台セット)
CPU1GHz Dual-core
メモリ512MB
無線LANチップ(5GHz)-
対応規格IEEE 802.11ax/ac/n/a/g/b
バンド数2
320MHz対応×
最大速度(2.4GHz帯)574Mbps
最大速度(5GHz帯)2402Mbps
最大速度(6GHz帯)-
チャネル(2.4GHz帯)自動選択
チャネル(5GHz帯)自動選択
チャネル(6GHz帯)-
ストリーム数(2.4GHz帯)2
ストリーム数(5GHz帯)2
ストリーム数(6GHz帯)-
アンテナ内蔵
WPA3
メッシュ
IPv6
IPv6 over IPv4(DS-Lite)×
IPv6 over IPv4(MAP-E)×
有線1Gbps×2
有線(LAG)-
USBType-C(給電用)
セキュリティ〇(サブスク)
USBディスク共有-
VPNサーバー-
動作モードメッシュルーター/ブリッジ
ファーム自動更新
LEDコントロール
サイズ(mm)99.4×97×65.9

 正直、筆者としては、メッシュ構成(Echoを中継に使う場合も含む)で使うならトライバンド以上を推奨したいので、Wi-Fi 6E対応の「eero Pro 6E」か、Wi-Fi 7対応の「eero MAX 7」をおすすめしたいが、この2台は前述したとおり高価なので、実質的には、エントリーモデルとなるこの「eero 6+」を選ぶ人が多くなるだろう。

 有線は、本体背面に2ポートあり、いずれも1Gbpsに対応している。WAN/LANの区別なく、自動認識で利用できるのは、TP-LinkのDecoシリーズなどと同じだ。

正面、側面、背面

 サイズは99.4×97×65.9mmとコンパクトだが、手のひらサイズというほど小さいわけではない。とはいえ、設置面積も小さく、目立たないので置き場所には困らないだろう。

十分コンパクトだが、手のひらサイズというほどでもない。また、光沢も強い

 カラーは、ホワイト一色で清潔感があるが、意外に光沢があり、頭上に照明があると、しっかり反射する。本体上部には「eero」というロゴがエンボス加工されている。こちらも思ったより大きなサイズだが、嫌味なく、きれいにまとめられている印象だ。

 よくよく見ると、エッジのラインが微妙に波打つような複雑な構成となっているのが凝ったポイントで、シンプルなのに味わい深い秀逸なデザインと言える。「eero」というブランドの目新しさもあり、美しさというか、カッコよさというか、感性的な評価としてはトップクラスの製品と言っていいだろう。

 なお、LEDは、本体上部、ロゴの少し下あたりに搭載されており、普段は白く点灯し、セットアップ時などに青く光る仕様になっている。日中は、白のみなので目立たないだろう。

 もちろん、設定アプリで明るさを調整したり、オフにしたりすることも可能だ。個人的には、通信機器のLEDは基本オフ(最低でも夜間オフ)で、メンテナンス時のみ確認できればいいと思っているので、このような「生活」を考慮した機能はありがたい印象だ。

LEDの調整機能はとても大切

DS-Lite、MAP-Eには非対応

 セットアップは、同社製の「eero」アプリを利用して実行する。

 初期設定は、Bluetooth経由で実行される方式で、周囲のeeroを自動的に認識後、インターネット接続設定やWi-FiのSSID、暗号キーを設定するという流れになる。

 画面上で機器の接続方式が案内されるなど、ユーザーを導く工夫は十分で、使いやすい製品と言っていい。国内メーカーは紙のマニュアルで丁寧に説明するが、eeroやTP-Linkなど、海外メーカーはアプリで説明する方式が主流となっている。

海外メーカーのメッシュシステムはアプリで接続までガイドされるのが一般的
初期設定はBluetoothを利用
eeroアプリの画面。設定や管理はアプリから実行する

 ただし、課題は回線の設定だ。IPv6そのものには対応しているが(DHCP環境でIPv6割り当てを確認)、すでに国内で主流になりつつあるMAP-EやDS-LiteなどのIPv4 over IPv6の接続方式には対応しておらず、PPPoEやDHCP、固定IPでしか接続できない。

 海外メーカーの初期モデルにおける“あるある”だが、本製品も、日本の回線事情を調査せずに製品を市場に投入してしまっている。現状、国内で高い評価を得ている海外メーカーは、こうした国内対応をしっかりと実施してきたことが評価されている。本製品にも、同様の対応を望みたいところだ。

IPv4接続は、DHCP、静的IP、PPPoEのみ。DS-LiteやMAP-Eには対応しないので注意

 なお、本製品はセキュリティ機能やペアレンタルコントロール機能、VPN接続サービスを提供する「eero Plus」というサービスにも対応しているが、こちらは最初の6カ月間無料で、その後は月額1500円のサブスクリプションサービスとなっている。とりあえず、使ってみて、継続利用の可否を決めるといいだろう。

 基本的なルーターのセキュリティ対策としては、管理者パスワード、Wi-Fiパスワード、ファームウェア自動アップデートなどがある。管理者パスワードは、Amazonアカウントで二段階認証にも対応しているので◎。Wi-Fiパスワード初期設定で強制設定なので〇。ファームウェアの自動アップデートも夜間に自動的に実行されるので〇という評価をしたい。

セキュリティ機能やペアレンタル機能はサブスク方式

独自の付加機能

 付加的な機能は、少々変わっている。

 一般的なWi-Fiルーターであれば、USBストレージを使った管理ファイル共有、外部から内部へのアクセスを提供するVPNサーバー機能などがあるが、こうした機能は本製品には搭載されてない。

 その代わりに、Amazonデバイスとの連携が可能になっている。スマートホームハブ機能が内蔵されており、Alexaと連携して照明やロックなどのIoT機器をコントロールできる。

 また、冒頭でも触れたが、今後、Echoデバイスを中継機として利用できる。「eeroビルトイン」と呼ばれる機能を利用することで、対応するEchoデバイスを中継機として稼働させ、Wi-Fiの電波の届きにくい場所でもスマートフォンやIoT機器などのWi-Fiデバイスの接続性を向上できる。

Echoデバイスを中継機として使えるeero ビルトインは今後対応予定

 公式情報では、5GHzのみに対応し、Wi-Fiエリアを最大92㎡拡張でき、最大100Mbpsの速度、約10台のデバイス接続をサポートするとされている。

 現状は、この機能が提供されていないので、実力は不明だが、例えば3階建ての住宅の1階にeeroを設置し、2階のリビングに設置したEchoデバイスで中継して、3階の部屋まで電波を届けるという使い方も可能になりそうだ。

 ただし、Echoデバイスは、スピーカーやディスプレイとして利用することが想定された製品なので、設置場所が限られ、必ずしも電波の中継として最適な場所に設置できるとは限らない。純粋に電波を中継したいというなら、eeroの台数を増やした方がいいだろう。

 とは言え、前述したように、本製品は価格が高く、本製品の1台の価格で、競合製品の2台セットが買えてしまうので、はじめからメッシュや中継ありきで考えるなら、競合製品を選んだ方がいいという考え方もできる。

性能は十分

 気になるパフォーマンスは、必要十分という印象だ。いつものように木造3階建ての筆者宅にてiPerf3の速度を検証したのが以下のグラフだ。今回は、2台使用し、1台を1階の回線近く、2台目を3階の階段踊り場に設置した。

無線クライアントテスト
1F2F3F3F端
5GHz帯(上り)943Mbps295Mbps301Mbps295Mbps
5GHz帯(下り)956Mbps339Mbps336Mbps365Mbps

※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 Pro
※クライアント:Core i7 155H/RAM32GB/1TB NVMeSSD/Intel BE200D2W/Windows 11 Home

 デュアルバンドのメッシュなので、中継で速度が半減する分、全体的なパフォーマンスはさほど高くない。メッシュシステムなので、家中どこでも、まんべんなく300Mbpsで通信できるようになる製品と言える。

 注目は2階で、距離的に近いのは1階に設置された1台目のアクセスポイントだが、どうやら3階側の2台目のアクセスポイント経由で接続されている模様だ。1階側に接続する方が、中継のロスがない分高速に通信できるはずだが、かたくなに3階側を選択する印象がある。

 デュアルバンドのメッシュは、このように台数が増えると、意図しない中継で速度が頭打ちになってしまうことがある。全体的に平均速度は上がるが、速度の上限が下がってしまうイメージだ。

 eeroシリーズでより高い速度を望むなら、やはりトライバンドかつ上位モデルのeero Pro 6Eやeero MAX 7を購入すべきだろう。

デザインで選ぶ製品

 というわけで、Amazonのeeroを早速使ってみた。使いやすさや、性能に大きな欠点はないが、とにかく価格が高い。予算優先で検討しているのであれば、より安く変える同クラスの他社製品でメッシュの台数を増やすか、より上位のクラスの製品を選ぶことをおすすめする。

 デザインは秀逸なので、このデザインがどうしても欲しいというのであれば、購入する価値はありそうだ。ただし、繰り返しになるが、セールで安く買えるタイミングを狙って購入すべきだ。しばらく様子を見てみても遅くはない。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。