急遽テレワーク導入!の顛末記
筆者が選ぶ!! 中小企業で「ビデオ会議の品質をUP」させるベストな方法とは?――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記 総集編
2024年6月3日 07:00
連載4周年ということで、これまで紹介してきたテクニックの中でも、一番オススメしたいものを紹介する総集編企画。第1回ではリモートデスクトップ、第2回ではデータの持ち運び方法について紹介したが、第3回目となる今回は「ビデオ会議の音質・画質」にフォーカス。重要な商談などで相手としっかりコミュニケーションを取るためにも、筆者がこれまでさまざまな方法を体当たりで試してきた中で、一番気に入っているものを紹介しようと思う。
iPhoneを三脚に固定して、専用アプリで撮影する
これまで、本連載ではビデオ会議の画質を向上させるために、iPhoneをWebカメラ代わりに使う方法を紹介してきた。
というのも、一般にノートPCに内蔵されたカメラよりも、iPhoneのカメラの方が画質は高いため、ビデオ会議に利用すると画質がUPすることが多い。別途Webカメラを購入する必要もないので、ビデオ会議の際には重宝している。
ちなみに、キャプチャボードと一眼レフカメラなどを組み合わせれば、さらに画質を向上できるが……、撮影の準備に時間がかかるのと、ビデオ会議ではそこまでの画質が必要ないので、結局使わなくなってしまった。
なお、iPhoneをWebカメラ代わりに使うには、三脚やアームスタンドなどを使って、iPhoneを自分の顔が映る位置に固定する必要がある。これは一見手間に思えるが、ノートPCの内蔵カメラだと常に下から見上げるような画になるので、画角を自由に変えられるのはうれしいポイント。天井の電灯が画角に入ると、それに合わせて明るさが調整されて顔が暗くなりがちだが、三脚などを使えばそれも防げるだろう。個人的にはアームスタンドは使わないときに場所を取るので、折りたたんで収納できるスマホ三脚の方が気に入っている。
なお、iPhoneをWebカメラ代わりに使うには、専用のアプリをインストールする必要がある。この手のアプリは色々とあるが、無料で使えるものをいくつか試してみた結果、以下のような結論になった。
- PCがWi-Fiでルーターに接続されている→「Iriun Webcam」を利用
- PCが有線LANでルーターに接続されている→「Camo Studio」を利用
「Iriun Webcam」は“設定メニューが画質のみ”という機能的にはシンプルなアプリだが、4Kまでの解像度に対応しており、画質をあげてもPCへの負荷が少ないのが魅力。無料版のアプリだと画面にウォーターマークが入るものも多いが、「Iriun Webcam」ならウォーターマークが表示されることもない。
ただ、「Iriun Webcam」は同じWi-FiにつながったPCとしか連携できないため、PCが有線LAN接続していると利用できない。一応、USBケーブル接続では利用できるが……、筆者はそれが面倒になってしまったので、自宅では「Camo Studio」というアプリを利用することにした。こちらは解像度が1280×720までしか対応していないが、無料版でもウォーターマークを非表示にできるのがうれしいところ。さらに、背景をボカすことができるので、うっかりZoomやGoogle Meetで背景合成の設定を忘れていても、私生活を画面の向こうにさらけ出す心配はなさそうだ。
USBマイクでノンウェアラブル! 電話の応対も快適に
ここまでビデオ会議の画質をiPhoneを使って解決してきたが、音質についてはヘッドセットやマイク付きイヤフォンなどのガジェットを使うことで改善できる。ただ、自宅での利用を考えるなら、個人的にはUSBマイク、もしくはマイクスピーカーの利用をオススメしたい。
USBマイクはその名の通りにPCのUSB端子に挿して使うマイク。一方、マイクスピーカーはマイクとスピーカーの両方が内蔵されたデバイスで、価格はUSBマイクよりも若干お高め。筆者はPCにそこそこ良いスピーカーを繋げて使っているので、USBマイクを購入した。
USBマイクやマイクスピーカーは周囲の音をある程度は拾ってしまうので、周りに人がいるオフィス環境では使えないが、自宅であれば話は別だ。ヘッドセットやイヤフォンのように装着する必要がないので、長時間のビデオ会議でも装着部が痛くなることはないし、PCに接続しっぱなしにしておけばいつでも準備なしで利用できる。
なお、筆者の自宅にあるPCはiPhoneと連携させているので、電話の応対をPC側で行えるのだが、この通話にUSBマイクが使えることが、個人的にはかなり気に入っている。いちいちスマホを手に取らなくても、PCのマイクとスピーカーを使ってハンズフリーに通話できるのは楽だし、メモを取るときなどにも便利だ。
ちなみに、筆者の購入したUSBマイクはアダプターを使えばiPhoneでも使えたが、音声モニタリング用のステレオミニジャックが付いていたせいか、動作にややクセがあった。結論としては音声をiPhoneの内蔵スピーカーで出力できず、モニタリング用のステレオミニジャックやHDMI接続したモニターなどで出力する必要があったので、あらかじめ動作を確認してからビデオ会議に臨みたい。
また、市販されているマイクには、いわゆるピンマイクなどと呼ばれるステレオミニジャックで接続するものがあるが、プラグが3極の場合には、4極に変換するコネクターが必要になるので注意が必要だ。
そのほか、音質を向上させる方法としては、ノイズキャンセリング機能を使うのもアリだろう。筆者の周りでは「マザーボードのユーティリティ」「ノートPCの標準機能」といった形で搭載されていたが、「NVIDIA Broadcast」などのソフトを使って後付けで利用することもできる。機能を有効にするとキーボードのタイプ音を削除できたので、おかげでビデオ会議中にもPCでメモを取れるようになった。
ただ、これらのノイズキャンセリング機能では、人の声が“利用者or周囲にいる人のものか?”を判別できないようで、家族が呼びかけてきた時などには、その声が会議の相手にも聞こえてしまった。これについては、ノイズキャンセリング専用のアダプター「MAGIC MIC」を使うと除去できたので、無音状態を追求するなら専用ハードウェアの購入を検討してもよいかもしれない。
マイクの生音以外をZoomに送って、文字起こしさせる
Windowsではマイクに向かって話しかけている生音声以外の音も、音声入力として認識させることができる。例えば、PCで再生している曲を音声入力として認識させれば、その曲をビデオ会議の相手に聞かせたり、音声認識機能を使って歌詞を文字起こしすることも可能だ。
“指定の音を音声入力として認識させる”にあたり、本連載ではこれまでに2つの方法を紹介してきた。それは
- 仮想ミキサー「VoicemeeterBanana」、もしくは仮想オーディオデバイス「VB-CABLE Virtual Audio Device.」を使う
- 「OBS Studio」と仮想オーディオデバイス「VB-CABLE Virtual Audio Device.」、もしくは「NDI Tools」を組み合わせて使う
というもの。このうち、仮想ミキサーor仮想オーディオデバイスを使う方法では、本来はスピーカーまたはスピーカーを繋いでいる音声出力端子に送られるはずの音声を、「VoiceMeeter Output」といった仮想デバイスに送信する。この仮想デバイスを例えばZoomのマイク入力に指定すれば、PCで再生しているあらゆる音声が、会議の相手に聞こえるようになるというわけだ。
一方、「OBS Studio」では、ソースに音楽ファイルや動画ファイル、ブラウザのウィンドウなどを指定することで、そのソースで鳴っている音声だけを、「NDI Webcam Video 1」といった仮想デバイスに送ることが可能。あとは、先ほどと同じように、この仮想デバイスをZoomなどのマイク入力に指定すればよい。
音声入力をコントロールすると、ほかにも“PCと連携させたiPhoneでの電話の応対”や、“YouTubeで再生している音声/音楽”など、さまざまな音声をZoomに送って文字起こしさせることが可能になる。Zoom以外にも録音ツールや翻訳ツールなど、様々なツールと連携できるので、ぜひ覚えておくと良いだろう。
ということで、筆者がビデオ会議を行う時に、カメラ映像やマイク音声のクオリティをどのようにUPさせているかを紹介してみた。「顔が暗く映って困っている」「音声がノイズ交じりで聞き取りにくいと言われた」といった悩みのある人は、この機会にPCの映像/音声環境を見直してみてはいかがだろうか?
とある中小企業に勤める会社員、飛田氏による体当たりレポート「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」。バックナンバーもぜひお楽しみください。